改修工事で石綿の調査費用を誰が持つかと、自治体への届出を誰が出すかは、大気汚染防止法が決めている。どちらも発注者にかかる。調査費用は発注者の協力義務(18条の15第2項)、吹付け石綿などの除去に伴う実施の届出は発注者または自主施工者の義務(18条の17第1項)。届出をせず、または虚偽の届出をしたときの罰則は、元請ではなく届出義務者に及ぶ。

特定建築材料:吹付け石綿その他の石綿を含有する建築材料(大気汚染防止法2条11項、同法施行令3条の3)。2021年4月1日施行の改正で成形板と仕上塗材まで広がり、石綿を重量の0.1%超で含む建材が全て入る。

事前調査の対象になる工事と調べ方

建築物その他の工作物を解体し、改造し、または補修する作業を伴う建設工事は、規模を問わず事前調査の対象になる(法18条の15第1項)。方法は設計図書その他の書面による調査と、特定建築材料の有無の目視による調査の両方(規則16条の5第1号)。

例外は着工日で切れる。2006年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等に該当することが書面で明らかで、かつそれ以外の建築物等を解体、改造、補修する作業を伴わない工事なら、書面調査だけでよい。既存棟が古く、増築部分だけが2006年9月1日以後という現場では、増築部分だけを触る工事でないかぎり例外に乗らない。

書面と目視で特定工事に該当するか明らかにならなかった材料は、分析による調査を行う(規則16条の5第3号)。ただし特定工事に該当するものとみなして法令上の措置を講じるなら、分析は要らない。みなした場合、その建材は特定建築材料として作業計画と作業基準、掲示の対象に入る。

調査を行う者は資格で縛られる。建築物は2023年10月1日以後に着工する工事から、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者のいずれか、または2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者が行う。一戸建て等調査者が扱えるのは一戸建て住宅と共同住宅の住戸内部に限られる。

対象になる建材

環境省の解説資料は、石綿含有建材を吹付け材と、断熱材や保温材や耐火被覆材と、成形板等と、仕上塗材の4区分で示している。届出が要るのは前の2区分だけ。後ろの2区分について、同資料は一般的な住宅にも使用されていることがあると書いている。

区分 代表的な建材 主な使用部位 除去等の届出
吹付け材 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール、石綿含有吹付けバーミキュライト S造の柱と梁、RC造の天井や壁 作業開始の14日前までに必要
断熱材・保温材・耐火被覆材 煙突用石綿断熱材、屋根用折板石綿断熱材、配管保温材、ボイラー保温材、鉄骨耐火被覆材 煙突、ダクト、配管のエルボ部、鉄骨 作業開始の14日前までに必要
成形板等 石綿含有スレート波板、石綿含有窯業系サイディング、石綿含有けい酸カルシウム板第1種、石綿含有スレートボード、石綿含有化粧せっこうボード、石綿含有ロックウール吸音板、石綿含有ビニル床タイル 屋根、外壁、軒天、天井、床、間仕切 不要。作業計画と作業基準、掲示は必要
仕上塗材 石綿含有仕上塗材(リシンやスタッコの吹付け施工、ローラー施工) 内壁と外壁の仕上 不要。作業計画と作業基準、掲示は必要

基材だけを見ても足りない。環境省の資料は、化粧せっこうボードでは化粧紙や接着剤に石綿が添加されていたことがあり、ロックウール吸音板でも基材以外に接着剤へ添加された例があると注記している。

築年数から当たりを付けるなら、規制の入った順が目安になる。

時期 規制の内容
1975年 石綿を5%超で含有する吹付け作業を原則禁止
1980年 石綿含有吹付けロックウールの使用終了
1995年4月 石綿を1%超で含有する吹付け作業を原則禁止
2004年10月 石綿を1%超で含有する主な建材、摩擦材、接着剤の新たな製造等を禁止
2005年7月 石綿を1%超で含有する吹付け作業を全面禁止
2006年9月 石綿を0.1%超で含有する全ての物の製造、輸入、譲渡、提供、新たな使用を禁止
2012年4月 猶予されていた製品を含め全面禁止

現物の商品名から含有を照合する先が、国土交通省と経済産業省の石綿(アスベスト)含有建材データベース。石綿含有率が0.1%超であることが判明している建材を、商品名やメーカー名から引ける。含有率の基準は2006年9月の法改正で1%超から0.1%超に下がった。メーカーによっては当時の記録が残っておらず、推定される期間より長めの製造期間を安全側で申告している場合がある。

