公共工事の入札で出す工事費内訳書に、材料費と労務費の欄が増えた。根拠は入契法12条で、建設業者は公共工事の入札に係る申込みの際に、入札金額の内訳を記載した書類を提出しなければならない。2024年6月14日公布の建設業法等の一部を改正する法律(令和6年法律第49号)で、その内訳に材料費、労務費、国土交通省令で定める経費が入った。直轄工事は2025年12月12日以降に入札手続を開始する工事から適用になった。起点は公告日か指名通知日で、12月12日時点で公告済みの工事は対象外。記載漏れを無効として扱うのは2026年4月1日以降に公告する案件からで、3月31日までに入札手続を開始した工事は暫定的に無効としない扱いだった。

受け取る側には13条がかかる。発注者は、施工が成り立たない金額での契約を防ぎ、不正行為を排除するため、提出された書類の内容の確認その他必要な措置を講じる義務を負う。通知は、見積能力のない者や見積りをせずに入札に参加する者を排除するため、全ての入札参加者に提出を求めること自体に大きな意義があるとし、確認は各発注者の体制に応じて行うものとした。

内訳書に書く5項目と置き場所

国土交通省令で定める経費は、入契法施行規則(令和6年国土交通省令第105号)1条が3つ挙げる。法定福利費、安全衛生経費、建設業退職金共済契約に係る掛金の3つで、材料費と労務費を合わせて5項目になる。

定義は条文側にある。法定福利費:建設工事に従事する者の健康保険料等の事業主負担額。現場労働者の労災保険料、雇用保険料、健康保険料(介護保険料を含む)、厚生年金保険料(子ども・子育て拠出金を含む)の法定の事業主負担額を指す。安全衛生経費:建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成28年法律第111号)10条に規定する経費。建退共掛金:中小企業退職金共済法(昭和34年法律第160号)2条5項の特定業種退職金共済契約のうち建設業に係るものの掛金。

積算上どの費目に入るかが違うので、5項目は内訳書の別々の場所に載る。

項目 土木工事 建築工事(営繕)
材料費 直接工事費の内数 直接工事費の内数
労務費 直接工事費の内数 直接工事費の内数
法定福利費の事業主負担額 現場管理費の内数 工事原価の内数
建退共掛金 現場管理費の内数 現場管理費の内数
安全衛生経費 工事原価の内数 工事原価の内数

建築で法定福利費だけ扱いが分かれるのは、公共建築工事では現場労働者の法定福利費が一般的に直接工事費に含まれ、現場管理費の内数として書けないためだ。土木工事の積算では現場管理費に含まれる。簡易な内訳書の例でも、建築用は「工事原価のうち法定福利費の事業主負担額」「工事原価のうち安全衛生経費」と読み替えるよう注記されている。

安全衛生経費が工事原価の内数になるのは、関連する積算上の費目が直接工事費、共通仮設費、現場管理費にまたがり、詳細な内訳の作成が困難と見込まれるためだ。材料費と労務費を細別ごとではなく直接工事費の内数で求めるのも、見積作成の負担を軽くする狙いによる。

どこまで積み上げるか

材料費と労務費は、全額を拾う必要がない。ガイドラインが必須項目と任意項目を分けている。

項目 必須 任意 不要
材料費 主要な材料費 雑材料、建設機械の燃料費、仮設材の賃貸料金 該当なし
労務費 積上げ積算方式の工種、施工パッケージ型積算方式の工種 市場単価方式の工種、土木工事標準単価方式の工種、建設機械の運転労務 現場技術職員等の給与と手当、資材搬入の運転労務

労務費の中身は公共工事設計労務単価の考え方に準拠する。入るのは基本給相当額(基本給、出来高給)、各職種の通常の作業条件と作業内容の労働に対する手当(家族手当、通勤手当、地域手当、住宅手当、現場手当、技能手当、精勤手当など)、臨時の給与(賞与、臨時の賃金、退職金)、実物給与(通勤用定期、食事の支給)の4つ。公共工事設計労務単価に下請の経費は含まれないので、労務費にも入らない。

