国土交通省は2026年7月7日、建築物省エネ法にもとづく省エネ適合性判定の判定員を養成する「令和8年度 省エネ適合性判定に関する講習」の開催を発表した。今年4月1日に施行された中規模非住宅建築物の省エネ基準引き上げに対応した内容で、申込は8月4日まで。基準の引き上げ自体はすでに動いており、延べ床面積300㎡以上2,000㎡未満の非住宅は、4月1日以降に適合性判定を申請する案件から、用途に応じて従来より15〜25%厳しい基準への適合が求められている。
引き上げの対象と適用の線引き
対象は、新築または増改築後の床面積が300㎡以上2,000㎡未満になる非住宅建築物。店舗や事務所、倉庫などこの規模の非住宅を請け負う工務店の案件が直接の対象になる。根拠の省令(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令の一部を改正する省令)は2024年10月16日に公布され、2026年4月1日に施行された。
適用の線引きは着工日でなく申請日で決まる。施行日以降に所管行政庁か登録省エネ適判機関へ適合性判定を申請する建築物が、引き上げ後の基準の対象になる。住宅と300㎡未満の小規模非住宅は今回の引き上げの対象外で、基準は従来のまま。
手続きは変わらない。従来どおり省エネ適判を受け、建築確認時に適合性判定通知書を提出する流れが続く。
用途別の新しい基準値
改正前の中規模非住宅は、設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量を超えないこと(BEI 1.0)が基準だった。改正後は用途ごとにBEIの上限が決まる。BEI:設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値(その他一次エネルギー消費量を除く)。
| 用途 | 引き上げ後のBEI | 従来基準からの削減幅 |
|---|---|---|
| 工場等 | 0.75 | 25% |
| 事務所等、学校等、ホテル等、百貨店等 | 0.80 | 20% |
| 病院等、飲食店等、集会場等 | 0.85 | 15% |
いずれも太陽光発電設備とコージェネレーション設備の発電量のうち自家消費分を含めて計算できる。引き上げ後の水準は、2,000㎡以上の大規模非住宅と同じになる。
断熱材・サッシ・設備の選定への影響
BEIの評価は、外皮(開口部・断熱)の仕様と、空調や換気、照明、給湯、昇降機、太陽光発電などの設備仕様にもとづく。国交省が事務連絡に添えた設計者向け資料は、新基準への対策として、屋根や外壁、窓の断熱と日射遮蔽による熱負荷の軽減、高断熱サッシや断熱材の採用、空調や給湯、照明の高効率機器への切り替え、機器容量の適正化、人感センサーなどの省エネ制御を挙げている。中規模非住宅の見積では、断熱材や高断熱サッシ、高効率の空調機器や給湯機器の仕様が一段上がる対象になり、これらを扱う商社の引き合いにも関わる。
同資料は、2018〜2021年に新築された建築物の実設計データから、旧基準水準(BEI 0.95〜1.05)と新基準水準(同0.75〜0.85)で設計仕様がどう違うかを用途別、地域別に整理しており、温暖地(6地域)、寒冷地(2地域)、蒸暑地(8地域)ごとの対策例も載っている。
判定員講習の日程と申込
今回発表された講習は、省エネ適判を担う判定員の資格に必要な登録講習で、引き上げ後の中規模非住宅の基準と、令和7年度に適合義務化した新築戸建住宅の外皮基準、一次エネルギー消費量基準に対応した内容になっている。講義は2026年10月14日から27日までオンラインで実施し、期間内は何度でも視聴できる。修了考査は10月29日14時から70分間。
受講資格は3区分ある。講習Aは一級建築士や建築設備士など、講習Bは二級建築士など、講習Cは木造建築士などが対象になる。受講料は58,300円(税込)で3講習共通、定員は3講習合わせて900名。申込受付は7月7日14時から8月4日14時までで、主催は登録講習機関の一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター。
今後の引き上げ予定
省エネ基準は段階的な引き上げが予定されている。エネルギー基本計画は2030年度以降に新築される住宅、建築物でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指すとしており、非住宅は遅くとも2030年までに、事務所等や学校等、工場等でBEI 0.60、病院等やホテル等、百貨店等、飲食店等、集会場等で0.70、小規模非住宅で0.80への引き上げが示されている。住宅と小規模非住宅の基準についても、国交省は適合状況を踏まえて見直しを行う予定としている。



