玄関ドアを1本頼むとき、「品物だけ届けてください」と言うか「取付けまでお願いします」と言うかで契約の種類が変わる。前者は売買、後者は請負。同じ商社に同じ品番を頼んでも、注文書に書く項目、労災保険をどちらの会社で処理するか、現場の安全書類に名前が載るかどうかが入れ替わる。

請負と売買が分かれる場所

建設業法2条1項は「建設工事」を土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものと定め、2項は「建設業」を元請下請その他いかなる名義をもってするかを問わず建設工事の完成を請け負う営業とする。国土交通省関東地方整備局の資料は、建設工事の請負契約を「報酬を得て、建設工事の完成を目的として締結する契約」と説明したうえで、「資材購入、調査業務、運搬業務及び警備業務等は該当しません」と注記している。建材を買って現場に運ばせるだけの取引は、建設業法の外にある。

判断が割れるのは取付けが付いたときだ。国税庁の質疑応答事例「請負と売買の判断基準(1)」は、契約当事者の意思が仕事の完成に重きをおいているか物の所有権移転に重きをおいているかで区分するとしたうえで、判別が困難な場合の目安を印紙税法基本通達に沿って示している。

区分 内容 国税庁が挙げる例
請負 注文者の指示に基づき一定の仕様又は規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設する 家屋の建築、道路の建設、橋りょうの架設
請負 注文者が材料の全部又は主要部分を提供(有償無償を問わない)し、製作者がこれによって一定物品を製作する 生地提供の洋服の仕立て、材料支給による物品の製作
請負 製作者の材料を用いて注文者の設計又は指示した規格等に従い一定物品を製作する 船舶、車両、機械、家具等の製作
請負 一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転する 大型機械の取り付け
請負 修理又は加工 建築、機械の修繕、塗装
売買 取り付けることによって所有権を移転するが、取付行為が簡単であって特別の技術を要しない テレビを購入した時のアンテナの取付けや配線
売買 あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し供給する カタログ又は見本による機械、家具等の製作

カタログ品のサッシを買う行為そのものは売買側に入る。ただし取付けは、テレビのアンテナ配線のような簡単な作業ではない。カタログから選んだ品番でも、施工まで同じ相手に頼めばその部分は請負になる。

材工共にすると何がかかるか

項目 材料のみ(売買) 材工共(請負)
契約書面 建設業法19条の適用なし 19条1項の記載事項を書面で相互に交付
建設業許可 不要 500万円以上(建築一式1500万円以上)で必要
見積期間 定めなし 予定価格に応じて1日以上から15日以上(令5条の9)
労災保険 元請一括の外。納入業者が自社で処理 元請の保険関係に一括(徴収法8条1項)
施工体制台帳と施工体系図 記載対象外。下請総額にも算入しない 記載対象。下請総額に算入
再下請負通知書 提出義務なし さらに請け負わせたとき提出(規則14条の4)
作業員名簿 対象外 建設工事に従事する者として記載
印紙税 単発の売買は不課税 第2号文書

19条1項の記載事項と、注文書と請書だけで契約を済ませたときの扱いは注文書と請書だけの発注は建設業法19条違反にまとめている。

施主支給材は請負代金に足して許可のラインを見る

建設業法3条1項ただし書の軽微な建設工事は、施行令1条の2第1項で工事一件の請負代金の額が500万円未満、建築一式工事なら1500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅と定められている。関東地方整備局の資料は、建築一式工事についてはいずれか一方の要件を満たしていれば軽微な建設工事になると注記している。この範囲を外れる工事を請け負うには、相手に建設業許可が要る。

見落とされやすいのが同条3項だ。注文者が材料を提供する場合は、その市場価格または市場価格と運送賃を請負代金の額に加えたものを1項の請負代金の額とする。建設業許可事務ガイドラインも財産的基礎の判断について同じ計算を書いている。手間だけ300万円で頼んでも、施主支給や自社支給の建材が市場価格250万円あれば合計550万円で、軽微な建設工事から外れる。

分割も効かない。同条2項は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは各契約の請負代金の額の合計額とする。正当な理由に基づいて分割したときだけ例外になる。

見積期間は金額で決まる

建設業法20条3項は、注文者に対し、19条1項各号(2号を除く)の事項をできる限り具体的に提示し、提示から契約締結または入札までの間に見積りに必要な期間を設けるよう義務づける。期間は施行令5条の9で決まっている。

