元請が自分で仕入れた建材を下請に使わせるとき、代金を取るか取らないかで変わるのは値段だけではない。消費税で資産の譲渡になるかどうか、その代金をいつ下請代金から引けるかが入れ替わる。有償支給の代金を早く引く行為は、公正取引委員会が不公正な取引方法に該当するものとして扱う10類型の9番目に入っている。

誰が建材を調達するかで3つに分かれる

同じ建材が現場に入る話でも、調達の主体で扱いが変わる。

調達の形 材料費の所在 下請の請負代金 書面化の対象になるか 下請の課税仕入れ
下請が自ら調達して持ち込む 下請 材料費を含む 資材の提供はない 仕入先からの購入が課税仕入れ
元請が無償で支給する 元請 材料費を含まない 建設業法19条1項10号の対象 支給分は課税仕入れにならない
元請が有償で支給する いったん元請、代金の収受で移る 材料費を含まない 建設業法19条1項10号の対象 元請の管理の仕方で変わる(後述)

元請が資材を提供するか機械を貸与するときは、その内容および方法に関する定めが建設業法19条1項10号で契約書面の記載事項になる。提供のない工事では出てこない項目なので、下請が持ち込む契約書をそのまま使い回すと落ちる。

下請が持ち込む形でも、元請が購入先を指定して買わせる場合は別の規制がかかる。建設業法19条の4は、請負契約の締結後に注文者が取引上の地位を不当に利用して使用資材や機械器具またはこれらの購入先を指定し、請負人に購入させて利益を害することを禁じている。認定基準8も同じ行為を不公正な取引方法として扱う。指定の線引きは建材の値引き交渉の材料を作るにまとめている。

契約書と見積条件に書く項目

標準約款は支給材料の取り決めを設計図書に寄せている。14条1項は、元請負人から下請負人への支給材料および貸与品の品名、数量、品質、規格、性能、引渡し場所、引渡し時期、返還場所または返還時期を、設計図書に定めるところによるとする。工程の変更で引渡し時期と返還時期を変える必要があるときは協議して変更し、必要があると認められるときは工期か請負代金額も変える(14条2項)。

約款が添える下請契約書の書式には、工事名から請負代金額、支払の時期と方法、調停人までの欄がある一方、支給材料の欄はない。対価の定めも約款14条には置かれていない。有償支給の代金と決済時期は、設計図書の記載と約款14条の外で定める部分にあたる。

見積の段階では、国土交通省のガイドラインが下請側の内訳明示の最低項目を挙げている。材料費、労務費、法定福利費(事業主負担分)、安全衛生経費、建設業退職金共済掛金、必要となる作業日数の6項目で、材料費については元請負人が支給する場合はその旨を記載するとされる。元請側は建設業法20条4項を踏まえてその内容を考慮するよう努める。

見積条件の提示が足りないと条文違反の側に回る。ガイドラインは、差引きの内容や算定根拠を見積条件に明示しなかった場合は建設業法20条3項、契約書面に記載しなかった場合は19条の違反になるとしている。

有償支給の代金を引ける時期

有償支給の代金をいつ回収するかは、独占禁止法の側で縛られている。公正取引委員会の「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」(昭和47年4月1日公正取引委員会事務局長通達第4号、平成13年1月4日改正)は、元請負人が行う10の行為を不公正な取引方法に該当するものとして扱う。その9番目が有償支給材の決済だ。

注文した建設工事に必要な資材を自己から購入させた場合に、正当な理由がないのに、その資材を用いる建設工事に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から資材の対価の全部もしくは一部を控除し、または対価の全部もしくは一部を支払わせることによって、下請負人の利益を不当に害することが対象になる。

別紙の解説は、早い時期の決済が下請負人の資金繰りないし経営を不当に圧迫するおそれがあるためだとする。正当な理由がある場合は適用されず、解説は下請負人が有償支給された資材を他の工事に使用した場合や転売してしまった場合を例に挙げている。

決済のタイミング 扱い
資材を引き渡した時点で代金を請求して回収する その資材を用いる工事の下請代金の支払期日より早ければ認定基準9の対象
その資材を用いる工事の下請代金の支払期日に、下請代金から控除する 認定基準9が制限する「早い時期」に当たらない
下請が支給材を他の工事に使った、または転売した 早期に決済する正当な理由がある場合に当たる例として解説が挙げる

認定基準の適用には地位の条件が付く。備考は「元請負人」を、下請契約における注文者である建設業者であって、その取引上の地位が下請負人に対して優越しているものと定義している。

赤伝処理との違い

支払時に差し引く行為という点は似ているが、ガイドラインが赤伝処理として数えているものに資材の対価は入っていない。赤伝処理は、元請負人が一方的に提供しまたは貸与した安全衛生保護具等の費用、下請代金の支払に関して発生する諸費用(振込手数料等)、下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の運搬処理費用、それ以外の諸費用(駐車場代、弁当ごみ等のごみ処理費用、安全協力会費、建設キャリアアップシステムのカードリーダー設置費用および現場利用料等)を、下請代金の支払時に差し引く行為とされる。

差し引くもの 根拠になる規定 制限の中身
有償支給した資材の対価 認定基準9 正当な理由なく、その資材を用いる工事の下請代金の支払期日より早い時期に控除または支払わせることを制限
安全衛生保護具等、支払の諸費用、建設副産物の処理費用、駐車場代等 建設業法18条、19条、19条の3第1項、20条3項 双方の協議と合意が必要。内容と差引額の算定根拠を見積条件と契約書面に明示
銀行口座への振込手数料 振興基準 合意の有無にかかわらず中小受託事業者に負担させて代金から差し引いてはならない

