改修で撤去した材料の廃棄物区分が決まらないと、委託先の許可の範囲とマニフェストの記載が決まらない。PCB廃棄物に当たれば処理責任は元請に移らず建物所有者に残り、水銀使用製品産業廃棄物なら元請が排出事業者として交付側に立つ。どちらに転ぶかは建材の年代で大半が絞れる。
高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物:PCB原液が廃棄物となったもの、PCBを含む油が廃棄物となったもののうちPCBの割合が政令の基準を超えるもの、PCBが塗布され、染み込み、付着し、または封入された物が廃棄物となったもののうちPCBを含む部分の割合が政令の基準を超えるもの(PCB特別措置法2条2項)。これに当たらないPCB廃棄物が低濃度側に入る。
年代で絞れる建材
PCBを含む建材は製造年で切れる。1973年の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の制定を受けて、1974年以降は製造と輸入が原則禁止になったため、それ以降の建材には入っていない。
| 対象 | PCBを含む年代 | 絞り方 |
|---|---|---|
| 建築用ポリサルファイド系シーリング材 | 1972年1月の使用自粛通達までに製造されたもの | 着工年が1973年以降なら対象外。1972年以前なら材種の判定へ |
| 塩化ゴム系塗料の塗膜 | 1966年から1972年1月までに製造された塗料 | 1966年から1974年までに建設または塗り替えが行われた屋外の鋼製構造物に限る |
| 照明器具用安定器などの電気機器 | PCB自体の製造中止は1972年。廃屋の解体工事等で高濃度のものが発見される段階に入っている | 銘板の製造年月とメーカー名から判別 |
シーリング材の系統はポリサルファイド系に限られる。シリコーン系、変成シリコーン系、ポリウレタン系にPCBは使われていない。建築用ポリサルファイド系シーリング材は1940年代に米国で開発され、1958年に米国からの輸入が始まり、1963年から国産化された。当時は柔軟性を与える可塑剤としてPCBが配合されていたが、1972年1月の使用自粛通達に従って使用を中止したため、1973年以降に製造されたシーリング材にPCBは含まれていない。したがって1973年以降に着工した建物は、この時点で判定が終わる。
塗膜の側は建築物そのものを対象にしていない。PCBを可塑剤に使った塗料は全て塩化ゴム系で、関西ペイントのラバマリンプライマとラバマリン中塗とラバマリン上塗、中国塗料のラバックスシリーズ、日本ペイントのハイラバーE、東亜ペイント(現トウペ)のSRハイコートとSRマリンAが該当する。PCB含有率は1パーセント(1万mg/kg)から10パーセント(10万mg/kg)程度。環境省の調査対象は1966年から1974年の期間に建設または塗装の塗り替えが行われた鋼製構造物のうち屋外に設置されているものに限られ、屋内と地下に設置されたものは除かれている。橋梁、洞門、排水機場とダムと水門、石油貯蔵タンクとガス貯蔵タンク、船舶が対象で、鉄塔や水道橋は任意の調査対象として挙がる。敷地内にこうした鋼構造物がある改修では確認の対象に入るが、建物の外壁塗装は入らない。
シーリング材の判定フロー
日本シーリング材工業会は判定を二段階に分けている。第一次判定が材種の判定で、第二次判定がPCBの分析だ。
| 段階 | やること | 担い手と所要 |
|---|---|---|
| 着工年の確認 | 1972年以前に着工した建物かを確認する | 設計図書と竣工年の記録 |
| 第一次判定 | マニュアルに従ってサンプルを採取し、ポリサルファイド系かどうかを判定する | 工業会が有料で実施。判定依頼書を添えて送付し、結果は1〜2週間後 |
| 第二次判定 | 第一次判定でPCB分析が要と出た場合に、専門の分析機関でPCBを分析する | 分析機関 |
| 判定 | 分析結果からPCB含有シーリング材かを判定する | 目安はPCB含有率0.1重量パーセント(工業会の自主基準。ドイツの一次汚染源の管理基準に準拠) |