雑材料が任意なのは、算出が煩雑なうえ、積算上は率計上で発注者でも把握が困難だからだ。建設機械の燃料費も算出の煩雑さを理由に任意に落ちている。労務費については、当面の間、積上げ積算方式(歩掛による積算)や施工パッケージ型積算方式のように積上げできる方式で積算した分を計上すればよく、市場単価方式や標準単価方式(その他の物価本掲載の価格を含む)で積算した労務費は計上しなくてよい。

建退共掛金は、掛金納付の対象となる労働者がいるかどうかで書き方が分かれる。

記載内容 当てはまる場合
必要金額 下請予定事業者が建退共の加入事業者である。または入札参加者が加入事業者で、その工事現場に従事する労働者がいる
「-」 入札参加者と全ての下請予定業者が加入事業者でない。または入札参加者が加入事業者でも、その工事現場に従事する労働者がいない

交通誘導員や仮囲いのように共通仮設費を積み上げ計上した分については、含まれる労務費等の内訳を求めることが望ましいとされ、額が軽微であれば求めるものではないとされている。求める場合の記載は、直接工事費分と共通仮設費分の材料費と労務費を分ける扱いになる。

安全衛生経費に入る費用

安全衛生経費は5項目のうち最も範囲が広い。土木工事の場合の考え方は、積算上の費目をまたいで次の形で整理されている。

積算上の費目 主な内容 細目の例
直接工事費(費用区分は工事目的物の施工に直接必要な安全設備で、指定仮設及び参考図等に示されているもの) 足場、支保工、土留め、土留め支保工、作業構台、交通規制、仮囲い 枠組足場、単管足場、吊足場、手摺、開口部養生、幅木、落下防護ネット、小幅ネット、安全ブロック、親綱、型枠支保工、橋梁架設等支保工、仮締め切り、切梁、腹起、乗入構台、荷受構台、作業構台、ローリングタワー、可搬式作業台、高所作業車、重機移動用敷き鉄板、交通誘導警備員、仮囲い、防音シート、防音パネル、足場出入り口のゲート
共通仮設費の準備費 調査費用 埋設物調査試掘
共通仮設費の安全費 交通管理に要する費用 規制車、クッションドラム、カラーコーン、バリケード、工事中表示板、回転灯、規制表示看板、お願い看板
共通仮設費の安全費 監視連絡等に要する費用 列車見張員等の有資格者、誘導員、監視員、作業指揮者、連絡員の配置、構内電話、無線機、作業主任者の配置、安全衛生責任者の配置
共通仮設費の安全費 安全意識と注意喚起に要する費用 各種注意看板標識、安全掲示板
共通仮設費の安全費 保護具類 ヘルメット、保護めがね、防じんマスク、耳栓、安全帯、防振手袋、軍手、皮手、ゴム手、安全靴、防護服、救命胴衣
共通仮設費の安全費 作業環境 換気設備、空気清浄設備、ガス抜き等の措置、各種環境測定器、排気管、圧力計、照明器具
共通仮設費の安全費 警報設備 土石流や洪水等の警報システム、異常温度の自動警報装置、ベルやサイレン等の警報装置、風力計、雨量計、車両系建設機械のバックセンサー、沈下計、傾斜計
共通仮設費の営繕費 倉庫と材料保管等に要する費用 火薬庫
共通仮設費の現場環境改善費 区分なし 照明器具、熱中症対策設備
現場管理費 疾病と衛生対策費 健康診断(一般健診、特殊健診)
現場管理費 安全訓練研修等に要する費用 特別教育、各種資格取得のための講習受験費用、避難や救護や消火の訓練、送り出し教育、新規入場者教育、安全協議会、安全大会、RST、CFT

