2025年4月1日以降に着工する新築住宅は、省エネ基準に適合しないと確認済証が交付されない。外皮側の最低ラインは断熱等性能等級4にあたり、4〜7地域の充填断熱の軸組構法なら壁の断熱材は熱抵抗2.2以上、窓は5〜7地域で熱貫流率4.7以下だ。窓の4.7は、金属製建具に中空層6mmの複層ガラスを入れた構成でも届く。樹脂サッシに替えなくても義務は満たせる。

一方、ZEH基準にあたる誘導基準(断熱等性能等級5)の窓は2.3以下で、アルミ樹脂複合建具にLow-E複層ガラスG14、または樹脂建具にLow-E複層ガラスA12が要る。義務ラインとZEH水準では、拾い出す建材のグレードが1段変わる。

義務化の対象と適用除外

建築物省エネ法の改正により、令和7年4月1日以降に着工する新築と増改築の全ての住宅と非住宅が省エネ基準適合義務の対象になった。省エネ基準適合は建築基準関係規定なので、適合が確認できない限り確認済証は交付されず、着工できない。

適用除外は、10㎡以下の新築と増改築、居室を持たないか高い開放性を持つことで空調設備が要らない用途(自動車車庫、畜舎、公共用歩廊など)、文化財、応急仮設建築物。増改築は「増改築を行った部分+既存部分の全体で適合」から「増改築を行った部分で適合」へ見直された。建築基準法の増改築に当たらないリフォームと、別棟による敷地内増築は含まれない。

基準の示し方

外皮性能の示し方には、外皮平均熱貫流率UAを計算する方法と、部位ごとの仕様を表に照らす仕様基準がある。仕様基準で図面を組むと省エネ適合性判定が省略でき、建築確認の審査の中で適合が確認される。提出物は仕様基準への適合が確認できる設計図書。

熱抵抗R:断熱材の厚さを熱伝導率で割った値。単位は㎡・K/W。同じ厚さでも熱伝導率が小さい断熱材ほど大きくなる。

熱貫流率U:建具とガラスを合わせた開口部が熱を通す度合い。単位はW/(㎡・K)。小さいほど熱を逃がさない。

国土交通省の仕様基準ガイドブックは1〜3地域版、4〜7地域版、8地域版に分かれる。関東から九州北部までの平野部の大半は4〜7地域に入る。

部位別の必要熱抵抗(省エネ基準、4〜7地域)

断熱材の熱抵抗が、部位と工法ごとに次の値以上であること。

部位 充填断熱(軸組構法) 充填断熱(枠組壁工法) 外張断熱
屋根 4.6 4.6 4.0
天井 4.0 4.0 4.0
2.2 2.3 1.7
床(外気に接する部分) 3.3 3.1 2.5
床(その他の部分) 2.2 2.0
基礎壁(外気に接する部分) 1.7 1.7 1.7
基礎壁(その他の部分) 0.5 0.5 0.5

1つの部位に複数の仕様があるときは、熱抵抗が小さい側を記入して判定する。1つの部位で断熱材を複層にした場合は、それぞれの熱抵抗を合計できる。玄関や勝手口の土間床部分の断熱は省略でき、断熱されているバスユニットの床は床(その他の部分)の確認から外せる。

断熱材の厚さ(充填断熱の軸組構法)

ガイドブックが載せている仕様例。同じ基準値でも、熱伝導率の低い断熱材を選ぶほど厚さは薄くなる。

部位 必要熱抵抗 仕様例(繊維系) 仕様例(プラスチック系)
屋根 4.6以上 高性能グラスウール16K 90+90mm(R=4.8) 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 65+65mm(R=4.6)
天井 4.0以上 高性能グラスウール14Kまたは16K 155mm(R=4.1) ロックウール155mm(R=4.1)
2.2以上 高性能グラスウール14Kまたは16K 85mm以上 ロックウール90mm以上
床(外気に接する部分) 3.3以上 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 100mm(R=3.6)/フェノールフォーム1種2号C 66mm、D 63mm(R=3.3)
床(その他の部分) 2.2以上 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 65mm(R=2.3)/フェノールフォーム1種2号CまたはD 45mm(R=2.3)
基礎壁(外気に接する部分) 1.7以上 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 50mm(R=1.8)/硬質ウレタンフォーム(ボード状)2種2号D 40mm(R=1.8)
基礎壁(その他の部分) 0.5以上 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 20mm(R=0.7)/硬質ウレタンフォーム(ボード状)2種2号D 25mm(R=1.1)

