年間の建材仕入高に応じて戻ってくるリベートは、金額が同じでも載る事業年度がずれる。分かれ目は、割戻し額の計算式が契約書に書いてあるかどうか。書いてあれば仕入れた年度、書いていなければ通知が届いた年度になる。決算期末をまたいで通知が来る取引ほど、差が粗利に出る。
仕入割戻し:一定期間の購入価額や購入数量に応じて、仕入先から受ける代金の戻し。リベートと呼ばれるものの多くがこれに当たる。
受け取る側と払う側で、根拠になる規定が別々になっている。受け取る側は法人税基本通達2-5-1が計上時期を決め、払う側は収益認識に関する会計基準の変動対価と法人税基本通達2-1-1の11で動く。消費税はどちらの側も、法人税とは別の課税期間で調整する。
受け取る側の計上時期を分ける二区分
法人税基本通達2-5-1は、購入した棚卸資産に係る仕入割戻しの計上時期を二つに分けている。
| 仕入割戻しの区分 | 計上する事業年度 |
|---|---|
| 算定基準が購入価額または購入数量によっており、かつその算定基準が契約その他の方法により明示されているもの | 購入した日の属する事業年度 |
| 上に当たらないもの | その仕入割戻しの金額の通知を受けた日の属する事業年度 |
要件は二つあり、両方を満たして初めて前者になる。「年間仕入高のうち1億円を超えた部分に3%」のように購入価額か購入数量を基礎にした計算式が取引基本契約や覚書に書かれていれば、期末に通知が届いていなくても仕入れた年度で落とす。仕入先の裁量で期末に額が決まる協力金型のものは計算式が契約に無いので、後者の通知日基準になる。
契約書という名前の書面でなくても、取引条件表や覚書で算定基準が明示されていれば前者に当たる。2-5-1(1)が求めるのは「契約その他の方法により明示されている」ことで、書面の種類は問われない。
保証金として預かられる割戻し
割戻しが現金で戻らず、仕入先に保証金として預け置かれる形がある。2-1-1の13の適用がある売上割戻しに対応する仕入割戻しは、2-5-1にかかわらず、現実に支払(買掛金等への充当を含む)を受けた日の属する事業年度の仕入割戻しとして扱う。その日より前に実質的に利益を享受することとなった場合は、享受することとなった日。
2-1-1の13が対象にするのは、特約店契約の解約や災害の発生といった特別な事実が生ずる時まで、または5年を超える一定の期間が経過するまで相手方名義の保証金等として預かることとしているため、相手方が利益の全部または一部を実質的に享受できないと認められる場合に限られる。
実質的に享受することになる事実は2-1-1の14が四つ挙げる。どれかに当たれば預け置かれていても享受したものとして扱う。
| 実質的に利益を享受することとなる事実 |
|---|
| 契約等に基づいて割戻し額に通常の金利を付し、その金利相当額を現実に支払っているか、請求があれば支払うこととしている |
| 契約等に基づいて、保証金等に代えて有価証券その他の財産を提供できることとしている |
| 保証金等として預かっている金額が、売上割戻しの金額のおおむね50%以下である |
| 契約等に基づいて、売上割戻しの金額を相手方名義の預金または有価証券として保管している |
2-5-2にはただし書きがあり、購入した日の属する事業年度か、相手方から通知を受けた日の属する事業年度の仕入割戻しとして経理している場合は、それも認められる。
計上しなかった割戻しの行き先
2-5-1か2-5-2で決まる事業年度に計上しなかった仕入割戻しは、その事業年度の総仕入高から控除しないで益金の額に算入する(2-5-3)。課税所得に入る点は変わらないが、売上原価を通らないため原価率の見え方だけが変わる。
払う側が使う変動対価
割戻しを出す側では、収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)が効く。この基準は顧客との契約から生じる収益の会計処理と開示に適用されるもので(第3項)、仕入側の処理は定めていない。
変動対価:顧客と約束した対価のうち、変動する可能性のある部分(第50項)。割戻しや値引きで動く分がこれに当たる。
