現場に建材が届いて、荷受けの担当者が受領のサインをする。その瞬間に、後から不具合が出たときに誰へ請求できるかが決まる。運送中に付いた傷と一部の欠品については、荷受人が留保をとどめないで受け取ったときに運送人の責任が消える(商法584条1項)。

消えるのは運送人への請求で、売主への請求は別の条文が受け持つ。症状によって相手が変わり、期限もそろっていない。

受け取った時点で切れるもの

荷受人は運送契約の当事者ではない。それでも運送品が到達地に到着したとき、または運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する(商法581条1項)。工務店が商社の手配した便で建材を受け取る形でも、運送会社への損害賠償はこの条文を通って荷受人の側に来る。

その権利が、受取の仕方で消える。損傷と一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときに消滅する(商法584条1項本文)。ただし書きが残すのは、直ちに発見することができない損傷または一部滅失があった場合に、荷受人が引渡しの日から2週間以内に通知を発したときだけ。引渡しの当時に運送人が損傷や一部滅失を知っていたときは、そもそも1項が働かない(同条2項)。

運送会社の約款も同じ形で書かれている。一般貨物自動車運送事業者は運送約款を定めて国土交通大臣の認可を受けるが、国が公示した標準運送約款と同一のものを定めたときは認可を受けたものとみなされる(貨物自動車運送事業法10条3項)。標準貨物自動車運送約款47条1項は、当店の貨物の一部滅失または損傷についての責任は荷受人が留保しないで貨物を受け取ったときは消滅するとし、直ちに発見することのできない損傷または一部滅失について引渡しの日から2週間以内の通知を例外に置く。

宅配便は書き方が違う。標準宅配便運送約款24条1項は、荷物の損傷についての責任は荷物を引き渡した日から14日以内に通知を発しない限り消滅する、とする。留保の有無で分けず、期間だけで切る。運送を引き受けた会社がさらに別の運送会社へ委託していた場合は、期間が数え直される。荷受人が2週間以内に元の運送会社へ通知を発したときは、下請の運送会社の責任についての2週間が、元の運送会社が通知を受けた日から起算し直したものとみなされる(商法584条3項、標準貨物自動車運送約款47条3項)。

事故証明書が出る期間

損害を運送会社に認めさせる書面が事故証明書で、請求できる期間が症状ごとに決まっている。

約款 症状 事故証明書を請求できる期間 条項
標準貨物自動車運送約款 全部滅失 引渡期間の満了の日から1か月以内 31条1項
標準貨物自動車運送約款 一部滅失、損傷、延着 当該貨物の引渡しの日に限る。特別の事情がある場合は引渡しの日以降も発行することがある 31条2項
標準宅配便運送約款 滅失 荷物引渡予定日から1年以内 19条1項
標準宅配便運送約款 損傷、遅延 荷物を引き渡した日から14日以内 19条2項
標準貨物自動車利用運送約款 全部滅失 引渡期間の満了の日から1か月以内 31条1項
標準貨物自動車利用運送約款 一部滅失、き損、延着 当該貨物の引渡しの日に限る。特別の事情がある場合は引渡しの日以降も 31条2項

一般貨物の便で届いた建材が割れていた場合、事故証明書の請求は届いた当日が原則の期限になる。責任を残す通知の側は2週間あるので、通知の期限と証明書の期限が2週間ずれている。

延着かどうかは引渡期間で判定する。引渡期間は発送期間として貨物を受け取った日を含め2日、輸送期間として運賃と料金の計算の基礎となる輸送距離170キロメートルにつき1日(1日未満の端数は1日)、集貨と配達をする場合は各1日を合算した期間(同5条1項)。この期間の満了後に引渡しがあったときが延着になる(同条2項)。

運送会社が負う範囲

運送人は、貨物の受取から引渡しまでの間に滅失や損傷や延着が生じたときは損害を賠償する責任を負う。免れるのは、自己と使用人その他運送のために使用した者が受取から引渡しまで注意を怠らなかったことを証明したときに限られる(同40条)。立証の負担が運送人の側にあるのが原則の形。

コンテナ詰めの貨物は逆になる。荷送人が貨物を詰めたもので、コンテナの封印に異常がない状態で到着している場合、損害賠償を請求しようとする者の側が運送人または使用人の故意または過失を証明しなければならない(同41条)。荷送人が積み込んで封をした荷姿は、開けてみて中身が割れていても運送会社に持っていきにくい。

免責事由には建材でよく出る症状が並ぶ。貨物の欠陥、自然の消耗、虫害、鼠害。貨物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さび。同盟罷業などの事変や強盗。不可抗力による火災。地震や津波や暴風雨などの天災。法令や公権力の発動による差止め。荷送人または荷受人の故意または過失(同45条)。木材の変色や金属建材のさびは、運送中に進んだものでも運送会社の責任から外れる側に置かれている。