工事一件の予定価格 見積期間
500万円未満 1日以上
500万円以上5000万円未満 10日以上
5000万円以上 15日以上

やむを得ない事情があるときは、10日以上と15日以上の期間を5日以内に限り短縮できる。材料を買うだけの発注にこの縛りはかからない。

20条1項は、建設業者に対し、工事の種別ごとの材料費と労務費と適正な施工に不可欠な経費の内訳、工事の工程ごとの作業と準備に必要な日数を記載した見積書を作成する努力義務を課す。注文者は、この見積書に記載された材料費等の額について、通常必要と認められる額を著しく下回る変更を求めてはならない(同条6項)。

労災はどちらの保険で処理されるか

労働保険の保険料の徴収等に関する法律8条1項は、厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合には、その事業を一の事業とみなし元請負人のみを当該事業の事業主とすると定める。同法施行規則7条は、この事業を労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業とする。元請一括と呼ばれる仕組みで、下請の労働者が現場でけがをしても元請の労災保険で処理される。

一括の対象は「数次の請負」なので、売買契約はここに入らない。建材を納品に来た運送会社の運転手が荷卸し中にけがをしても、元請の現場労災ではなく、その会社が自社で成立させている労災保険の話になる。荷受けの段取りをこちらが指定していても、契約が売買であれば結論は変わらない。

材工共で一人親方に頼んだ場合はもう一段の注意が要る。労災保険法3条1項は労働者を使用する事業を適用事業とするため、一人親方本人は労働者にあたらず、元請一括の外に置かれる。本人が同法33条3号の特別加入をしていなければ、現場でけがをしても労災保険の給付は出ない。

安全書類に載るのは請負の系列だけ

施工体制台帳と施工体系図は、発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請契約の総額5000万円(建築一式工事は8000万円)以上で締結するときに作成義務を負う(建設業法24条の8第1項、施行令2条)。関東地方整備局の資料は、この総額に「建設工事に該当しない資材納入、調査業務、運搬業務、警備業務などの契約金額は含みません」と明記している。

記載対象も同じ線で切れる。同資料は、建設工事の請負契約における全ての下請負人が施工体制台帳の記載対象になるとしたうえで、建設工事の請負契約に該当しない資材納入や調査業務や運搬業務にかかる下請負人等については建設業法上は記載の必要がないとする。ただし仕様書等により発注者が記載を求めているときは記載が必要になる場合があり、国土交通省発注工事では警備会社との契約について共通仕様書で記載を求めている。

作業員名簿は施行規則14条の2第1項2号チと4号チが受け持つ。建設工事に従事する者の氏名と生年月日と年齢、職種、社会保険の加入等の状況、中小企業退職金共済法の被共済者に該当するか否か、安全衛生に関する教育を受けているときはその内容、建設工事に係る知識と技術または技能に関する資格が記載事項になる(資格は本人が希望しない場合を除く)。関東地方整備局の作成例は、建設業法では様式を定めていないので別の様式でも構わないと注記している。載るのは請負契約でつながった下請の作業員で、資材を届けに来る運転手は入らない。

再下請負通知書は、下請負人が請け負った工事をさらに別の者に請け負わせたときに提出する(規則14条の4第2項)。再下請負していない下請には提出義務がない。

現場に入る人の保護は2026年4月に広がった

労働安全衛生法15条1項は、元方事業者のうち建設業その他政令で定める業種に属する事業を行う者を特定元方事業者とし、その作業従事者と関係請負人に係る作業従事者が作業を行うときに統括安全衛生責任者を選任させる。作業従事者は事業を行う者が行う仕事の作業に従事する者を指し、労働者以外の者を含む。30条1項の協議組織の設置と運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視も同じ範囲で読む。

滋賀労働局の資料は、令和7年5月14日法律第33号による「混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大」を令和8年4月1日施行と整理し、元方事業者が講ずべき指導や連絡調整等の措置の対象が「当該労働者から個人事業者等を含む作業従事者に拡大されました」と説明している。材工共で一人親方に頼めば、その一人親方は関係請負人であり、本人も統括管理の対象になる。