原文の費用区分は、直接工事費が「工事目的物の施工に直接必要な安全設備」、共通仮設費が準備費、安全費、営繕費、現場環境改善費で、上の表の2列目はその下の「主な内容」に当たる。この整理は(株)建設産業振興センターの「安全衛生経費確保ためのガイドブック」を出典とし、現行の土木請負工事積算要領に基づいて一部改編したものだ。交通誘導警備員のように労務費とも読める項目が安全衛生経費の側に並ぶ。中部地方整備局に寄せられた問いでも、交通誘導員の計上先は表4を参考にするよう回答されている。

算出できないときの書き方

材料費、労務費、建退共掛金、安全衛生経費には、当面の間の例外がある。全てを計上できない場合は「算出不能」「計上不可」などその旨が分かるように記載する。一部のみ計上できない場合は、計上可能な分だけ記載して「一部のみ計上」などと添える。法定福利費は従前から見積の明示を求めてきたため、この扱いの対象外になる。

この扱いが認められるのは、市場単価方式や標準単価方式などを使っていて算出が困難な場合に限られる。国交省が2026年4月1日以降に公告する案件向けに示した取り扱いでも同じ条件が付く。「未記入」と「事項無し」は原則として無効の入札で、様式間違いにより事項の欄そのものが無い場合も同じ扱いになる。

書く文字列は発注者ごとに違う。佐賀県は「計上不可」と「一部計上」、鳥取県は「算出不可」「計上不可」「一部のみ計上」を挙げる。鳥取県は法定福利費が対象外なので概算でも記載が必要だと注記している。

様式と最低限の記載事項

直轄工事の様式は自由だが、載せる項目は提出形式として決まっている。

工事 提出形式
土木 数量総括表に掲げる工事区分、各工種、種別、細別に相当する項目に対応するものの単位、員数、単価、金額を少なくとも表示したもの。種別と細別はその工事の数量総括表と同一でなくてよい
営繕 数量書に掲げる種目別内訳、科目別内訳、中科目別内訳、細目別内訳に相当する項目に対応するものの数量、単位、単価、金額を表示したもの

どちらも「商号又は名称」と住所と工事名の記載が必要で、そのうえで材料費、労務費、法定福利費等の明記が加わった。発注者側は、設計図書の交付に際して内訳書作成の参考となる資料を可能な限り添付する。

5項目の載せ方は既存様式を作り直す以外にもある。様式の見直しに時間を要する場合などは、既存様式の欄外での明示または別様式による提出でも差し支えないとされた。広島県の記載例は、欄外に「直接工事費のうち、材料費 ○○○円」の形で並べる書き方を認めている。

直轄工事では様式を自作しなくても済む。中部地方整備局は、入札説明書等ダウンロードシステムの工事費内訳書様式が改正内容に対応済みだとしている。

発注者が予定価格を積算するときの様式も変わった。公共建築工事内訳書標準書式は、発注者が設定する予定価格のもととなる工事費の積算で使う様式で、主に設計段階のものだ(入札者が出す内訳書の様式ではない)。建築工事編は2025年12月10日の改定で、工事費内訳書の構成に「(5) その他」が加わり、入契法12条と13条の関連として、必要に応じて材料費(材料、消耗材料費等)と労務費等の金額を記載することになった。区分が困難なものは、材料費又は労務費以外の項目として1式の金額を記載できる。追加された書式は「材料、消耗材料費等」「労務費」「上記以外」の3行をそれぞれ1式で並べる形だ。適用は2026年1月以降に入札手続を開始する官庁営繕工事から。

同じ日の改定は単価の側にも及んだ。鉄筋と型枠に労務費などの内訳を把握できる単位施工単価が標準単価積算基準に導入され、設備工事編の内訳書標準書式にも記載欄が加わった。設備工事編はその後2026年3月11日に別途改定されている。発注者の積算も材料費と労務費を分けて持つようになり、入札者の内訳書と突き合わせられる形になった。

