設計や工事監理を請ける工務店は、2027年4月1日から、延べ面積300㎡以下の戸建て住宅やリフォームの設計契約でも、施主と署名か記名押印をした契約書を取り交わすことになる。政府が2026年10月6日に改正建築士法の契約関係の施行日を定める政令を閣議決定し、10月9日に公布した。
対象になる事業者と契約
対象は建築士事務所の開設者と、設計や工事監理を頼む側の両方になる。契約書の相互交付は契約の当事者双方の義務で、設計施工で家を建てる工務店では、建築士事務所の登録を受けて施主と結ぶ設計契約と工事監理契約がこれに当たる。建材商社とメーカーの取引は対象外。
改正法の要綱は対象を「建築士が行う設計又は工事監理に係る」契約と書き、整備政令でも電子交付の承諾手続きを定める施行令第8条に同じ限定が加わった。建築士の資格がなくても設計できる小規模な建物を、建築士でない人が設計する契約は対象に入らない。
施行日と日程
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年7月 | 改正建築士法(令和8年法律第74号)公布 |
| 2026年10月6日 | 契約関係の施行日を定める政令と、建築士法施行令の整備政令を閣議決定 |
| 2026年10月9日 | 両政令の公布 |
| 2027年4月1日 | 契約書の相互交付義務の拡大と、見積書の努力義務が施行 |
| 2029年7月まで(政令で定める日) | 資格要件の緩和が施行(施行日は未定) |
経過措置の定めは、報道発表と政令案文には書かれていない。
改正で変わる契約の決まり
契約書を双方で取り交わす義務の範囲は、延べ面積で区切られなくなる。
| 項目 | 改正前(現行) | 改正後(2027年4月1日から) | 義務を負う人 |
|---|---|---|---|
| 契約書の相互交付(第22条の3の3) | 延べ面積300㎡を超える建築物の新築に係る設計と工事監理の契約だけ。増改築や大規模の修繕、模様替は、その部分の面積で判断 | 延べ面積などを問わず、建築士が行う設計と工事監理の受託契約すべて | 契約の当事者双方(建築士事務所と施主など) |
| 委託代金の決め方(第22条の3の4) | 国の報酬基準(第25条)に準拠した代金で契約するよう努める | 見積書の内容など契約の事情を考慮し、委託内容に応じた適正な代金で契約するよう努める | 契約しようとする者(頼む側と請ける側) |
| 見積書の作成(第24条の10) | 規定なし(改正で新設) | 報酬の算定根拠を明らかにする見積書を作るよう努める(努力義務) | 建築士事務所の開設者 |
| 重要事項説明(第24条の7)と契約後の書面交付(第24条の8) | 面積を問わず、契約前に管理建築士などが書面で説明し、契約後に開設者が書面を渡す | 要綱に変更の記載なし | 建築士事務所の開設者 |
現行法では、300㎡以下の設計契約は、契約後に建築士事務所が施主へ書面を一方的に渡すだけで足りた。 改正後は、双方が署名か記名押印をした契約書を交わす形にそろう。施主の承諾を得れば電子で交付できる仕組みは、改正後も施行令第8条で引き続き定められている。
契約書に書く事項は、現行の第22条の3の3第1項が定める次の6つ。要綱が変えるのは対象となる契約の範囲で、記載事項の変更は書かれていない。
- 作成する設計図書の種類(設計の場合)
- 工事と設計図書との照合の方法と、工事監理の実施状況の報告の方法(工事監理の場合)
- 設計や工事監理を担当する建築士の氏名と一級、二級、木造の別(構造設計一級建築士か設備設計一級建築士ならその旨も)
- 報酬の額と支払の時期
- 契約の解除に関する事項
- 国土交通省令で定める事項
契約内容のうち上の事項を変えるときも、変更内容を書いた書面を相互に交付する決まりがある(現行の第22条の3の3第2項)。
違反時の扱いとして、現行法では、第22条の3の3や第24条の2から第24条の8までの規定に違反した建築士事務所の開設者に対し、都道府県知事が戒告、1年以内の事務所閉鎖命令、登録の取り消しをできる(第26条第2項)。
工務店の手元で確かめる書類
| 書類と様式 | 確かめる点 |
|---|---|
| 戸建て住宅の設計契約書(300㎡以下) | 契約後に渡す書面だけで済ませていないか。双方の署名か記名押印の欄があるか |
| リフォーム、増改築の設計契約書 | 面積で対象外としていた案件も、2027年4月1日以降の契約は相互交付の対象 |
| 工事監理の契約書 | 照合の方法と報告の方法、担当建築士の氏名と資格の別が書かれているか |
| 設計料の見積書 | 報酬の算定根拠が分かる形になっているか |
| 重要事項説明書 | 契約書と記載内容がそろっているか |
| 電子契約の承諾書 | 電子で交付する場合の施主の承諾の取り方 |
確認先: 国土交通省の報道発表と改正法要綱(出典欄のリンク)。
未確定の点
見積書に何を書けば報酬の算定根拠を明らかにしたことになるか、施行日前に結んだ契約をどう扱うかは、まだ示されていない。今後の国土交通省令や国の説明資料で示される見通し。
建築士の資格要件の緩和は、改正法の公布から3年以内の政令で定める日に施行され、日付はまだ決まっていない。中身は、二級建築士が一級建築士の免許を受けるのに必要な二級としての実務経験を4年から2年に、二級建築士と木造建築士の免許に必要な実務経験を7年から4年に、二級と木造の試験の受験に必要な実務経験を7年から2年に縮めるもの。大学や高校の在学中に受験できるようにする規定と、建築設備士を国の指定機関への登録制にする規定も入っている。