協議と合意のないまま一方的に諸費用を差し引く行為、合意はあるが差引く根拠が不明確な諸費用を差し引く行為、実費より過大な費用を差し引く行為は、建設業法18条の請負契約の原則を没却するため、情状によっては28条1項2号の請負契約に関する不誠実な行為に当たるおそれがある。赤伝処理で下請代金が通常必要と認められる原価に満たない額になる場合は、取引依存度等によって19条の3第1項の不当に低い請負代金の禁止に触れるおそれがある。

ガイドラインは、駐車場代のように建設業法19条の書面化義務の対象にならないものについても、後日の紛争を避けるため合意事項を書面化して相互に取り交わしておくことが望ましいとする。

消費税は元請の管理の仕方で変わる

有償支給が消費税で売買になるかどうかは、代金を取ったかどうかだけでは決まらない。消費税法基本通達5-2-16は、事業者が外注先等に外注加工に係る原材料等を支給する場合に、支給に係る対価を収受することとしているとき(有償支給)はその支給が対価を得て行う資産の譲渡に該当するとした上で、有償支給の場合であっても事業者がその支給に係る原材料等を自己の資産として管理しているときは資産の譲渡に該当しないとする。令8課消2-11による改正後の本文がこの内容になっている。

同項の注は、支給した事業者が自己の資産として管理しているときの外注先側の扱いまで書いている。その原材料等の有償支給は課税仕入れに該当せず、支給をした事業者から収受すべき金銭等のうち原材料等の有償支給に係る金額を除いた金額が資産の譲渡等の対価に該当する。

支給の形 元請側 下請側の課税仕入れ 下請側の資産の譲渡等の対価
有償支給で、元請が自己の資産として管理していない 資材の支給が資産の譲渡に該当 有償支給分が課税仕入れ 控除前の請負代金の総額
有償支給で、元請が自己の資産として管理している 資産の譲渡に該当しない 有償支給分は課税仕入れに該当しない 収受すべき金銭等から有償支給に係る金額を除いた額
無償支給 対価を収受しないため資産の譲渡等に当たらない 支給分は課税仕入れにならない 材料費を含まない請負代金

同じ「材料代を差し引いた金額を振り込む」という取引でも、下請の課税売上に立てる額が総額か差引後かで分かれる。元請が自己の資産として管理しているかどうかは、支給の覚書と現場での受払いの記録に残る部分になる。

支給材が原因の不具合を誰が持つか

引渡しと検査の段取りは約款14条3項にある。監督員は支給材料および貸与品を下請負人の立会いの上で検査して引き渡し、下請負人は品質、規格または性能が設計図書の定めと異なり、または使用に適当でないと認めたときは、遅滞なくその旨を書面で元請負人か監督員に通知する。元請負人は通知を受けて必要があると認めるときは、設計図書で定める品質、規格もしくは性能を有する他の支給材料か貸与品を引き渡し、または品質や規格等の変更を行える。必要があると認められるときは協議して工期か請負代金額を変更する(14条4項)。

立会い検査で見つからなかった不適合には6項が用意されている。引渡しを受けた支給材料または貸与品が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないもので、3項の検査により発見することが困難であったものに限り、使用に適当でないと認められるときは遅滞なく監督員に通知し、4項の規定を準用する。

保管中の滅失と損傷は下請側だ。下請負人は支給材料および貸与品を善良な管理者の注意をもって使用および保管し、下請負人の故意または過失によって滅失もしくはき損し、または返還が不可能となったときは、元請負人の指定した期間内に原状に復し、もしくは代品を納め、または損害を賠償する(14条5項)。

完成後の責任は47条9項で切れる。引き渡された工事目的物の契約不適合が支給材料の性質または元請負人もしくは監督員の指図により生じたものであるときは、元請負人はその契約不適合を理由として請求等をできない。ただし下請負人がその材料または指図の不適当であることを知りながら通知しなかったときはこの限りでない。3項と6項の通知を出していたかどうかが、ここで効いてくる。

自社の下請契約書が標準約款からどこで離れているかは建設工事標準下請契約約款と自社の契約書の差分の見方で条項ごとに並べている。支給材料の金額を保険金額に入れ忘れると支給材以外の損害まで保険金が減る点は建材の破損・盗難・水濡れに備える保険にある。

支給材の取り決めの確認表

# 確認すること 根拠
1 有償か無償かを決めて見積依頼の時点で下請に伝えたか ガイドラインの見積書内訳(材料費は元請が支給する場合その旨を記載)
2 資材の提供の内容および方法を契約書面に書いたか 建設業法19条1項10号
3 品名、数量、品質、規格、性能、引渡し場所と時期、返還場所と時期を設計図書に書いたか 標準約款14条1項
4 有償支給の代金の額と決済時期を定めたか。その工事の下請代金の支払期日より前に引く取り決めになっていないか 認定基準9
5 元請が支給材を自己の資産として管理するのか、下請に移すのかを決めたか 消費税法基本通達5-2-16
6 下請の請求書と自社の支払通知で、課税売上に立てる額が5の扱いとそろっているか 同通達5-2-16の注
7 引渡し時の立会い検査と、品質等が設計図書と違うときの書面通知の段取りを決めたか 標準約款14条3項、14条6項
8 保管中の滅失と損傷の負担、原状回復か代品か賠償かを決めたか 標準約款14条5項
9 赤伝処理する諸費用を支給材の代金と分けて、差引額の算定根拠を見積条件と契約書面に書いたか 建設業法19条、20条3項

無償支給にすると下請の請負代金から材料費が抜ける。許可の要否の判定では注文者が提供した材料の市場価格を請負代金に加えて見るため、金額の線引きは請負代金額だけでは追えない。その計算は材料だけなら売買、取付けまで頼めば請負にまとめている。