電子入札での提出

電子入札システムの仕様で、工事費内訳書は1ファイルしか添付できない。数量総括表(営繕工事では入札時積算数量書)に掲げる項目に労務費等を追加するか、別シートに分けて明記する。発注者が配布した様式を使っても問題ないとされている。

北海道開発局の案内では、工事費内訳書の添付箇所に添付できるファイル容量は3MBまで。技術資料欄は10MBまでで、超える場合は原則として提出期限内の郵送か託送になり、発注者への連絡が必要になる。郵送と託送は技術資料欄についての案内で、内訳書の側には示されていない。

提出のタイミングは最初の入札に揃えられている。開札から直ちに行われる再度入札では内訳書の再提出が物理的に困難と考えられるため、内訳書は最初の入札に係る申込みの際の提出が想定されている。発注者の判断で再度入札でも提出を求めることは否定されていない。

不備で無効になる類型

四国地方整備局は、入札公告や指名通知を行う全ての工事を対象に、無効となる類型を別表で示している。該当すれば競争契約入札心得8条1項5号に該当する入札として、その内訳書を提出した業者の入札が無効になる。

区分 該当する場合
未提出であると認められる場合(未提出と同視できる場合を含む) 内訳書の全部又は一部が提出されていない、内訳書とは無関係な書類である、他の工事の内訳書である、白紙である、押印が欠けている(電子入札システムによる提出を除く)、内訳書が特定できない、他の入札参加者の様式を入手して使用している
記載すべき事項が欠けている場合 内訳書の記載が全くない、入札説明書や指名通知書で指示された項目を満たしていない
添付すべきではない書類が添付されていた場合 他の工事の内訳書が添付されていた
記載すべき事項に誤りがある場合 発注者名の誤り、発注案件名の誤り、提出業者名の誤り、内訳書の合計金額が入札金額と異なる
その他 上記以外で未提出又は不備がある場合

「内訳書の合計金額」とは、単に合計金額欄に記載した金額ではなく、各項目に記載された金額の合計を指す。端数処理などによる軽微な差異と判断される場合は無効にせず、記載内容の説明を求めることがある。

入札金額が予算決算及び会計令(予決令)85条に基づく調査基準価格を下回る場合は、合計金額を入札金額に一致させ、その差異を一般管理費等で調整する。調査基準価格が設定されていない場合は、この類型を「合計金額が入札金額と大幅に異なる場合」と読み替える。

本省の通知も同じ方向を示す。不備の例として入札書の提出者名の誤記、工事件名の誤記、入札金額と内訳書の総額の著しい相違を挙げ、公告で入札説明書に定めることにより無効にできるとした。

確認の時期は提出より後ろに固定されている。内訳書の確認は、公正性の観点から入札書と内訳書の提出期限後とする必要がある。提出された内訳書は、低入札価格調査で他の入札参加者の内容と比較する用途や、談合の可能性が疑われるときの比較にも使われる。

自治体で分かれる適用日

同じ制度でも、適用の起点と記載漏れの扱いは発注者ごとに違う。

発注者 適用の起点 記載漏れの扱い
直轄工事 2025年12月12日以降に公告か指名通知を行う工事 2026年3月31日までに入札手続を開始する工事は暫定的に無効としない。2026年4月1日以降に公告する案件から未記入と事項無しは原則として無効
広島県 2025年12月12日から。従前の取扱いにより指名や公告を行った工事も対象 当分の間、失格として取り扱わない
新潟県 2025年12月12日以降に公告や指名通知を行う工事 公表資料は無効と失格の扱いに触れていない
愛知県 2026年2月16日以降に入札公告か指名通知を行う案件から様式に項目を追加 当面の間、記載の不備でも無効としない。今回の改正部分以外の不備は従前どおり無効
広島市 2026年4月1日以降に公告する入札案件 2026年6月1日以降の公告分は一般競争入札と指名競争入札で無効。見積合わせ(特命随意契約を除く)は無効としない
佐賀県 2026年4月30日以降に公告するものから様式変更 2026年4月30日から7月29日の公告分は無効としない。7月30日以降の公告分は、金額欄に数字等の記載がないもの、様式間違いで欄がないものを無効
鳥取県 2026年5月1日以降に調達公告(調達公告を行わない場合は入札日の通知)を行う建設工事 2026年8月31日までの公告分は記載漏れでも失格にしない。9月1日以降の公告分は失格