見積りの方法は二つある。発生し得ると考えられる対価の額における最も可能性の高い単一の金額(最頻値)による方法と、発生し得ると考えられる対価の額を確率で加重平均した金額(期待値)による方法のうち、権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方を使う(第51項)。不確実性の影響を見積もるときは、契約全体を通じて単一の方法を首尾一貫して適用する(第52項)。
見積もった額の全部が取引価格に入るわけではない。不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限って取引価格に含める(第54項)。見積もった取引価格は各決算日に見直す(第55項)。受け取った対価のうち権利を得ると見込まない額は返金負債として認識し、その額も各決算日に見直す(第53項)。
顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財またはサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額する(第63項)。減額する時期は、関連する財またはサービスの移転に対する収益を認識する時と、企業が対価を支払うかまたは支払を約束する時の、いずれか遅い方が発生した時点(第64項)。支払が将来の事象を条件とする場合と、取引慣行に基づく支払の約束も含む。陳列や広告の協力のように別個のサービスを受け取って払う対価は、この除外に当たるため売上からの減額にならない。
税務で見積計上が通る3要件
会計で見積もって収益を減らしても、法人税でそのまま認められるとは限らない。法人税基本通達2-1-1の11は、値引き、値増し、割戻しその他の事実により変動する可能性がある部分の金額について、次の要件を全て満たすときに限り、引渡し等事業年度の引渡し時の価額等の算定に反映するとしている。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 算定基準の明示 | 値引き等の事実の内容と、それにより契約の対価の額から減額または増額する可能性のある金額かその算定基準(客観的なものに限る)が、契約や法人の取引慣行、公表した方針等により相手方に明らかにされていること。または事業年度終了の日において内部的に決定されていること |
| 見積りの方法 | 過去における実績を基礎とする等の合理的な方法のうち、法人が継続して適用している方法により、減額増額の可能性または算定基準の基礎数値が見積もられ、その見積りに基づいて変動対価が算定されていること |
| 書類の保存 | 算定基準の明示を示す書類と、見積り算定の根拠となる書類が保存されていること |
反映できるのは、引渡し等事業年度の確定した決算において収益の額を減額または増額して経理した金額のうち、変動対価に関する不確実性が解消されないものに限られる。確定申告書に益金算入額を減額または増額させる金額の申告の記載がある場合は、その金額も含む。
この取扱いを適用しない売上割戻しは、その金額を通知または支払をした日の属する事業年度の収益の額から減額する(2-1-1の12)。キャッシュバックのように相手方に対価が支払われることが条件になっている場合は、関連する販売等の収益計上日と、対価を支払う日または支払を約する日の、遅い方の事業年度の収益から減額する(2-1-1の16)。
収益認識基準を使う会社の線引き
2020年に改正された収益認識に関する会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用される(第81項)。
中小企業の会計に関する指針は、適用対象を金融商品取引法の適用を受ける会社とその子会社および関連会社、会計監査人を設置する会社とその子会社を除く株式会社としている(第4項)。除かれた会社は公認会計士か監査法人の監査を受けるため、会計基準に基づいて計算書類を作成する。
指針の第74項は、収益は収入に基づいた金額で商品等の販売や役務の給付を行った時に計上すると定め、一般的な販売契約の認識基準として出荷基準、引渡基準、検収基準を並べる。変動対価の見積りは出てこない。指針に拠る工務店や建材商社では、割戻しの期は法人税基本通達2-5-1と2-1-1の12で決まることになる。なお指針は売上割戻引当金を負債性引当金に分類したうえで、税法では損金不算入と整理している(第50項)。
消費税は法人税と別の期で動く