説明と報告と掲示の宛先

石綿の手続は根拠法が2本ある。労働基準監督署への報告は石綿障害予防規則、都道府県への報告と届出は大気汚染防止法で、宛先も期限も別に立つ。片方を出しても、もう片方は残る。

手続 誰が誰に 時期 根拠
事前調査結果の書面説明 元請業者から発注者へ 工事開始の日まで。届出対象特定工事で作業を工事開始の日から14日以内に始める場合は作業開始の14日前まで 法18条の15第1項、規則16条の6
事前調査結果の報告 元請業者または自主施工者から都道府県知事へ 遅滞なく 法18条の15第6項、規則16条の11
事前調査結果の報告 元請事業者から所轄労働基準監督署長へ あらかじめ 石綿則4条の2第1項
特定粉じん排出等作業の実施の届出 発注者または自主施工者から都道府県知事へ 作業開始の14日前まで 法18条の17第1項
事前調査結果と作業内容の掲示 元請業者または自主施工者 作業開始前 法18条の15第5項、規則16条の10
作業完了の書面報告 元請業者から発注者へ 遅滞なく 法18条の23第1項

自治体と労働基準監督署への報告は、石綿の有無を問わず一定規模以上の工事で必要になる。建築物と工作物の線の引き方は両法で共通する。

工事 報告が必要になる規模
建築物の解体 作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上
建築物の改造または補修 作業の請負代金の合計額が100万円以上
工作物(環境大臣が定めるもの)の解体、改造、補修 作業の請負代金の合計額が100万円以上

請負代金は消費税を含み、事前調査の費用は含まない。同一の者が2以上の契約に分割して請け負う場合は、一の契約で請け負ったものとみなす(規則16条の11第3項)。報告は電子情報処理組織を使う方法で行い、使用が困難な場合だけ様式第三の四の報告書で代えられる(同条4項)。労働基準監督署への報告と同じシステムから送れる。

掲示板は事前調査結果と作業内容のいずれもA3判(42.0cm×29.7cm)以上で、公衆の見やすい場所に置く。石綿則の掲示と兼ねることもでき、その場合は作業者の見やすい場所に設置し、ばく露防止対策の実施内容も書き加える。事前調査の記録と説明書面の写しは、工事が終了した日から3年間保存する(規則16条の8)。

発注者に直接かかる義務

工務店が施主に代わって手続を回すとしても、法律上の名宛人は発注者のままになる条文が3つある。

調査費用は発注者が持つ。元請業者が行う事前調査に要する費用を適正に負担することその他必要な措置を講じて、調査に協力しなければならない(法18条の15第2項)。

届出は発注者が出す。吹付け石綿と石綿含有の断熱材、保温材、耐火被覆材の除去、封じ込め、囲い込みを行う工事は、作業開始の日の14日前までに、発注者または自主施工者が都道府県知事へ届け出る(法18条の17第1項、施行令10条の2)。作業に入れるのは、最短でも届出日の14日後になる。

契約条件にも縛りがかかる。特定工事の発注者は、元請業者に対し、施工方法、工期、工事費その他請負契約に関する事項について、作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない(法18条の16第1項)。同じ規定は元請から下請へ、下請から再下請へ発注する場面にも準用される(同条2項)。石綿障害予防規則9条にも、事前調査等とその結果を踏まえた作業の方法、費用、工期について同趣旨の配慮義務がある。

罰則は工事の当事者に直接かかる。

違反 罰則 根拠
特定粉じん排出等作業の実施の届出をせず、または虚偽の届出をした 3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 法34条1号
隔離等の措置をとらずに吹付け石綿等の除去等を行った 3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 法34条3号
都道府県知事への事前調査結果の報告をせず、または虚偽の報告をした 30万円以下の罰金 法35条4号
作業基準適合命令または計画変更命令に違反した 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 法33条の2第1項2号

法人の従業者が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか法人にも各本条の罰金刑が科される(法36条)。

発注前に施主と決めること

工作物の事前調査と資格

工作物の事前調査は、2026年1月1日以後に着工する工事から、工作物石綿事前調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、または2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者が行う。対象は反応槽から観光用エレベーターの昇降路の囲いまでの特定工作物17種類と、それ以外の工作物に分かれる。それ以外の工作物では、塗料その他の石綿が使用されているおそれのある材料の除去の作業を伴う工事が資格者調査の対象になる(規則16条の5第2号)。

確認先: 石綿事前調査結果報告システム石綿(アスベスト)含有建材データベース