鳥取県の経過措置には差し替えの制限がある。期間中に記載漏れがあった審査対象者には、労務費等を記載した別紙(任意様式)の提出を求め、内訳書そのものの差し替えは認めない。再度入札の場合も記載が必要になる。佐賀県は、記載以外の疑義についても説明を求め、根拠ある説明が得られない場合は入札を無効とすることがあるとしている。

落札候補になった後の調査

発注者は、提出された内訳書の直接工事費が「一定水準」以上かを確認し、下回る場合に理由の確認を行う。方法に定めはなく、対面、電話、メール、書面、FAXのいずれでも実施される。これが労務費ダンピング調査で、ガイドラインは原則として全ての工事を対象としつつ、試行的な導入であることから発注者が適宜選定して実施するとしている。

一定水準は、その工事の直接工事費の官積算額(発注者の積算額)に係数を乗じて算定する。係数は、中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)が示す調査基準価格の算定モデルの0.97を基本とする。営繕工事は、直接工事費に土木工事では現場管理費として扱われる項目が含まれるため、その額を控除してから係数を乗じる。控除率は一般工事が0.1、昇降機設備その他の製造部門を持つ専門工事業者を対象とした工事が0.2。各発注機関が独自係数を設定することは妨げられていない。

一定水準(土木工事)= 直接工事費の官積算額 × 0.97
一定水準(建築工事)= 直接工事費の官積算額 ×(1 − 0.1 又は 0.2)× 0.97

直接工事費が一定水準を切っても、理由の確認まで行かない場合がある。発注者は理由の確認に先立って、内訳書に書かれた労務費と積算上の労務費を比べ、前者が後者を上回るときや、両者の差が端数処理の範囲に収まるときは理由の確認を省略できる。土木工事では積算システムの機労材集計機能で積算上の労務費を集計して比べ、建築工事でその機能が無い場合は工事価格に標準的な労務構成割合を掛けた推計額と比べる。

係数0.97の根拠は低入札価格調査の算入率だ。中央公契連モデルでは調査基準価格の算定で直接工事費の額に10分の9.7を乗じ、その算入率0.97の内訳は機械経費0.95、労務費1.00、材料費0.95になっている。直接工事費の97%を確保していれば官積算上の労務費が100%含まれる、という組み立てになる。

理由を回答しないことには別の罰が付く。ガイドラインの入札説明書記載例は、書面の提出を行わない場合やヒアリングに応じない場合など理由を回答しない場合には、入札に関する条件に違反した入札として無効とする場合があるとしている。回答した内容が合理的でないことと、回答しないことは別扱いだ。

合理的な回答が確認できなくても、契約締結の効力が無効になることはない。ただし発注者は建設業法40条の4に基づく調査を行う建設Gメンへ通報し、受注者に調査が入る場合がある。落札候補者の過失で下回った場合は、内容を確認して発注者が通報の要否を判断する。

調査の対象は直接工事費と労務費だけで、材料費、法定福利費の事業主負担額、建退共掛金、安全衛生経費の確認は行われない。法定福利費は別ルートで突き合わされる。入札契約適正化を図るための措置に関する指針(平成13年3月9日閣議決定、令和6年12月13日一部変更)は、発注者が受注者に法定福利費を内訳明示した請負代金内訳書を提出させ、予定価格を定める際に積算した法定福利費と比べて適切に計上されていることを確認するよう努めることとしている。個々の下請の労務費を確認することは不要で、確認するのは直接工事費の総額と、可能であれば労務費だ。理由の確認では下請の見積書などの根拠資料を確認する必要はないとされ、「下請けの見積が材工共で労務費が分離できない」という理由も、下請都合で分離できない場合は合理的な回答と判断して差し支えないとされている。

