サッシの保証書にある「10年」は、サッシそのものに付いた期間ではない。LIXILもYKK APも、本体の保証は引き渡し日から2年で、電装部品は1年。10年が付くのは製品からの雨水の浸入と、複層ガラスの内部結露に限られる。

その2年と10年がどちらも効かなくなる条件が、両社の免責事項の筆頭に置かれている。自社の手配によらない加工と組立と施工に起因する不具合だ。

保証期間の区分

メーカー 対象 期間
LIXIL サッシ、玄関ドア、玄関引戸 施工者よりの引き渡し日から2年(電装部品は1年)
LIXIL 製品からの雨水浸入 10年
YKK AP 窓、シャッター、玄関ドア、引戸、インテリア建材、エクステリア 建築会社よりの引き渡し日から2年(電装部品は1年)。商品からの雨水浸入は10年
YKK AP 内窓 引き渡し日から2年(電装部品は1年)
YKK AP APWシリーズ(230、330、410、430、500、501、511、651、700) 窓枠と複層ガラスと部品の支給が10年(電装部品と網戸ネットは2年)。修理工賃の負担は2年、複層ガラスの内部結露は10年
YKK AP 複層ガラスの内部結露 10年
YKK AP 耐震補強フレーム 引き渡し日から2年
YKK AP 外装建材 引き渡し日から2年(本体保証と色保証の対象品で当社規定の手続きのものを除く)

起算日は工事の種類で動く。LIXILの新築は施工者よりの引き渡し日、改修工事は改修部分の工事完了の日、分譲住宅は建築主への引き渡し日。TOTOの保証起算日は「お取付日」または「お引き渡し日」で、家電量販店などで買って施主が自分で取り付けたウォシュレットは購入店での「お買い上げ日」になる。

雨水の浸入は、症状の定義まで書かれている。LIXILは不具合といえる雨水浸入を「サッシ下枠を越えて雨水が流れ出たり、あふれ出たりすること」とし、強風雨時にサッシ下枠へ雨水がたまることは製品上の特性であって不具合ではないとする。下枠の水たまりを撮った写真だけでは10年保証の対象にならない。

商品そのものと、取り付けに使った材料の線引きもある。TOTOは「保証対象範囲は対象商品のみで、給排水配管類など、施工や据付の際に使用する部材や部品は、本保証の対象外です」と書く。現場調達の配管とパッキンは、機器の保証書の外側にある。

免責に並ぶ施工の話

両社の免責事項は、原因の側で分類されている。施工に関わるものだけ抜くと次のようになる。

免責の内容 メーカー
当社の手配によらない第三者の加工、組立、施工、管理、メンテナンスなどの不備 YKK AP
LIXIL以外の加工や施工に起因する不具合、顧客の指図による正規仕様ではない特別な仕様にて製作した部分に起因する不具合 LIXIL
当社または当社認定の「施工主任者」によらない加工、組立、調整(APW700) YKK AP
表示性能を超える場所への設置 LIXIL
建築躯体の変形による不具合 LIXIL
引き渡し後の操作誤り、調整不備、適切な維持管理を行わなかったことによる不具合 YKK AP
商品周辺の自然環境や住環境などに起因する結露と腐食 YKK AP
輸送、施工、管理、メンテナンスなどの不備による不具合 TOTO

施工主任者:YKK APがAPW700で指定する、加工と組立と調整を行える認定資格。この資格によらない作業は保証の対象から外れる。オーナー登録票の返信も別に求められている。

躯体の変形が免責に入っている点は、サッシ単体の話で終わらない。木造の建方や下地の精度が原因でサッシが動かなくなった場合、直す相手はサッシメーカーではなくなる。

施工要領書は保険の技術基準にも入っている

施工要領書が効く場面はメーカー保証だけではない。住宅瑕疵担保責任保険の技術基準そのものが、要所で製造者の施工基準を優先すると書いている。

住宅保証機構の「まもりすまい保険 設計施工基準」は、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律19条1号と2号の保険契約を申し込む住宅の設計施工に関する技術的な基準(1条)。2009年7月1日に全保険法人で統一され、2019年12月1日の改定を経て、2025年4月1日に改定された。太陽光パネルと太陽熱温水器等の設置についての条文追加にあわせ、条文全体が見直されている。

