建材の請求書に「配送費」と一行で乗ってくる金額は、制度の側では箱が分かれている。運送そのものの対価が運賃、積込みや取卸しや荷待ちの対価が料金、高速道路やフェリーに実際に払った分が実費で、軽油の値動き分は燃料サーチャージとして別に立つ。2024年6月1日に施行された標準貨物自動車運送約款は、運送を第2章、積込みと取卸しと附帯業務を第3章として章ごと分けた。
分ける根拠は原価計算にある。告示の運賃は運送の役務に係る原価だけで計算されているため、運送以外の役務を行えばその分の料金を別に収受する建て付けになっている。有料道路利用料を運賃に含めず別建てにする理由も、国土交通省のQ&A集は「内訳が曖昧となり適切な運賃収受を妨げる恐れがある」と書いている。
| 区分 | 中身 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 運賃 | 距離制運賃、時間制運賃、個建運賃と、それに乗る各種割増 | 告示の運賃表と、運送会社が届け出る運賃料金適用方 |
| 料金 | 待機時間料、積込料・取卸料、附帯業務料、利用運送手数料 | 告示に単価があるもの(待機・積込・取卸)と、各社設定のもの(附帯業務) |
| 実費 | 有料道路利用料、フェリー利用料、特殊車両通行関係費用、駐車場利用料、旅費 | かかった額そのもの |
| 燃料サーチャージ | 軽油価格の変動分 | 基準価格120円からの上昇分を距離と燃費で換算 |
距離制運賃のキロ程の数え方
運賃表の縦軸になるキロ程は、発地で積み込んでから着地で取り卸すまで、貨物を積んで実際に走った距離を指す。往路だけ積んで復路は空で戻るなら、キロ程は往路の距離だけになる。往復とも同じ荷主の貨物を運ぶ場合は往路で1運送、復路で1運送と数え、それぞれの走行距離が別々のキロ程になる。発地を出てA、B、Cと順に卸して発地へ戻るミルクラン型だけは、発地から発地までの全走行距離をキロ程とする。
端数は切り上げる。実車55kmなら60km、212kmなら220km、630kmなら650kmの運賃を適用する。200kmまでは10km刻みなので、現場が10kmの区切りをまたぐかどうかで一段変わる。
運賃表そのものは地方運輸局ごとに別建てで、同じ距離でも管内が違えば額が違う。国土交通省のリーフレットが関東運輸局の表から抜粋している数字は次のとおり。
| キロ程 | 小型車(2tクラス) | 中型車(4tクラス) | 大型車(10tクラス) | トレーラー(20tクラス) |
|---|---|---|---|---|
| 10km | 15,790円 | 18,190円 | 23,060円 | 29,070円 |
| 20km | 17,710円 | 20,430円 | 26,110円 | 33,160円 |
| 30km | 19,630円 | 22,660円 | 29,160円 | 37,240円 |
短距離を反復するピストン輸送や、走行キロは短いのに車両を時間で拘束する運び方には時間制運賃が使われる。関東運輸局の基礎額は中型車で8時間制46,640円、4時間制27,980円。大型車は8時間制60,090円、4時間制36,050円。時間制の場合、待機時間料と積込料・取卸料はその時間の中に包括される。
車上渡しはどこまでか
車上受け・車上渡しは、トラックの荷台の上で商品を受け渡すことを指す。国土交通省のQ&A集はここから先を細かく切り分けている。
荷主が用意したパレットに、取卸しの際に車両の上で商品を載せ替える作業は、ドライバーが荷台の上で行っても附帯作業にあたり、運賃とは別に取卸料が発生する。積込みで荷主がパレットに載せた商品を車上でドライバーが積み替える作業も同じ扱いになる。一方、車上で荷主から引き渡された商品を、荷崩れや破損を防ぐためにドライバーが積み付ける作業には料金が発生しない。車両に備え付けのシートやロープを使った荷崩れ防止や養生も、荷主都合の附帯作業には当たらない。
荷主が積込みや取卸しをしている間、ドライバーが立ち会っている時間は荷主都合の待機時間として扱われる。「荷卸しはこちらでやるからドライバーは待っていてほしい」という段取りは、料金の側では待機時間になる。
附帯業務として料金の対象になる作業は、約款第62条が並べている。品代金の取立て、荷掛金の立替え、荷造り、仕分、保管、検収及び検品、横持ち及び縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業。現場でよく起きる横持ちと縦持ちが名指しで入っている。
告示に金額がない割増
割増には、告示に率が書いてあるものと、書いていないものがある。書いてあるのは休日割増(日曜祝祭日)2割、深夜・早朝割増(22時から5時)2割、それに車種別の特殊車両割増。
| 特殊車両 | 割増率 |
|---|---|
| 冷蔵・冷凍車 | 小型車・中型車・大型車・トレーラーの2割 |
| 海上コンテナ輸送車 | トレーラーの4割 |
| セメントバルク車 | 大型車またはトレーラーの2割 |
| ダンプ車 | 大型車の2割 |
| コンクリートミキサー車 | 大型車の2割 |
| タンク車(石油製品輸送車) | 大型車またはトレーラーの3割 |
| タンク車(化成品輸送車) | 大型車またはトレーラーの4割 |
| タンク車(高圧ガス輸送車) | 大型車またはトレーラーの5割以上 |
