3月末にサッシを現場へ搬入し、取付けが4月に入ってから終わった。この売上が3月期に載るか翌期に回るかは、その取引を建材の売買として扱っているか、取付けまで含めた請負として請けているかで最初に分かれる。売買なら棚卸資産の引渡しの日、請負なら仕事を終えて引き渡した日が基準になる。

分かれ目は契約書の表題では決まらない。国税庁の質疑応答事例は、「注文請書」という表題でもカタログ商品の売買契約を内容とするものは第2号文書に当たらないとしている。判定するのは中身で、契約当事者の意思が仕事の完成に重きをおいているか、物の所有権移転に重きをおいているかによる。

履行義務:顧客との契約において、別個の財またはサービス、あるいは特性が実質的に同じで移転のパターンも同じ一連の財またはサービスを顧客に移転する約束(企業会計基準第29号第7項)。

引渡し等の日:物の引渡しを要する取引ではその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要しない取引では約した役務の全部を完了した日(法人税基本通達2-1-21の2)。

取付けが請負になる線と売買になる線

印紙税法基本通達別表第一第2号文書の2は、請負と物品の譲渡の判別が明確にできない製作物供給契約について、次の区分を示している。建材の取引に関わる行を抜き出す。

契約の内容 区分 通達の挙げる例
注文者の指示に基づき一定の仕様または規格等に従い、製作者の労務により工作物を建設する 請負 家屋の建築、道路の建設、橋りょうの架設
注文者が材料の全部または主要部分を提供(有償か無償かを問わない)し、製作者が一定物品を製作する 請負 材料支給による物品の製作
製作者の材料を用いて注文者の設計または指示した規格等に従い一定物品を製作する 請負 船舶、車両、機械、家具等の製作
一定の物品を一定の場所に取り付けることにより所有権を移転する 請負 大型機械の取付け
上と同じだが、取付行為が簡単であって特別の技術を要しない 物品の譲渡 家庭用電気器具の取付け
あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し供給する 物品の譲渡 カタログまたは見本による機械、家具等の製作
修理または加工 請負 建物、機械の修繕、塗装

取付けを伴う建材が割れるのは、所有権の移転を内容とする取付けの行と、その但書の行の間になる。線は取付行為が簡単であって特別の技術を要しないかどうかで、通達が請負側に置く例が大型機械の取付け、譲渡側に置く例が家庭用電気器具の取付け。質疑応答事例では、譲渡側の例はテレビを購入したときのアンテナの取付けや配線とされている。

法人税で売上が載る日

法人税法22条の2第1項は、資産の販売等に係る収益の額を、目的物の引渡しまたは役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入すると定める。第2項はその例外で、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、契約の効力が生ずる日その他の引渡しの日に近接する日の属する事業年度の確定した決算で収益として経理した場合には、その年度の益金とする。確定決算で経理していなくても、近接する日の属する事業年度の確定申告書に益金算入に関する申告の記載があれば、経理したものとみなされる(第3項)。

その「引渡しの日」を具体的にどの日でとるかは、売買と請負で別々の通達が候補を並べている。どちらも、法人が継続してその日で収益計上していることが条件になる。

取引 引渡しの日の候補 根拠
棚卸資産の販売 出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日 法人税基本通達2-1-2
建設工事等の請負 作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日 法人税基本通達2-1-21の8

請負の原則は引渡し等の日で、途中の進捗では立てない(2-1-21の7)。ただし例外があり、その請負が次のいずれかを満たす場合に、進捗度で算定した額を益金に算入しているときはそれが認められる(2-1-21の4)。

  1. 義務を履行するにつれて相手方が便益を享受すること
  2. 義務の履行により資産が生じ、または資産の価値が増加し、それにつれて相手方がその資産を支配すること
  3. 別の用途に転用できない資産が生じ、かつ履行を完了した部分について対価の額を収受する強制力のある権利を有すること

進捗度は、役務の提供に係る原価の総額のうち既に要した原材料費、労務費その他の経費の額が占める割合などで計算する(2-1-21の6)。合理的に見積もれない場合でも原価の回収が見込まれるならその原価の額を収益とし、履行に着手した後の初期段階で見積もれないときは益金に算入しないことができる(2-1-21の5の注2と注3)。

材料と据付を分けて計上できる場合

法人税基本通達2-1-1の2は、機械設備等の販売に伴って据付工事を行った場合、その据付工事が相当の規模のものであり、かつ契約その他に基づいて機械設備等の販売に係る対価の額と据付工事に係る対価の額とを合理的に区分できるときは、区分した単位ごとに収益の額を計上できるとする。一つの契約に複数の履行義務が含まれるかの判定にかかわらず適用できる形になっている。

消費税も同じ形で、消費税法基本通達9-1-9が据付工事の対価を区分して資産の譲渡等の時期を別々にとることを認めている。同通達の注は、この扱いによらない場合は据付工事の対価を含む全体の販売代金を対価とする資産の譲渡となり、その時期は棚卸資産の譲渡の時期(9-1-1)によるとしている。対価を区分していない取引は、据付を終えて引き渡すまで全体が売上に立たない。

通達が置く条件は「契約その他に基づいて」合理的に区分できることなので、区分の根拠は契約書か注文書の側にある。商品代と工事費を一式でまとめた金額欄しかない取引では、この扱いは取れない。

完成前に一部を引き渡す取引

建設工事等について次の事実があるときは、全部が完成しなくても、その事業年度に引き渡した量または完成した部分に区分した単位ごとに収益を計上する(法人税基本通達2-1-1の4)。同じ要件が消費税法基本通達9-1-8にも置かれている。

要件になっているのは出来高で代金を収入する特約または慣習の有無で、規模や工期は関係しない。通達の書き方は「計上する」で、特約または慣習があれば選択の余地なくその単位で立てる。