木造住宅の防水と外壁仕上げの条文は、数値を置いたうえで、そのほとんどにただし書きを付けている。

条項 基準が定める数値 製造者の施工基準による場合
7条2項2号 下葺き材の重ね 上下(流れ方向)100mm以上、左右200mm以上 ただし書きなし
7条2項3号 谷部と棟部の重ね 谷底または棟頂部より両方向へそれぞれ250mm以上 下葺き材製造者の施工基準によればこの限りでない
7条2項4号 屋根面と壁面の取合い 壁面に沿って250mm以上、かつ雨押え上端より50mm以上立ち上げ ただし書きなし
7条3項 天窓と煙突等の周囲 数値の定めなし 天窓製造者、煙突製造者または屋根葺き材製造者の施工基準に基づいて防水措置
8条1項 バルコニー等の防水下地面 勾配1/50以上 防水材製造者の施工基準によればこの限りでない
8条2項5号 FRP系塗膜防水 ガラスマット補強材2層以上 防水材製造者の施工基準によれば1層以上とできる
8条3項 立上り 開口部の下端で120mm以上、それ以外で250mm以上 ただし書きなし
9条2項3号 防水紙の重ね 上下左右とも90mm以上(窯業系サイディング仕上げと金属サイディング仕上げの左右は150mm以上) サイディング材製造者等の施工基準によればこの限りでない
10条2項2号 通気胴縁の幅 45mm以上、ジョイント部は90mm以上(45mm以上を2枚あわせたものを含む) サイディング材製造者等の施工基準によればこの限りでない
10条2項3号 通気層の厚さ 15mm以上 下地に合板を張る場合など通気に有効な厚さを確保する場合はこの限りでない
10条2項4号 サイディング材の留め付け 450mm内外の間隔、くぎとねじは端部より20mm以上離して穴あけを先行 サイディング材製造者の施工基準によればこの限りでない。くぎとねじは製造者の指定品
10条2項5号 シーリング材とプライマー サイディング材製造者が指定するもの 指定品以外の選択肢なし
10条3項 ALCパネル、押出し成形セメント板(厚さ25mm超) 数値の定めなし 製造者が指定する施工方法に基づいて取り付ける
10条4項 外壁開口部周囲のシーリング JIS A 5758の耐久性による区分8020またはこれと同等以上 外壁製造者の施工基準によればこの限りでない

ただし書きは施工要領書を持ち出せば数値を外せるという意味ではない。要領書に書かれた寸法と手順の全体に従うことが条件で、要領書にない留め方をした瞬間、基準の数値もただし書きも両方から外れる。

バルコニーと陸屋根で選べる防水工法も条文が並べている。金属板(鋼板)葺き、塩化ビニル樹脂系シート防水工法、アスファルト防水工法、改質アスファルトシート防水工法、FRP系塗膜防水工法、FRP系塗膜防水と改質アスファルトシート防水またはウレタン塗膜防水を組み合わせた工法の6つで、歩行を前提とする場合は強度と耐久性を確保する(8条2項)。

外壁の防水紙は品質も指定されている。通気構法の外壁にはJIS A 6111(透湿防水シート)に適合する外壁用透湿防水シートまたは同等以上、それ以外の外壁にはJIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に適合するアスファルトフェルト430または同等以上で、透湿防水シートは除かれる(9条2項1号2号)。乾式仕上げの外壁は通気構法とすることが原則(10条1項)。

基準に載っていない仕様の扱い

設計施工基準は一般的な工法と仕様を想定して書かれているため、それに当てはまらない住宅が残る。3条は「本基準により難い仕様であっても、当法人が本基準と同等の性能が確保されていると認めた場合は、本基準によらないことができる」とし、この手続きが3条確認と呼ばれる。方法は2つある。

種類 誰が手続きするか 提出するもの
個別3条確認 保険申込者または設計者が物件ごとに 保険申込の前に個別3条申出書と、同等の仕様であることが確認できる図面等を住宅保証機構へ。整理番号が記入されて返信され、その写しを保険申込窓口へ
包括3条確認 工法と仕様を扱う建材メーカーや防水材メーカーが メーカーが取得した包括3条確認書の写しを、保険申込者がメーカーから取り寄せて保険申込窓口へ

現場検査で指摘を受けてから個別3条確認をした場合、返信された個別3条申出書の提出先は保険申込窓口ではなく、指摘をした現場検査員になる。着工後に発覚すると、書類の流れも変わる。