賠償の額は、引渡しがされるべき地および時における運送品の市場価格で決まり、市場価格がないときは同種類で同一の品質の物品の正常な価格による(商法576条1項)。一部滅失または損傷の場合は、引き渡された貨物の価額と、一部滅失や損傷がなかったときの価額との差額(標準貨物自動車運送約款48条2項)。滅失や損傷のために支払わずに済んだ運賃と料金は賠償額から差し引かれる(商法576条2項、同48条3項)。延着の賠償は運賃と料金等の総額が上限(同48条5項)。価額や損害額に争いがあるときは、公平な第三者の鑑定または評価で決める(同条4項)。

これらの限度が外れる条件は、約款が当店の悪意または重大な過失、商法が運送人の故意または重大な過失と書き分けている。約款49条にあたるときは生じた一切の損害を賠償し、商法576条3項にあたるときは市場価格による算定と運賃の控除が適用されない。高価品は逆向きに働き、荷送人が運送を委託するに当たり種類と価額を通知しなかったときは、運送人は滅失も損傷も延着も賠償しない(商法577条1項、同46条1項)。運送契約の締結の当時に運送人が高価品と知っていたとき、運送人の故意または重大な過失があったときは、この特則は適用されない。

期間の最後の線が除斥期間で、貨物の引渡しがされた日(全部滅失なら引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないときに責任が消える(商法585条1項、同50条1項)。この1年は、滅失等による損害が発生した後に限って合意で延長できる(商法585条2項、同50条2項)。

宅配便は賠償の上限が別に置かれている。滅失による損害は発送地における荷物の価格を送り状に記載された責任限度額の範囲内で賠償し、損傷による損害は荷物の価格を基準に損傷の程度に応じて同じ限度額の範囲内で賠償する(標準宅配便運送約款25条1項2項)。荷送人または荷受人に著しい損害が生ずることが明白と認められるときも、賠償は限度額の範囲内にとどまる(同条3項)。

請求先を追いかける手間は約款が減らしている。運送会社が他の貨物自動車運送事業者や他の運送機関を利用して運送した場合でも、運送上の責任はこの約款により引き受けた運送会社が負う(標準貨物自動車運送約款51条)。実際に運んだ会社を突き止めなくても、荷札に書かれた相手に言えば足りる。

運賃の側にも扱いがある。天災その他やむを得ない事由により滅失し、もしくは相当程度の損傷を生じたとき、または運送人が責任を負う事由により滅失したときは、その貨物に係る運賃と料金等を請求しない。既に収受していれば払い戻す(同36条1項)。反対に、貨物の性質もしくは欠陥または荷送人の責任による事由で滅失したときは運賃と料金等の全額を収受する(同条2項)。全部の価額を賠償した運送会社は、その貨物に関する一切の権利を取得する(同52条)。

運送の途中で事故が起きたときの連絡先は荷受人ではない。運送人は、貨物の著しい滅失や損傷その他の損害を発見したとき、当初の運送経路や運送方法によれなくなったとき、相当の期間の運送中断が避けられないときは、遅滞なく荷送人に対し相当の期間を定めて貨物の処分につき指図を求める(同29条1項)。指図を待ついとまがないときと、定めた期間内に指図がないときは、荷送人の利益のために運送人の裁量で運送の中止や返送や経路変更などの処分をすることがある(同条2項)。工務店の側に第一報が入るとは限らない。

売主に言う場合の期限

売主への通知は商法526条が受け持つ。商人間の売買では、買主は目的物を受領したときは遅滞なく検査しなければならない(1項)。検査で種類、品質、数量の不適合を見つけたときは、直ちに売主に通知しなければ追完請求も代金減額も損害賠償も契約解除もできない(2項前段)。

2項後段の6か月は、対象が狭い。適用されるのは「売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合」で、数量は文言に入っていない。梱包を開けずに積み置いた建材の数量不足が2か月後に出てきても、6か月ルールでは拾えない。数量の不適合は、受領後の検査で見つけて直ちに通知する経路しか残らない。

症状 期限 根拠
検査で見つけた種類、品質、数量の不適合 直ちに通知 商法526条2項前段
直ちに発見できない種類または品質の不適合 受領後6か月以内に発見して通知 同条2項後段
直ちに発見できない数量の不適合 6か月の延長なし。検査して直ちに通知する経路のみ 同条2項の文言
売主が不適合につき悪意 期間の制限なし 同条3項
商人でない相手との売買(種類または品質) 不適合を知った時から1年以内に通知 民法566条