ガイドラインは判断事例も並べる。

判断 回答の例
合理的 一般的な施工条件に比べて大規模で作業性が良好なため高い施工効率を想定している/発注者の想定と異なる工法(新技術、新工法、ICT施工など)で高い施工効率を想定している/過去の自社の類似工事の実績歩掛と最新の公共工事設計労務単価から労務費を算出している/下請からの見積が一部材工一式で下請分の労務費を分離計上できなかった
合理的でない 下請予定業者から徴収した見積書の内訳を確認せずそのまま転記している/最新の公共工事設計労務単価を用いずに労務費を算出した/下請予定業者に見積書に記載された労務費等の額を減額するよう変更を求めている/本来必要となる工事費用に想定落札率を乗じて算出した/根拠なく概算で算出した

下請に値引きを求めて数字を作ることが、名指しで合理的でない回答に入っている。確認されるのは、労務費の基準または公共工事設計労務単価を踏まえているか、最新の値か、職種と工種と地域に発注者の想定との齟齬が無いかの3点。

係数と調査の有無は発注者で変わる

0.97は直轄と多くの都道府県の値だが、全国一律ではない。ガイドラインが2025年11月時点でまとめた一覧では、三重県、山口県、沖縄県の係数が1.000。佐賀県と長崎県は低入札価格調査基準価格を予定価格の92%で固定し、広島県と長野県は低入札価格調査制度そのものを導入していない。広島県は入札価格の平均額から算出する方式で、予定価格の85%から92%の範囲に収める。

独自係数で内訳書そのものを失格の判定材料にしている県もある。三重県は、入札時に提出した工事費内訳書の直接工事費が設計金額に係数を掛けた額を下回ると失格とし、係数は土木0.950、建築0.935。埼玉県は入札金額見積内訳書の工種毎の金額が県積算の80%を下回ると数的根拠を求め、山形県は下請予定額が下請施工内容の積算価格の75%を下回ると失格とする。

調査自体が来ない場面もある。施工体制確認型総合評価落札方式を導入している場合は、同方式のヒアリング等で労務費を確認しているため、施工体制の確認をもって労務費ダンピング調査を実施したものとみなし、建設Gメンへの通報も要しない。随意契約(特命随契、不調随契など)は実施不要で、請負代金額を変更する際も行わず当初契約時のみ実施する。

下請と資材の見積に出る影響

元請が5項目を書くには、下請と資材の見積の側に数字が要る。公共建築工事見積標準書式(建築工事編)も2025年12月10日に改定された。製造業者や専門工事業者が出す見積内訳書の標準書式の末尾に、「見積金額のうち」として材料費、労務費、安全衛生経費の3行を置く独立したシートが加わった。記載は「可能であればお願いします」とされ、必須ではない。ここでの安全衛生経費は、労働安全衛生法に基づく労働災害防止対策に必要な経費を指す。改定の本体は書式の第1章に入った一文で、材料費、労務費、安全衛生経費の金額は建設業法20条1項と2項に基づくものとする、と定めた。見積書表紙の記載項目は改定前後で変わっていない。

現場労働者に関する法定福利費は、この書式では従来から見積書表紙の記載項目だ。原則として雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金保険を区分して記載し、保険料の種類ごとに明細が算定できない場合は合計を1式で計上する。

同じ5項目は契約後にも出てくる。中部地方整備局は、請負代金内訳書も2025年12月12日以降に公告(又は指名通知、随意契約)された工事が対象になるとし、鳥取県も請負代金内訳書について5月1日公告分から労務費等の記載が必要だとしている。

確認先: 入契法第12条に基づく工事費内訳書への記載について(国土交通省電子入札システム)、各発注機関の入札公告と入札説明書