ALCパネルの外壁がその例にあたる。設計施工基準9条3項がALCパネル等の外壁の表面に求める仕上げ材は、防水形外装薄塗材E、外装厚塗材E、複層塗材CE系、アクリルゴム系の外壁用塗膜防水材と、これらと同等以上の性能を有するものに限られる。旭化成建材はヘーベルパワーボードについて、外装薄塗材E(通称リシン)と可とう形外装薄塗材E(通称弾性リシン)が現在の基準に含まれていないとして、住宅保証機構、住宅あんしん保証、日本住宅保証検査機構(JIO)、ハウスジーメンの4法人から確認書を取得し、保険申込時に添付する形をとっている。

記録が要る工程

保険法人の現場検査の時期は、住宅瑕疵担保責任保険法人業務規程の認可基準(別紙2)が定めている。階数が3以下の住宅は、基礎配筋工事の完了時と、躯体工事の完了時または下地張りの直前の工事の完了時の2回。階数が4以上は、基礎配筋工事の完了時、最下階から数えて2階および3に7の自然数倍を加えた階の床の躯体工事の完了時、屋根工事の完了時または下地張りの直前の工事の完了時になる。

写真の要件は同じ別紙2の第4にある。検査ごとに施工の状況について写真を撮影するものとし、「検査実施箇所のうち重要な箇所について、撮影部位、その形状又は寸法等を明らかにして、その施工の状況がわかるように撮影しなければならない」。寸法が読めない引きの写真は、この基準を満たさない。

検査の回数は年2回に限られるため、設計施工基準が寸法で定めた箇所の多くは、検査員が来ない工程で隠れる。

設計施工基準が寸法で定める箇所 隠れる工程
下葺き材の重ね100mm、200mm、谷と棟の250mm 屋根葺き材の施工
屋根面と壁面の取合いの立上り250mmと50mm 外壁下地と外装材の施工
バルコニーの防水立上り120mmと250mm 手すり壁の笠木と外装材の施工
笠木を留めるねじが防水層を貫通する部分の止水措置 笠木の設置
防水紙の重ね90mm、150mm 通気胴縁と外装材の施工
外壁開口部周囲の防水テープと防水紙の密着 外装材の施工
通気胴縁の幅45mm、90mm、通気層の厚さ15mm 外装材の施工
サイディングの留め付け間隔450mm内外、端部からの20mm 外装材の施工完了
くぎとねじが製造者の指定品かどうか 外装材の施工完了
シーリング材とプライマーが製造者の指定品かどうか シーリングの充填

保険法人による検査には、一定の品質管理が見込まれる場合に現場検査員以外の者による検査へ代えられる特例がある。ただし履行法19条1号の保険契約では、少なくとも1回以上は現場検査員による検査を行う。現場検査員は建築士または建築基準適合判定資格者検定合格者に限られる。

メーカー保証が切れた後に残るもの

メーカー保証は各社が任意で出すもので、法律上の責任とは別に走っている。住宅新築請負契約の請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について担保の責任を負う(品確法94条1項)。これに反する特約で注文者に不利なものは無効(同条2項)。新築住宅の売買では売主が同じ10年を負う(95条)。20年以内までなら特約で伸ばせる(97条)。

雨水の浸入を防止する部分の範囲は政令が決めている。住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸とわくその他の建具、そして雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分(品確法施行令5条2項)。サッシは開口部の建具として、この10年の中にある。

責任の種類 期間 誰が誰に
メーカー保証(サッシ本体) 引き渡し日から2年 メーカーが元請または施主に
メーカー保証(製品からの雨水浸入) 10年 同上
品確法94条の担保責任 引き渡した時から10年 請負人が注文者に
品確法95条の担保責任 引き渡した時から10年 新築住宅の売主が買主に
品確法97条の伸長特約 引き渡した時から20年以内 同上
住宅瑕疵担保責任保険 引渡しを受けた時から10年以上、保険金額2000万円以上 保険法人が建設業者または発注者に

期間とは別に、通知の期限も置かれている。請負では、注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しないと、追完請求も報酬の減額請求も損害賠償請求も契約解除もできない(民法637条1項)。引渡しの時に請負人が不適合を知っていた場合と、重大な過失によって知らなかった場合は、この1年は適用されない(同条2項)。品確法94条1項の瑕疵についても、この読み替えの上で637条が働く(同条3項)。

責任が請負人へ跳ね返る条文もある。注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合については、注文者は追完請求も損害賠償請求もできない(民法636条)。施主支給の建材と、施主の指定した納まりは、この規定の対象になる。ただし請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは適用されない。

保証書の年数が切れても、サッシからの雨漏りは請負人の10年の中に残る。要領書どおりに付いていたかどうかを後から示せるのは、外装材を張る前に撮った寸法の分かる写真だけになる。