繊維系断熱材は主に充填断熱工法に、プラスチック系断熱材は主に外張断熱工法に使われる。製品ごとの熱抵抗は断熱建材協議会のページに製品名つきで載っている。

窓とドアの基準値

開口部は熱貫流率と日射遮蔽対策の両方を満たす必要がある。4地域に日射遮蔽対策の基準はない。

開口部 4地域 5〜7地域
熱貫流率 3.5以下 4.7以下
日射遮蔽対策 開口部の日射熱取得率0.59以下、ガラスの日射熱取得率0.73以下、付属部材を設ける、ひさしや軒を設ける、のいずれか

ガイドブックの仕様例では、4地域の窓は金属製建具にLow-E二層複層ガラスA9(U=3.5)か、アルミ樹脂複合建具に二層複層ガラスA11(U=3.5)。5〜7地域で有効なひさしや軒がある場所の窓は、金属製建具に二層複層ガラスA6(U=4.7)。ひさしや軒がない場所は窓の日射熱取得率0.59以下が要り、金属製建具にLow-E二層複層ガラスA6を入れた構成でU=4.1、日射取得型でη=0.51、日射遮蔽型でη=0.32になる。ドアは4地域で3.5以下、5〜7地域で4.7以下。

建具とガラスの組み合わせと熱貫流率

窓の熱貫流率は、日本サッシ協会が公表する建具とガラスの組み合わせ表から拾える。中空層のガスはアルゴンガスまたは熱伝導率がこれと同等以下のもの。数値は付属部材なしの値で、シャッターや雨戸、和障子を付けると値は下がる。

建具 ガラス 中空層 熱貫流率
樹脂製/木製 三層複層(Low-E2枚) ガス入り13mm以上 1.60
樹脂製/木製 三層複層(Low-E2枚) ガスなし13mm以上 1.70
樹脂製/木製 複層(Low-E) ガス入り10mm以上 2.15
樹脂製/木製 複層(Low-E) ガスなし11mm以上14mm未満 2.33
樹脂製/木製 複層(一般ガラス) 13mm以上 2.91
樹脂(木)と金属の複合 三層複層(Low-E2枚) ガス入り12mm以上 1.90
樹脂(木)と金属の複合 複層(Low-E) ガス入り14mm以上 2.33
樹脂(木)と金属の複合 複層(Low-E) ガスなし9mm以上 2.91
樹脂(木)と金属の複合 複層(一般ガラス) 11mm以上 3.49
金属製/金属製熱遮断構造 複層(Low-E) ガス入り10mm以上 2.91
金属製/金属製熱遮断構造 複層(Low-E) ガスなし7mm以上14mm未満 3.49
金属製/金属製熱遮断構造 複層(一般ガラス) 8mm以上 4.07
いずれの建具も 単板ガラス 6.51

断熱性能は建具で「金属製」<「樹脂と金属、木と金属の複合材料製」<「樹脂製、木製」の順に上がる。ドアは枠が「金属製」<「金属製熱遮断構造」、戸が「金属製フラッシュ構造」<「金属製断熱フラッシュ構造」の順。カタログで小数点第2位まで表示された値(2.33など)は、小数点第2位を四捨五入した値(2.3)に読み替えてよい。

ZEH水準(等級5)との差分

誘導基準は断熱等性能等級5に対応する。同じ4〜7地域、充填断熱の軸組構法で比べると次のとおり。

部位 省エネ基準(等級4) 誘導基準(等級5) 誘導基準の仕様例
屋根 4.6 5.7 高性能グラスウール24K 105+105mm(R=5.8以上)
天井 4.0 4.4 高性能グラスウール14Kまたは16K 85+85mm以上
2.2 2.7 高性能グラスウール14Kまたは16K 105mm(R=2.8)
床(外気に接する部分) 3.3 3.4 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 100mm(R=3.6)
床(その他の部分) 2.2 2.2 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 65mm(R=2.3)
基礎壁(外気に接する部分) 1.7 1.7 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 50mm(R=1.8)
基礎壁(その他の部分) 0.5 0.7 押出法ポリスチレンフォーム3種bA 20mm(R=0.7)
4地域3.5/5〜7地域4.7 4〜7地域とも2.3 アルミ樹脂複合建具+Low-E二層複層ガラスG14、または樹脂建具+Low-E複層ガラスA12
ドア 4地域3.5/5〜7地域4.7 4〜7地域とも2.3 金属製熱遮断構造の枠+金属製断熱フラッシュ構造の戸(Low-E二層複層ガラスA12)

外張断熱の誘導基準は屋根4.8、壁2.3、床(外気に接する部分)3.1。壁の高性能グラスウールは85mmから105mmへ、屋根は16Kの90+90mmから24Kの105+105mmへ動く。窓は金属製建具にLow-E複層ガラスを入れても付属部材なしで2.91どまりで、複合建具か樹脂建具に上がる。国は2030年度までに新築住宅でZEH基準の水準の省エネ性能を確保する義務化を目標に置いている。

