住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する住まいるダイヤルの電話相談事例には、売主である不動産業者が中古住戸をリフォームして売る買取再販(既存の中古住戸を業者が買い取り、リフォームしてから再販売する取引)で、引き渡し後に不具合が出た相談がいくつも登録された。共通するのは、業者が交換せずに残した既存部分から不具合が出ている点と、その部分がマンションの共用部分にあたるために責任の所在が単純に決まらない点だった。7月に登録した相談では、点検や補助金を口実にした訪問販売の勧誘が7件と最も多かったが、施工と部材に近い型としては、この買取再販の既存部トラブルが目立った。買取再販の物件には既存住宅売買瑕疵保険(引き渡し後に見つかった隠れた不具合の補修費用を保険法人が担保する制度)が付くことが多いが、対象になるかは不具合が専有部分か共用部分かで変わる。部位別に3件を読む。

開口部:台風時にサッシの下枠から雨水が入る

築30年の鉄筋コンクリート造15階建て分譲マンションで、買取再販の住戸を引き渡し後、2024年8月下旬の台風でバルコニーの掃き出し窓の下枠から室内へ雨水が浸入した事例がある。上階の住戸でも同じ事象が起きていた。リフォームで既存サッシは交換されておらず、通常の雨では雨漏りは起きていなかった。

回答では、まず窓のサッシがどちらの部分にあたるかが起点になると整理されている。国土交通省の標準管理規約では窓のサッシは共用部分(区分所有者が共有し、管理組合が管理する部分)にあたり、この場合、共用部分の不具合を住戸の売買契約の契約不適合(引き渡された物が契約の内容に適合しないこと)に含められるかは裁判例で見解が分かれる。サッシの下枠は気密ピース(引き違い窓でガラス戸と枠の隙間を埋める部品)などで浸水を防ぎ、下枠レールの溝にたまった雨水を外へ排出する仕組みになっている。台風の強風では吹き上げで下枠に雨水がたまることがあり、通常でない気象では免責になる可能性もあるが、いずれにせよ売主に原因調査を依頼してよいとされた。換気扇使用時にサッシから聞こえる隙間音は、給気口からの吸気が足りず室内の気圧が下がってサッシの隙間から空気が入るために起きることがあり、排気と給気のバランスを含めた調査対象になる。

内装(床):直貼りフローリングの下で床スラブが傾く

築40年の鉄筋コンクリート造12階建てマンションで、フルリノベーション済みの買取再販住戸を2024年5月に購入した事例では、入居前に物入れの建具を付けるための現地調査で床の傾斜が指摘された。歩くと弾力のある直貼りの遮音フローリングで、レベルを測ると基準点から2.2cm下がっている箇所があった。

回答では、原因は床スラブ(各階を仕切る鉄筋コンクリートの床版)にあるとみられると整理されている。既存の床材を張り替える際、下地の鉄筋コンクリート床に不陸(面が平らでないこと)や傾斜があれば、流動性の高いセルフレベリング材で平滑に均す補修を行うこともある。床スラブも標準管理規約では共用部分にあたり、その修繕は原則として管理組合の総会で決める。傾斜が不具合として認められる程度かは、住宅品質確保促進法にもとづく「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」に測定方法があり、3メートル程度以上離れた2点間の角度で判断する。基準を超えるなら、管理組合にレベル測定の結果を示して修繕を求める道になる。表層のフローリングだけを張り替え、下地のスラブの不陸を確認しなかったことが、この傾斜が引き渡し後に残った原因だった。

水まわり・設備:契約書と違う浴室設備、止まる原因調査

1982年築の鉄筋コンクリート造5階建てマンションで、リノベーション済みの買取再販住戸を取得した事例では、複数の不具合が同時に出た。契約書に追い焚き機能付きと書かれた浴槽に追い焚き機能がなく、キッチンで水漏れと異臭が続き、床はふわふわして冷蔵庫が傾いた。売主は対応するとしたまま、工事の時期や仮住まいの扱いが曖昧なまま進まなかった。

回答では、不具合の箇所ごとに切り分けて対応する形が示された。追い焚き機能は、付加工事の内容と日数、仮住まい費用を書面で示してもらう。キッチンの水漏れと異臭は、給水管や水栓、排水トラップ・排水管の不具合が考えられるため、原因調査と補修計画書の提出を求める。床のふわふわ感と冷蔵庫の傾きは、床下地の構造とフローリングの仕様を確認して調査を依頼する。専有部分の工事でも共用部分に関わる場合や管理組合への届出が要る場合があり、管理規約の確認も対象になる。売主の対応が進まないときは、回答期限を区切って配達証明付きの書留や内容証明で求め、既存住宅売買瑕疵保険の専門家相談を使う方法が挙げられた。契約書の設備仕様と現物が食い違っていた点は、引き渡し前の照合で気づける類の不一致だった。

発注・施工段階で防げた分岐点

3件に共通するのは、売主が住戸の内側だけをリフォームし、サッシや床スラブ、設備といった既存部分を残したまま引き渡した結果、その既存部分から不具合が出たという構図だった。リフォームを請ける工務店や施工者にとっては、既存部を残す判断そのものより、残す既存部の状態を引き渡し前に確認して記録に残せたかが分かれ目になる。

サッシを交換せず使うなら、下枠の排水経路と気密ピースの状態、強風時の吹き上げに対する止水を、散水などで引き渡し前に確かめる余地があった。床材を張り替えるなら、下地スラブのレベルを測り、不陸があればセルフレベリング材で均す工程を挟めた。設備は、契約書の仕様と現物を照合しておけば、追い焚き機能の欠落は引き渡し前に判明した。マンションではサッシと床スラブが標準管理規約で共用部分にあたり、住戸単位のリフォームで手を入れても、共用部分起因の不具合は管理組合や裁判例の見解が分かれる領域に入って責任の所在が複雑になる。だからこそ、どの既存部を誰がどう確認したかの記録が、引き渡し後に返ってくる相談の分岐点になっていた。

確認先: 既存住宅売買瑕疵保険の制度(国土交通省 住宅瑕疵担保制度ポータルサイト