なお、資材の値上りに応じて一定の値増金を収入することが契約で定められている場合、その値増金は建設工事等の引渡しの日の属する課税期間の課税標準額に算入する。相手方との協議で収入すべきことが確定する値増金は、金額が確定した日の属する課税期間に入る(消費税法基本通達9-1-7)。

工事進行基準が義務になる線

工事進行基準の強制適用は、法人税法63条1項の長期大規模工事に限られる。要件は3つで、いずれも満たすものだけが対象になる。

要件 内容 根拠
工期 着手の日から契約で定められた目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上 法人税法63条1項
規模 請負の対価の額が10億円以上 施行令129条1項
支払条件 請負対価の2分の1以上が引渡期日から1年を経過する日後に支払われることが契約で定められていないこと 施行令129条2項

進行割合は、見積もった工事原価の総額のうちに既に要した原材料費、労務費その他の経費の額が占める割合その他合理的と認められるもので計算する(施行令129条3項)。着手したかどうかは、工事の内容を完成するために行う一連の作業のうち重要な部分の作業を開始したかどうかで判定し、設計に関する作業を重要な部分に含めるかは法人の選択による(同7項)。期末時点で着手の日から6月を経過していないもの、または進行割合が20%に満たないものは、その年度の収益と費用をないものとできる(同6項)。

10億円に届かない工事は63条2項の任意適用で、着工した事業年度中に引渡しが行われないものについて、確定した決算で工事進行基準により経理したときにその額が益金と損金になる。着工事業年度の後のいずれかの年度で経理しなかった場合、その翌事業年度以後は適用できない。消費税でも、法人税で工事進行基準により益金に算入した部分は、その事業年度終了の日の属する課税期間に資産の譲渡等を行ったものとできる(消費税法17条1項と2項)。適用を受けるには申告書にその旨を付記する(同4項)。

期末をまたぐ取引の分岐

決算日をまたいだ取引を、どの期に載せるかで整理すると次のようになる。

状況 載る期 根拠
建材を売り切りで納品、出荷が当期で相手方の検収が翌期。出荷の日で継続計上している 当期 法人税基本通達2-1-2
同じ取引で、検収の日で継続計上している 翌期 同上
取付けまで請け負い、据付が相当の規模で対価を区分している 材料は引渡しの期、据付は工事完了の期 法人税基本通達2-1-1の2、消費税法基本通達9-1-9
取付けまで請け負い、対価を区分していない 全体が引渡し等の日の期 法人税基本通達2-1-21の7、消費税法基本通達9-1-9の注
引渡量または完成部分に応じて工事代金を収入する特約か慣習がある 引き渡した量または完成した部分ごとにその期 法人税基本通達2-1-1の4、消費税法基本通達9-1-8
工期1年以上かつ請負対価10億円以上の長期大規模工事 進行割合に応じて各期 法人税法63条1項、施行令129条
上記以外の工事で、着工の期に引渡しがなく、確定決算で工事進行基準により経理した 進行割合に応じて各期 法人税法63条2項

どの日をとるかは選べても、期ごとに選び直すことはできない。通達はいずれも「法人が継続してその収益計上を行うこととしている日」と書いており、決算の数字を見てから出荷基準と検収基準を入れ替える余地はない。

会計側の並び

企業会計基準第29号は、履行義務が一定の期間にわたり充足されるか一時点で充足されるかを、契約における取引開始日に判定する(第36項)。一定の期間にわたる側の要件は法人税基本通達2-1-21の4と同じ3つで、これを満たさないものが一時点で充足される履行義務になる(第38項、第39項)。支配の移転を検討する指標として挙がるのは、対価を収受する現在の権利、法的所有権、物理的占有の移転、所有に伴う重大なリスクと経済価値、顧客の検収の5つ(第40項)。

実務向けの代替的な取扱いが2つある。工事契約のうち、取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短いものは、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に充足した時点で認識できる(適用指針第95項)。国内の商品または製品の販売では、出荷時から支配が顧客に移転する時までの期間が通常の期間である場合、出荷時や着荷時など、その間の一時点で認識できる(同第98項)。通常の期間とは、国内の出荷と配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数をいう。

金融商品取引法の適用を受ける会社とその子会社や関連会社、会計監査人を設置する会社とその子会社を除く株式会社は、中小企業の会計に関する指針の適用対象になる(同指針4項)。同指針は工事契約について、進行途上でも進捗部分について成果の確実性が認められる場合は工事進行基準、満たさない場合は工事完成基準とする。成果の確実性が認められるには、工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度の3つを信頼性をもって見積もれることが要る(74項(3))。

契約書に貼る印紙

請負に当たると第2号文書になり、契約金額に応じた階級定額の印紙税がかかる。物品の売買契約は、継続する売買で第7号文書になるものを除いて不課税文書になる。第7号文書は1通4,000円で、契約期間が3か月以内かつ更新の定めのないものは除かれる。

建設工事の請負に関する契約書は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成するもので契約金額100万円超のものが軽減の対象になる。軽減前と軽減後の差は次のとおり。

契約金額 第2号文書の税額 建設工事の請負の軽減後
100万円超200万円以下 400円 200円
200万円超300万円以下 1,000円 500円
300万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
契約金額の記載のないもの 200円 軽減対象外

軽減されるのは建設工事の請負で、建設工事以外の請負に関する事項が併記されていても、建設工事の請負契約に基づき作成される契約書なら全体が対象になる。建物建設工事5,000万円と建物設計500万円を記載した契約書の契約金額は5,500万円で、税額は3万円という例が示されている。

確認先: 法人税基本通達 第2章第1節、消費税法基本通達 第9章第1節、印紙税法基本通達 別表第一 第2号文書