工業会の自主基準0.1重量パーセントは1,000mg/kgに当たる。法令上の区分はこの線とは別に決まるため、分析値はmg/kgで押さえておく必要がある。
使用中のままなら撤去の義務は付かない。工業会は判定フローの最初に改修と解体の予定の有無を置き、予定が無い場合は、これまでに報告された測定結果がダイオキシン類の環境濃度とドイツ基準のPCB室内濃度をいずれも大きく下回るとして、放置しても健康に影響はないと判断している。廃棄物としての規制がかかるのは撤去した時点からだ。
PCB汚染物に該当しない側の線は、PCBを含む油が自由液として明らかに存在していない場合に限り、PCB含有濃度0.5mg/kg以下とされている(環循規発第1910112号)。自由液:PCBを含む油が染み込みまたは付着した廃棄物から染み出しまたは脱離して、液体状態として確認できるもの。
撤去した材料の濃度区分
高濃度か低濃度かの線は、廃棄物の種類で分かれる。同じ分析値でも、どの種類に当たるかで区分が変わる。
| 廃棄物の種類 | 高濃度になる値 | 母数 |
|---|---|---|
| 汚泥、紙くず、木くず、繊維くずその他PCBが塗布され、または染み込んだ物 | 10万mg/kg | 当該廃棄物のうちPCBを含む部分1kg |
| 廃プラスチック類のうち、PCBが付着し、または封入されたもの | 10万mg/kg | 当該廃プラスチック類1kg |
| 金属くず、ガラスくず、陶磁器くず、工作物の新築と改築と除去に伴って生じたコンクリートの破片その他PCBが付着し、または封入された物 | 5,000mg/kg | 当該廃棄物に付着し、または封入された物1kg |
PCB特措法施行規則4条の表がこの3区分を置く。目地から掻き取ったシーリング材そのものと、下地のコンクリートに付着したまま取れた分では、同じ現場から出ても区分が変わり得る。母数の取り方も違う。塗布と染み込み系はPCBを含む部分1kgが母数になり、付着と封入系は付着または封入された物1kgが母数になる。
低濃度の処分期間と委託先
低濃度側の処分期間は2027年3月31日で切れる。PCB特措法14条が高濃度を除くPCB廃棄物について政令で定める期間内の処分を保管事業者に義務づけ、施行令7条がその期間を法の施行の日から令和9年3月31日までと定めている。
委託先は環境大臣の無害化処理認定施設か、都道府県と政令市の許可施設になる。環境省が公表する認定施設の一覧は令和8年6月1日現在で30施設で、微量PCB廃電気機器等と低濃度PCB含有廃棄物を対象区分としている。一覧には5,000mg/kg超10万mg/kg以下のPCB汚染物(金属くず等を除く)を処理できる施設に印が付く。分析値が5,000mg/kgを超えたPCB汚染物(金属くず等を除く)は、受け入れ先がこの印の付いた施設に絞られる。
高濃度が出たときの保管と新しい処理ルート
高濃度が出た場合、JESCOへ送る道はすでに閉じている。保管事業者からJESCOへの高濃度PCB廃棄物の登録は2025年10月15日で終了し、処理事業自体も2026年3月末で終わった。
代わりの制度が2026年8月20日に動いた。同日公布・施行の告示改正で、廃棄物処理法9条の10と15条の4の4の無害化処理認定制度の対象に高濃度PCB廃棄物が追加された。処理の内容の基準は、廃棄物の種類に応じて次の数値を超えないようPCBを分別・除去した上で焼却することとされている。
| 廃棄物の種類 | 分別・除去後に超えてはならない値 |
|---|---|
| 廃PCB及びPCBを含む廃油 | PCBの重量の割合が0.5パーセント |
| 汚泥、紙くず、木くず、繊維くずその他PCBが塗布され、または染み込んだ物 | PCBを含む部分1kgにつき10万mg |
| 廃プラスチック類のうち、PCBが付着し、または封入されたもの | 当該廃プラスチック類1kgにつき10万mg |
| 金属くず、ガラスくず、陶磁器くず、工作物の新築と改築と除去に伴って生じたコンクリートの破片その他PCBが付着し、または封入された物 | 付着し、または封入された物1kgにつき5,000mg |