仕入割戻しを受けた場合の消費税の調整は、当初の課税仕入れを行った課税期間ではなく、仕入れに係る対価の返還等を受けた課税期間で行う。その課税期間に控除される課税仕入れ等の消費税額の合計額から、返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を控除する。課税仕入れの金額から返還等の金額を控除する経理処理を継続して行っているときは、その処理も認められる。控除しきれない金額は、課税売上げに係る消費税額に加算する。
何が対象になるかは範囲が細かく決まっている。
| 受け取るもの | 仕入れに係る対価の返還等 |
|---|---|
| 返品、値引き、直接の取引先から受ける割戻し | 該当する |
| 間接の取引先(卸売業者、製造業者等)から支払われる飛越しリベート等 | 該当する |
| 販売促進の目的で、販売数量や販売高等に応じて取引先から金銭により支払を受ける販売奨励金等 | 該当する |
| 課税仕入れに係る対価を支払期日より前に支払ったこと等を基因として支払を受ける仕入割引 | 該当する |
| 協同組合等から収受する事業分量配当金のうち、課税仕入れの分量等に応じた部分 | 該当する |
| 海上運送事業を営む事業者から収受する船舶の早出料 | 該当する |
| 保税地域から引き取った課税貨物に係る消費税額の還付税額 | 該当する |
| 保税地域からの引取りに係る課税貨物について購入先から受ける、輸入品に係る仕入割戻し | 該当しない |
| 買掛金その他の債務の全部または一部について受ける債務免除 | 該当しない |
調整が要らない場合も二つある。免税事業者であった課税期間に行った課税仕入れについて、課税事業者となった後の課税期間に受けるもの。課税事業者であった課税期間に行った課税仕入れについて、事業を廃止するか免税事業者となった後の課税期間に受けるもの。
一つの取引先から税率の異なる区分の資産の譲渡等を同時に受けていて、それらをまとめて割戻しを受けたときは、割戻金額をそれぞれの取引に係る部分に合理的に区分して計算する(消費税法基本通達12-1-6)。
返還インボイスと計算の特例
払う側は売上げに係る対価の返還等として、返還等を行った課税期間に、課税標準額に対する消費税額から控除する。控除を受けるには返還等をした金額の明細等を記録した帳簿の保存が要る。課税資産の譲渡等の金額から返還等の金額を控除する経理処理をしている場合も同じ。
適格請求書発行事業者が売上げに係る対価の返還等を行うときは、相手方に適格返還請求書を交付する義務がある。返還等の金額が税込1万円未満である場合など一定の場合は、その義務が免除される。
受け取る側は、仕入れに係る対価の返還等につき適格返還請求書の交付か電磁的記録の提供を受けた場合、そこに記載された消費税額等に100分の78を乗じた金額を、返還等を受けた金額に係る消費税額にできる。交付を受けていない場合は、返還を受けた金額に110分の7.8(軽減税率対象は108分の6.24)を乗じて計算する。
期の一覧
| 場面 | 載る期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 算定基準が購入価額または購入数量により、かつ明示されている仕入割戻し | 購入した日の属する事業年度 | 法基通2-5-1(1) |
| それ以外の仕入割戻し | 通知を受けた日の属する事業年度 | 法基通2-5-1(2) |
| 保証金等として預かられ、実質的に利益を享受できない割戻し | 現実に支払を受けた日の属する事業年度 | 法基通2-5-2 |
| 上の年度に計上しなかった仕入割戻し | 総仕入高から控除せず益金に算入 | 法基通2-5-3 |
| 3要件を満たす売上割戻しの見積計上 | 引渡し等事業年度の収益に反映 | 法基通2-1-1の11 |
| 3要件を満たさない売上割戻し | 通知または支払をした日の属する事業年度 | 法基通2-1-1の12 |
| 仕入割戻しの消費税 | 返還等を受けた課税期間 | タックスアンサーNo.6363 |
| 売上割戻しの消費税 | 返還等を行った課税期間 | タックスアンサーNo.6359 |
同じ1本のリベートで、法人税の年度と消費税の課税期間が別々に決まる。突き合わせの起点になるのは、計算式を書いた契約書と、仕入先から届く通知書の日付。