金額が書かれていない割増は、運送会社が「運賃料金適用方」という届出書類の中で自社の率を設定する。貨物自動車運送事業報告規則に基づき、設定または変更から30日以内の届出が要る。建材の運搬で効いてくるのは次の5つ。
悪路割増:土木・建築工事の用地や敷地内、木材の伐採搬出などのために仮に設けられた作業道のような場所が対象。造成中の現場に乗り入れる運びは、ここに当たり得る。
特大品割増:長さ、重量、容積などが、運送会社が運賃料金適用方に定めた水準を超えるもの。何をもって特大とするかの基準そのものが各社で違う。
冬季割増:積雪寒冷特別地域における割増。
地区割増:要人来日等による交通規制、通勤時間による渋滞などが理由になる。地名で一律に決まるのではなく、走る時間帯と道路の状況で決まる。
品目別割増:易損品、危険品、特殊物件、汚わい品、貴重品・高価品など。
割引の側にも設定はある。長期契約割引は、長期的な運行計画を立てられて運送効率が上がった場合に適用される。リードタイムを長く取った配達を希望した場合の割引も、速達割増の裏側として置かれている。逆に、通常想定される配達日時より短い納期を求めれば速達割増、有料道路を使わせない依頼をすれば一般道の距離に応じた割増が立つ。
少量配送の個建運賃と最低保証料
車両を貸し切らない少量の運びには個建運賃がある。共同配送や混載で積載率を上げることを想定した建て方で、単一品目であること、荷姿が一定していること、1個の重量や容積が一定していること、十分なリードタイムが確保されることが前提に置かれている。
計算は貸切運賃を最大積載個数と基準積載率で割る形をとる。国土交通省の例では、1両あたりの最大積載可能個数10個、基準積載率80%、東京と大阪の間の貸切運賃10万円で、1個あたり12,500円。実際に7個積んだ荷主は87,500円、2個の荷主は25,000円を負担する。基準積載率は運送会社が自社で設定する。
単位は個に限らない。t建て、立米建て、才建て、パレット建てのうち、荷に合うものを選ぶことになっている。
積む数が最低積載個数に届かないと最低保証料がかかる。下回った数量に個建契約運賃を掛けて出た赤字額を、実際に受託した個数で割った額が1個あたりの上乗せになる。荷主の事前の同意が前提で、最低積載個数は運送会社が設定する。分けて出す回数が増えるほど、1個あたりの負担はこの分だけ上がる。
運賃に入らない実費
有料道路利用料は運賃と別建てで収受する。基本利用料金かETC2.0割引適用後の料金かは当事者間の取り決めによる。
フェリーを使う区間では、航路の海上キロは実車キロ程に含めない。フェリー利用料は、有人航送ならフェリー料金等に航送所要時間×1時間当たり固定費を足して往復2倍、無人航送ならフェリー料金等に航送所要時間×1時間当たり単価(シャーシ固定費等)を足して2倍で計算する。キロ程は発地から発港までと着港から着地までの走行距離を合計した距離になる。
特殊車両通行関係費用も実費で乗る。道路法第47条の2に基づく通行許可申請や第47条の10に基づく通行可能経路の確認に係る手数料、誘導車の配置費用が対象。大型車で長尺物や重量物を運ぶ案件では、この一行が別に立つ。
燃料サーチャージは「走行距離÷燃費×燃料価格上昇額」で計算し、基準価格は120円に設定されている。運賃表の算定根拠となる原価の燃料費も120円で計算されている。
運送を他社に委託したときの手数料
商社や元請が自社で運ばず、他社に運送を委託する形をとると利用運送手数料が乗る。水準は運賃の10%で、運賃から差し引くのではなく運賃に上乗せして荷主から収受する建て付けになっている。原価調査結果における平均的な手数料の水準を根拠にしている。
資本関係は判断に関係しない。100%子会社が親会社の貨物を実運送事業者に運ばせる場合も貨物利用運送事業に当たり、手数料が発生する。下請けが何次まで重なるかに法令上の制限はないが、改正貨物自動車運送事業法で元請には実運送体制管理簿の作成義務が課され、下請けに出す行為の健全化が努力義務になった。
配送を止めたときの中止手数料
発注した配送を止める場合、標準約款第38条は集貨予定日時からの日数で上限を切っている。3日前までに中止すれば請求されない。
| 中止を指図した時点 | 中止手数料の上限 |
|---|---|
| 集貨予定日時の3日前まで | 請求されない |
| 前々日 | 運賃・料金等の20%以内 |
| 前日 | 同30%以内 |
| 当日 | 同50%以内 |
荷送人が責任を負わない事由による中止は対象外で、請求されるのは荷主責任のキャンセルに限られる。集める貨物の到着が遅れて荷主側から取り止めた場合が、国土交通省が挙げている例にあたる。
見積と請求で照らす項目
- 運賃の建て方は距離制か時間制か個建か。個建なら最低積載個数と最低保証料の条件
- キロ程が実車走行分で数えられているか。往復を1運送にまとめていないか
- 適用される運賃表がどの地方運輸局のものか
- 車上渡しの範囲。パレットへの載せ替えを誰がやるか、荷崩れ防止と附帯作業の線引き
- 積込み・取卸しを委託するか。委託するなら運送申込書にその旨が書かれているか
- 横持ち、縦持ち、検収・検品、はい作業を頼むか。頼むなら附帯業務料の額
- 割増の内訳。休日、深夜・早朝、特殊車両は告示の率。悪路、特大品、冬季、地区、品目別は運送会社の運賃料金適用方
- 有料道路利用料、フェリー利用料、特殊車両通行関係費用が別建てになっているか
- 燃料サーチャージの基準価格と算出方法
- 手配を挟む場合の利用運送手数料の有無
- 配送を止める場合の中止手数料の起算点