処理を行う者には、この基準への適合を確認する試験を6か月に1回以上行い結果を記録できることが求められる。保管施設を持つ場合は、高濃度と低濃度を同時に保管するときに低濃度へ高濃度が混入しないよう措置を講じることも基準に入った。認定の有無は無害化処理認定施設の一覧で確認する。
認定された受け入れ先が決まるまでは保管が続く。登録期限以降に新たに発覚した高濃度PCB廃棄物は、廃棄物処理法12条の2第2項の特別管理産業廃棄物保管基準に従って保管する。環境省の通知は、保管場所にPCB廃棄物であることを表示した掲示板の設置を徹底することと、安定器等及び汚染物は金属製のドラム缶またはペール缶に格納して保管することを指導事項に挙げている。新たに発覚したものは調査票で管轄の地方環境事務所資源循環課へ提出する扱いになる。
届出と譲渡しの制限
保管すれば届出が付く。PCB特措法8条1項は保管及び処分の状況の届出を毎年度の義務とし、施行規則9条と20条が期限を当該年度の6月30日までと定め、様式第一号の届出書の正本と副本を保管場所を管轄する都道府県知事へ提出させる。記載するのは保管の場所、氏名または名称と住所、事業場の名称と所在地、PCB廃棄物の種類と量と保管及び処分の状況。前年度に処分した分については産業廃棄物管理票の写しをA3判以下に複写して添える。この届出は高濃度も低濃度も同じ6月30日で、低濃度側は法15条が8条1項を準用する形で義務が及ぶ。
| 義務 | 高濃度PCB廃棄物 | 低濃度PCB廃棄物 |
|---|---|---|
| 保管及び処分の状況の届出 | 毎年度6月30日まで(規則9条) | 毎年度6月30日まで(法15条、規則20条) |
| 処分 | JESCOへの登録は2025年10月15日、処理事業は2026年3月末で終了。新たな処理体制へ移行 | 処分期間は2027年3月31日まで(法14条、令7条) |
| 届け出た保管場所の変更 | 原則禁止(法8条2項) | 制限の規定なし |
保管場所の変更の制限は高濃度だけにかかる。法8条2項は届出に係る保管の場所の変更を禁じ、規則10条の特例に当たる場合だけ例外を認める。違反には6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が付く(法34条2号)。届出をせず、または虚偽の届出をした場合も同じ罰則だ(法34条1号)。
引き渡しの制限はさらに重い。法17条は環境省令で定める場合のほか、PCB廃棄物の譲渡しと譲受けを何人にも禁じている。違反は3年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または併科(法33条2号)。認められるのは地方公共団体への譲渡しと譲受け、保管事業者が特別管理産業廃棄物収集運搬業者や処分業者や無害化処理認定業者へ処理を委託する場合、処理技術の試験研究や処理施設の試運転を目的とする場合などに限られる(規則26条)。解体業者や元請が建物所有者から引き取って自社で保管する形は、この特例に乗らない。
処理責任が元請に移らない理由
建設工事で出る廃棄物は、数次の請負で行われる場合に元請業者が事業者になる(廃棄物処理法21条の3第1項)。PCB廃棄物はこの規定の外にある。
環境省の通知は、PCB含有塗膜について21条の3第1項の規定は適用されないと解されるとし、理由を2点挙げる。PCB特措法1条2項により同法が特別法、廃棄物処理法が一般法の関係にあり、同法に規定している事柄はまず同法の規定が優先的に適用されること。もう1点は、PCB特措法が排出事業者に一定期間内の適正処理の義務を課していることに照らして、除去工事の元請業者にその義務を課すことは同法の趣旨に反することだ。PCB使用製品を有する施設を保有し管理する者が廃棄等を行い、PCB廃棄物となったものを自らの責任において処理する建て付けになる。
シーリング材の側も同じ置き方で、撤去したPCB含有シーリング材は建物所有者が保管し、都道府県知事等への届出を行う。撤去と運搬と処分を請けても、保管事業者としての届出義務は建物所有者に残る。
改修で出る照明は水銀使用製品産業廃棄物