等級6と7の外皮性能

住宅性能表示制度の断熱等性能等級は、2022年に等級5から7が加わった。UA値の基準は次のとおり。8地域はUAの基準を持たず、冷房期の平均日射熱取得率ηACだけで判定する。

等級 1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
等級4(平成28年省エネ基準) 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
等級5(誘導基準・ZEH基準) 0.40 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60
等級6(ZEH+ハイグレード仕様) 0.28 0.28 0.28 0.34 0.46 0.46 0.46
等級7 0.20 0.20 0.20 0.23 0.26 0.26 0.26

ηACの基準値は5地域3.0、6地域2.8、7地域2.7で等級4から7まで共通。8地域は等級4と5が6.7、等級6が5.1。

等級6と7になると、窓のグレードが基準を決める側に回る。断熱建材協議会の仕様例を国土交通省の設計ガイドが抜粋しており、軸組構法にフェノールフォームを使う等級6の例では窓の熱貫流率が1〜3地域と4地域で1.3、5〜7地域で1.6。等級7の例では窓1.06、ドア0.95で、1〜3地域のUAが0.20、4地域0.23、5〜7地域0.25になる。組み合わせ表の最小値は、樹脂建具にガス入り三層複層Low-E2枚を入れて付属部材なしで1.60、シャッターや和障子を付けても1.38。等級7の1.06は表から拾えず、試験や計算で性能を出した製品を個別に当たることになる。

東京が入る6地域では、等級4のUA0.87で暖房期の最低室温がおおむね8℃、等級6のUA0.46で13℃、等級7のUA0.26で15℃を下回らない水準になる(HEAT20のシナリオによる)。暖房エネルギーは部分間欠暖房の場合、等級6で省エネ基準比およそ55%減、等級7でおよそ75%減。

断熱材の区分と熱伝導率

同じ「16K」でも住宅用と高性能で区分が違う。国土交通省が示す区分は次のとおり。

区分 熱伝導率 W/(m・K) 断熱材の種類の例
A-1 0.052〜0.051 吹込み用グラスウール(13K、18K)、タタミボード15mm、A級インシュレーションボード9mm
A-2 0.050〜0.046 住宅用グラスウール10K相当、吹込み用ロックウール25K
B 0.045〜0.041 住宅用グラスウール16K相当、住宅用グラスウール20K相当、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板4号
C 0.040〜0.035 住宅用グラスウール24K相当と32K相当、高性能グラスウール16K相当、24K相当、32K相当、ロックウール(マット、フェルト、ボード)、押出法ポリスチレンフォーム保温板1種、フェノールフォーム保温板2種1号と3種、吹付け硬質ウレタンフォームA種3、吹込用セルローズファイバー
D 0.034〜0.029 高性能グラスウール40K相当と48K相当、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、硬質ウレタンフォーム保温板1種、吹付け硬質ウレタンフォームA種1とA種2、フェノールフォーム保温板2種2号
E 0.028〜0.023 押出法ポリスチレンフォーム保温板3種、硬質ウレタンフォーム保温板2種、フェノールフォーム保温板2種3号
F 0.022以下 フェノールフォーム保温板1種1号と1種2号

住宅用グラスウール16Kは区分B(0.045〜0.041)で、高性能グラスウール16Kは区分C(0.040〜0.035)。厚さを熱伝導率で割ると、85mmの壁で得られる熱抵抗は区分Bで1.9から2.1、区分Cで2.1から2.4。区分Bの16Kは85mmでは壁の基準2.2を割り、区分Cでも熱伝導率が0.040寄りの製品は届かない。密度の表示が同じでも熱抵抗は変わるので、判定は製品ごとの熱抵抗の表示で行う。

仕様基準ルートを選んだときの手続き

省エネ適合性判定を省略できるのは次の3つ。共同住宅は全住戸の評価書などの交付を受け、確認審査の末日の3日前までに提出した場合に限る。

省略の根拠 建築確認申請時の提出書類
仕様基準等で適合を示す 仕様基準等への適合が確認できる設計図書
設計住宅性能評価書(断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4以上) 宣言書と評価書(評価書は確認審査の末日の3日前までの提出でよい)
長期優良住宅認定通知書、または長期使用構造等である旨の確認書 宣言書と認定通知書(同上)

確認済証の交付後の変更は、省エネ性能を上げる変更と性能に影響しないことが明らかな変更なら、完了検査の申請時に軽微な変更説明書を出す。再計算で適合が明らかな変更は、軽微な変更該当証明書を添える。軽微な変更に当たらない場合は、変更後の計画を所管行政庁か登録省エネ適判機関に出して判定を受け直す。

確認先: 木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック 省エネ基準編 4〜7地域版同 誘導基準編 4〜7地域版断熱建材協議会の製品別熱抵抗