民法566条の側も種類または品質に限った規定で、売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは期間制限が外れる。

引渡しの後に双方の責めによらない事由で滅失または損傷したときは、買主は追完請求も代金減額も損害賠償も解除もできず、代金の支払いを拒めない(民法567条1項)。引渡しが済んだ材料が現場で傷んだ分は買主側に残る。売主への請求と返品の可否、購買契約と製造委託の分かれ目は建材の返品は受領後6か月が上限にまとめている。

症状ごとの請求先

現場で出た症状 請求先 分かれ目になる事実
外装に異常がなく、中身の数が足りない 売主 荷姿が崩れていない。出荷段階の員数違いとして商法526条の通知に乗る
外装が破れている、封印に異常がある、個数が送り状と合わない 運送人 引渡しの時点で外形の異常が見えている。留保をとどめて受け取る対象
開梱したら割れ、欠け、曲がりがある 運送人(直ちに発見できない損傷として引渡日から2週間以内の通知) 梱包の外から見えなかったこと。荷送人が詰めた封印無傷のコンテナ貨物は請求側の立証
品番、色番が発注と違う 売主 運送とは無関係。契約の内容との不適合
ロット違いによる色の差、木目の差 売主 入荷した時点で既にある差で、運送の過程では生じない
到着時点で変色、さび、かびが出ている 売主またはメーカー 貨物の性質による変色とさびとかびは運送人の免責事由(標準貨物自動車運送約款45条2号)
引渡期間の満了後に届いた 運送人(賠償は運賃と料金等の総額が上限) 引渡期間の計算(同5条)

記録と、それが効く相手

残る記録 効く相手 根拠
受取時に留保をとどめた事実 運送人 商法584条1項、標準貨物自動車運送約款47条1項
事故証明書 運送人 同31条(一般貨物の一部滅失と損傷は引渡しの日)
引渡日から2週間以内に発した通知 運送人 商法584条1項ただし書
送り状と外装表示に書かれた個数(表示事項は荷送人と荷受人の氏名または商号と住所、品名、個数) 運送人 標準貨物自動車運送約款13条1項
高価品の種類と価額を委託時に通知した記録 運送人 商法577条1項、同46条1項
受領後遅滞なく検査した事実と、直ちに発した通知 売主 商法526条1項2項
受領日そのもの 委託事業者としての自社の支払期日 取適法3条1項

検収の日付は支払期日を動かさない

自社が特注品の製造を委託した側に回ると、検査の遅れが支払いの遅れの理由にならない。製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法。2026年1月1日に下請代金支払遅延等防止法から移行)が、支払期日の上限を受領日で切っている。製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が給付の内容について検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内において、かつできる限り短い期間内において定めなければならない(取適法3条1項)。

支払期日を定めなかったときは受領した日が、60日を超えて定めたときは受領日から起算して60日を経過した日の前日が、それぞれ支払期日と定められたものとみなされる(同条2項)。支払期日までに払わなかったときの遅延利息は、受領した日から起算して60日を経過した日から支払をする日までの期間について計算する(同6条1項)。検収印を押した日ではなく、荷を受け取った日が起算点になる。

受領そのものを拒むのも禁止行為で、代金の額を減ずることも並ぶ(同5条1項1号3号)。受託者の責めがないのに受領後の物品を引き取らせる行為も禁じられる(同項4号)。

建材ではなく工事として発注した場合は建設業法が受け持ち、期限の作りが変わる。元請負人は、下請負人から請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、通知を受けた日から20日以内で、かつできる限り短い期間内に検査を完了しなければならない(24条の4第1項)。検査で完成を確認した後、下請負人が申し出たときは直ちに引渡しを受ける(同条2項)。下請代金は、元請負人が出来形部分または工事完成後の支払を受けた日から1月以内で、かつできる限り短い期間内に支払う(24条の3第1項)。

場面 期限の起算点 期限 根拠
特注品の製造委託(取適法の対象) 給付を受領した日 60日以内。検査の有無を問わない 取適法3条1項
同上の遅延利息 受領日から60日を経過した日 支払をする日まで 同6条1項
建設工事の下請 完成の通知を受けた日 20日以内に検査を完了 建設業法24条の4第1項
同上の下請代金 元請が支払を受けた日 1月以内 同24条の3第1項

現場での荷受けの段取りと運送の時間規制への対応は現場搬入と荷受けの段取りにまとめている。

割れた建材を前にどこへ電話をかけるかは、荷姿を見た時点で分かれる。外装が壊れていれば運送会社、無事なら売主が最初の相手になる。梱包の外から見えなかった割れは運送会社の側にも2週間残るが、事故証明書は一般貨物の便なら届いた当日で切れる。