水銀側は区分の付け方が違う。改修で外す照明のランプは、水銀等の使用に関する表示があるかどうかにかかわらず水銀使用製品産業廃棄物に当たる。蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプと外部電極蛍光ランプを含む)とHIDランプの2区分が、表示の有無によらず対象となる製品の表に載っている。直管形と環形と角形とコンパクト形と電球形と無電極の蛍光ランプ、高圧水銀ランプとメタルハライドランプと高圧ナトリウムランプが入る。
蛍光ランプとHIDランプは水銀回収義務の対象ではない。水銀回収が義務づけられるのはガラス製温度計や水銀式血圧計など別の製品群で、照明用のランプには印が付いていない。
| 工程 | 加わること | 根拠 |
|---|---|---|
| 現場での保管 | 保管場所の掲示板に、保管する産業廃棄物の種類として水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨を記載。他の物と混合するおそれのないよう仕切りを設ける等の措置 | 法12条2項、規則8条1号イとロ |
| 委託契約 | 委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な情報として、水銀使用製品産業廃棄物である旨を契約書に記載。情報の提供は廃棄物データシート(WDS)を使って行う | 規則8条の4の2 |
| マニフェスト | 産業廃棄物の種類の欄に水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨と、その数量を記載 | 規則8条の20、規則8条の21 |
| 委託先の選定 | 水銀使用製品産業廃棄物の収集運搬または処分を事業の範囲に含む許可業者。安定型最終処分場に処分されないことを含めて処理の行程を確認 | 法12条5項から7項、法12条の3第1項 |
掲示板には、ガラスくずや金属くずや汚泥といった性状に応じた産業廃棄物の種類を記載した上で、水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨を示す。
取り外し方にも扱いが付く。組み込まれた製品を廃棄するときに取り外そうとして破損させると水銀が飛散するおそれがあるため、容易に取り外せない製品は取り外さずに排出する。破損しやすい照明機器と計測機器は、破損と水銀の流出を防げる容器に入れて保管し、破損した場合は密閉できる容器等に入れる。中間処理施設への輸送時に品目と破損状態ごとの分別が要る場合があるため、保管の段階でそろえておく形になる。
元請が排出事業者になるかどうかは、PCB側と逆だ。水銀使用製品産業廃棄物には廃棄物処理法21条の3第1項が普通に働くので、数次の請負で行う改修では元請が事業者としてマニフェストを交付する。同じ現場から出た廃材でも、PCB廃棄物は建物所有者、水銀使用製品産業廃棄物は元請という並びになる。
蛍光ランプの製造禁止の時期
ランプ側の供給には期限が入っている。水銀汚染防止法施行令の2024年12月の改正で、一般照明用の蛍光ランプが全て特定水銀使用製品に指定された。
| ランプの種類 | 製造・輸出入の禁止開始 | 備考 |
|---|---|---|
| 電球形蛍光ランプ | 2026年1月1日 | 30Wを超えるものは2027年1月1日 |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027年1月1日 | |
| 直管形蛍光ランプ | 2028年1月1日 | ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは2027年1月1日 |
| 環形蛍光ランプ | 2028年1月1日 | ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは2027年1月1日 |
禁止されるのは製造と、他の製品の部品としての使用、それに外国為替及び外国貿易法に基づく輸出入だ。蛍光ランプの使用と販売と購入は禁止されない。一般照明用の高圧水銀ランプは2020年末日から製造と輸出入が禁止されている。既設の水銀灯の更新で、同じランプを新規に調達する道は閉じている。



