2026年上半期の建設業は、倒産と休廃業を合わせて5,937件が市場から退場した。帝国データバンクの集計で、2009年上半期の5,811件を超えて過去最多になる。内訳は倒産が1,043件(前年同期比5.8%増)、休廃業・解散が4,894件(同27.8%増)。廃業のほうが倒産の4倍を超える。売掛金を持つ側から見れば、取引先が消える形は法的整理だけではない。

上半期に何件倒れたか

調査会社2社が上半期の集計を出している。件数は集計する会社で異なる。

区分 件数 前年同期比 集計
建設業の倒産 1,043件 5.8%増(57件増) 帝国データバンク
建設業の休廃業・解散 4,894件 27.8%増(1,064件増) 帝国データバンク
建設業の倒産・廃業合計 5,937件 過去最多(2009年上半期5,811件) 帝国データバンク
建設業の倒産 1,026件 5.8%増 東京商工リサーチ
全産業の倒産 5,346件 7.1%増 東京商工リサーチ

帝国データバンクの業種別(倒産と廃業の合計)では、木造建築工事が947件で全体の約16%を占め、上半期として9年ぶりに900件を超えた。専門工事の伸びが大きく、左官工事104件(前年同期比67.7%増)、金属製屋根工事50件(同66.7%増)、タイル工事45件(同60.7%増)と続く。要因には資材の欠品と値上がり、建築基準法改正による確認申請の厳格化、職人不足、住宅ローン金利の上昇による着工減が挙がっている。

東京商工リサーチの集計では、全産業の倒産5,346件に対して負債総額は7,340億8,200万円。従業員10人未満が90.6%、負債1億円未満が4,120件で構成比77.0%を占める。負債10億円以上は114件だった。

建材まわりでも実例が出ている。集成材メーカーの菱秋木材(秋田県能代市)は7月14日に秋田地裁から破産手続開始決定を受け、負債は約29億8000万円。注文住宅のアエラホーム(東京都千代田区)は7月16日に東京地裁へ民事再生を申し立て、債権者は金融機関と取引業者で約560社にのぼる。

取引先の異変を追う公的な情報源

信用調査会社の報告書を取るほどではない相手でも、無料または数百円で登記と公告は追える。

情報源 費用 分かること
官報発行サイト(内閣府) 無料 破産手続開始の決定とその主文、破産管財人の氏名、債権届出期間
法人番号公表サイト(国税庁) 無料 商号、本店所在地、法人番号と、その変更履歴。一括ダウンロードとWeb-APIも無料
登記情報提供サービス(法務省の指定法人) 商業・法人の全部事項330円/件 役員の変更、本店移転、目的変更など登記の動き
同(動産譲渡・債権譲渡の登記事項概要ファイル) 140円/件 売掛債権や在庫が他社へ譲渡登記されているか
TDnet適時開示 無料 上場企業とその子会社の民事再生、特別損失、工場閉鎖、事業譲渡

官報は2025年4月1日の「官報の発行に関する法律」施行で電子化され、官報発行サイトに載る電子データが正本になった。発行から原則90日は官報全体を閲覧してダウンロードでき、90日を過ぎてもプライバシーへの配慮が要る一部の記事を除いて読める。行政機関の休日を除く毎日、午前8時30分の発行になる。

破産法の公告がここに集まる仕組みは条文で決まっている。同法10条1項が「この法律の規定による公告は、官報に掲載してする」と定め、32条1項が、裁判所は破産手続開始の決定をしたときは直ちに、決定の主文と破産管財人の氏名、債権届出の期間または期日を公告しなければならないとしている。同条3項で、知れている破産債権者にはこの内容が通知される。

登記情報提供サービスの料金は令和8年4月1日現在で、利用登録の費用が別にかかる(法人740円、個人300円)。不動産登記の全部事項も330円、所有者事項は140円、地図・図面情報は360円。

連鎖倒産に備える経営セーフティ共済

中小企業基盤整備機構の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、掛金を先に積んでおき、取引先の倒産で売掛金の回収が難しくなったときに借り入れる制度になっている。倒れてから資金を探すのではなく、積立を先に済ませておく建て付けになる。

項目 内容
掛金月額 5,000円〜20万円(5,000円単位で選択、増額と減額が可能)
掛金総額の積立上限 800万円
借入上限 回収困難な売掛金債権等の額と、掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ないほう
担保・保証人 不要
返済期間 5〜7年(据置期間6か月を含む)
加入資格 1年以上事業を継続していること。業種ごとの資本金・従業員数の要件あり
掛金の税務上の扱い 損金(法人)または必要経費(個人事業)に算入

借入れには時期の条件が付く。加入から6か月以上たった後に起きた倒産であること、掛金を6か月分以上納めていること、倒産日から6か月以内に手続きをすること。積み始めてすぐの取引先の倒産には使えない。

制度が「倒産」として扱う事由も決まっている。破産、再生、更生、特別清算の各手続開始の申立て、手形交換所の取引停止処分、でんさいネットの取引停止処分、私的整理、災害による不渡り、特定非常災害による支払不能。夜逃げは対象外になる。

破産手続開始から債権届出まで

取引先が破産手続開始決定を受けた後、債権者側が動く順に並べる。

段階 何が起きるか 債権者側の動き
破産手続開始決定 官報に公告が載る 官報発行サイトで公告を確認する
管財事件の場合 破産管財人から破産債権届出書が届く 債権額を記載し、証拠書類を添えて期限内に提出
同時廃止事件の場合 配当が行われないため届出書は送られない 届出の手続きは発生しない
債権届出期間 裁判所が期間を定める 期限内に届け出ないと配当を受けられないことがある
共済金の借入請求 倒産日から6か月以内が期限 経営セーフティ共済の加入者は並行して手続きする

破産管財人の連絡先が分からないときは、事件番号と破産者名を伝えれば裁判所から教えてもらえる。届出書に添える証拠書類は、債権の存在を示す契約書、請求書、納品書などになる。

取適法の手形払い禁止と回収リスク

2026年1月1日に取適法(中小受託取引適正化法)が施行された。手形払い等の禁止と、協議に応じない一方的な代金決定の禁止が加わり、従来の資本金基準に従業員基準が足された。対象になるのは製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5類型で、建設工事の請負はここに含まれない。

回収リスクの観点では、手形の有無が期間の長さに直結する。手形は満期まで資金化できず、その間に振出人が倒れれば受け取った側は回収できない。手形が使えない取引では、この待ち時間そのものが消える。建材の製造委託を受けている加工業者や商社は、自社の受託取引がこの5類型に当たるかを確認する対象になる。

与信管理のチェックリスト

新規口座を開くときと、既存先の取引額が増えたときに回す。

# 確認項目
1 商業・法人登記の全部事項を取り、役員変更と本店移転の履歴を見た
2 債権譲渡登記の有無を登記事項概要ファイルで確認した
3 法人番号公表サイトで商号と所在地の変更履歴を照合した
4 上場企業とその子会社なら、TDnetの適時開示を確認した
5 与信限度額を金額で決め、超えたら前金か担保を求める線を引いた
6 支払条件(支払方法とサイト)を契約書面に落とした
7 経営セーフティ共済の加入状況と、掛金総額の10倍が主要取引先の売掛残高を賄えるかを確かめた
8 官報発行サイトで主要取引先名を定期的に検索する担当と頻度を決めた

支払条件を相見積もりの段階で比べる段取りは建材の相見積もりの取り方にまとめている。倒産と法的整理の個別事例は企業動向の記事で追っている。