同じ改正で、令和7年5月14日から安衛法3条3項の文言も変わった。仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない。改正前の「施工方法、工期等」に作業方法と納期が加わっている。この配慮義務は仕事を請け負わせる側にかかるので、材料を買うだけの取引には及ばない。

材料だけを納める資材業者も請負人ではないため、関係請負人にあたらない。荷卸しの立会いや揚重の段取りは現場の実務として残るが、安衛法上の統括管理の枠組みとは別の話になる。

人だけ回してもらう形は取れない

材料を自社で買い、施工の人手だけを商社や協力会社から出してもらう形には壁がある。労働者派遣法4条1項2号は建設業務について労働者派遣事業を行うことを禁じ、同条3項は派遣の役務提供を受ける側が指揮命令の下で派遣労働者を建設業務に従事させることを禁じている。建設業務は、土木建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業またはこれらの作業の準備の作業に係る業務を指す。

請負と派遣の境目は昭和61年労働省告示第37号が定める。請負の形式で契約していても、告示2条の各号すべてに該当しない事業主は労働者派遣事業を行う事業主として扱われる。1号は業務の遂行方法の指示、始業終業時刻や休憩や休日の管理、服務規律と配置の決定を請負人が自ら行うことを求める。2号は資金の調達、事業主としての法律上の責任、そしてハで「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること」または「自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること」のいずれかを求める。

材料を全部こちらで支給すると、告示2条2号ハの前段は使えなくなり、相手の技術と経験で処理していることが後段の判定材料として残る。工具も資材もこちらが出し、現場で自社の職長が直接指示を出す形は、告示2条1号と2号のどちらからも外れる。

印紙税は区分記載で変わる

国税庁の質疑応答事例「請負と売買の判断基準(2)」は、請負契約なら記載金額のあるものが第2号文書、物品の売買契約なら継続する売買で第7号文書になるものを除き不課税文書になるとする。単発の売買契約書には印紙が要らない。

材工共の契約書は、書き方で記載金額が動く。国税庁「取付工事を行う機械の売買契約書」は、機械本体500万円と取付工事費100万円の契約書を例に次のように整理している。

契約の内容 記載の仕方 記載金額
注文者の指示する仕様または規格に従って製作、または注文者が材料を提供して製作 一式600万円と記載 600万円
同上 本体500万円と取付工事費100万円を区分記載 600万円
一定の規格で統一した物を製作者の材料で作り、一定の場所に取り付ける 一式600万円と記載 600万円
同上 本体500万円と取付工事費100万円を区分記載 100万円

区分記載が効くのはカタログ規格品の場合だけで、注文者が仕様を指示して作らせたものは全体が請負になり、分けて書いても600万円のままになる。国税庁は、機械の取付けがすべて請負になるわけではなく、テレビのアンテナ取付けのように取付行為が簡単で特別の技術を要しないものは全体を本体の売買として扱うとも注記している。

建設工事の請負に関する契約書は軽減税率の対象で、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成され、記載された契約金額が100万円を超えるものに適用される。500万円超1000万円以下は5千円、1000万円超5000万円以下は1万円。記載金額100万円ちょうどは軽減の対象外で、本則の第2号文書の税額200円になる。カタログ規格品の建材を買って取り付けてもらう契約で、本体価格と取付工事費を同じ比率で区分記載できれば、印紙は5千円ではなく200円で済む。

頼み方を決める前の確認表

確認すること 材料のみで済む場合 材工共にする場合
相手の建設業許可 確認不要 500万円以上(建築一式1500万円以上)なら許可の有無と業種を確認
支給材の市場価格 関係なし 手間の金額に足して許可のラインを判定
見積依頼から契約までの日数 定めなし 予定価格に応じて1日以上から15日以上を空ける
注文書の記載事項 売買の条件(品番、数量、単価、納期、検収、支払) 建設業法19条1項の記載事項
労災保険 納入業者の保険。現場の労災報告の対象外 元請一括。一人親方は特別加入の有無を確認
施工体制台帳への記載 不要。下請総額にも入らない 必要。下請総額に算入
作業員名簿 不要 施工に入る全員分
契約書の印紙 単発の売買は不課税 第2号文書。カタログ品なら本体と取付工事費を区分記載

受入検査と検収の分かれ目、運送会社と売主のどちらに言うかは建材の受入検査と検収にある。

確認先: 建設業法、建設業法施行令、建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(関東地方整備局)