資源エネルギー庁は2026年10月22日、家庭用給湯器のトップランナー基準を改める省令案と告示案の意見募集を始めた。締切は11月20日。ガス給湯器とエコキュートを別々の効率で測ってきた基準に、燃料の種類をまたいで「化石エネルギーをどれだけ使うか」で比べる基準を足し、給湯器メーカーに2034年度の目標値を自分で決めて公表させる。
トップランナー制度:省エネ法にもとづき、家電や給湯器などのメーカーと輸入事業者に、出荷する製品の省エネ性能を目標年度までに国の定める水準へ引き上げるよう求める制度。達成状況が足りない事業者には、国が勧告などを行うことがある。
対象になるメーカーと給湯器
基準を守る義務を負うのは給湯器の製造事業者と輸入事業者で、工務店や商社に直接の義務はかからない。ただし、メーカーが出荷する給湯器の種類と割合を変えていく制度のため、商社の仕入れと工務店の機種選びに順に響く。
新しい基準の対象は、家庭用のガス給湯器、家庭用燃料電池(エネファーム)、ハイブリッド給湯器、エコキュート(CO2冷媒のヒートポンプ給湯機)、電気温水器。業務用、暖房用、都市ガスのうち13A以外のガスを使うもの、自然通気式のガス瞬間湯沸器、CO2以外の冷媒を使うヒートポンプ給湯機、貯湯タンク50L以下の電気温水器は対象から外れる。
日程
| 手続き | 日付 |
|---|---|
| 案の公示と意見募集の開始 | 2026年10月22日 |
| 意見募集の締切 | 2026年11月20日 |
| 省令と告示の施行(案) | 2027年4月1日 |
| メーカーによる取組方針と目標値の公表期限 | 2028年3月31日 |
| 目標年度 | 2034年度 |
告示案の附則は、施行日を省エネ法施行令の改正政令(令和8年政令第321号)の施行日である2027年4月1日としている。同じ日に、いまのガス温水機器の判断基準(平成16年経済産業省告示第316号)と電気温水機器の判断基準(平成25年経済産業省告示第38号)を廃止し、一つの告示にまとめる。
改正で変わること
| 項目 | いまの基準 | 改正案 | 対象者 |
|---|---|---|---|
| 評価の物差し | ガス給湯器は熱効率、エコキュートは年間給湯保温効率など、種類ごとに別の効率 | 種類ごとの効率基準は残したうえで、全機種を化石エネルギー消費量(MJ)で横並びに評価する基準を追加 | 給湯器メーカー、輸入事業者 |
| 目標値 | 国が区分ごとに基準値を決める | 国の目安(1台1人あたり5,605MJ)と自社の出荷方針を踏まえ、メーカーが自ら目標値を決める | 同上 |
| 達成の判定 | 区分ごとの出荷台数で加重平均した効率 | 2034年度以降の各年度に出荷する全給湯器の化石エネルギー消費量の加重平均が自社目標を上回らないこと | 同上 |
| 公表 | なし | 取組方針と目標値を2028年3月31日までにインターネットなどで公表。見直したときも公表 | 同上 |
| 告示 | ガスと電気で別々の2本 | 1本にまとめる | 同上 |
化石エネルギー消費量は、年間の給湯に使うガス消費量(MJ)に0.99を掛けた値と、電力消費量(kWh)に0.41と火力平均係数9.40(MJ/kWh)を掛けた値の合計で計算する。世帯の人数や地域の外気温を織り込んだ給湯の負荷をもとに算定し、暖房に使う分は含めない。
メーカーが決める出荷の方針は、住宅の環境を3つに分けて書く。
| 環境 | 国が示す目安 |
|---|---|
| ①高効率給湯器の効率が十分に出る気候の地域で、設置場所を取れる見込みが高い住宅(新築と既存の戸建て、新築の集合住宅)、かつ高効率給湯器で元が取れるだけの給湯需要がある世帯 | 高効率給湯器(ヒートポンプ給湯機、家庭用燃料電池、ハイブリッド給湯器)を出荷する |
| ②①以外で、住宅の造りなどから潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)を付けられない事情がない環境 | 潜熱回収型ガス給湯器と同等以上の効率の給湯器を出荷する |
| ③①②以外の環境 | 想定する出荷先を方針に書く |
公表の様式には、事業者名、目標値、3つの環境ごとの方針が並ぶ。目標設定時点の出荷の平均値と、目標達成に必要な年あたりの改善率は任意の記載になる。
5,605MJの前提にある出荷の割合
国の目安5,605MJは、2034年度に世帯の種類と給湯器の種類ごとにどれだけ入れ替わるかを置いて計算した値。ワーキンググループの取りまとめは、その前提となる出荷台数の割合を次のように示している。
| 給湯器の区分 | 2034年度の前提 | 2023年度の実績 |
|---|---|---|
| 高効率給湯器 | 39.3% | 22% |
| 潜熱回収型給湯器 | 42.5% | 29% |
| その他の給湯器 | 18.1% | 49% |
高効率給湯器と潜熱回収型給湯器のどちらにも入らない「その他の給湯器」は、出荷の49%から18.1%まで下がる前提になっている。
取りまとめは、2024年7月の省エネルギー小委員会で示された「国は、示した目安をもとに、製造事業者等と連携して、流通事業者等に対する働きかけを実施」する方針も引いている。給湯器が消費者に届くまでの過程で効率の良い機種が選ばれるよう、高効率給湯器を扱う流通事業者の販売目標に関する取組などを国が検討するとしている。
確かめる書類と表示
| 手元の物 | 改正案での扱い |
|---|---|
| 給湯器のカタログの効率表示 | ガス給湯器の区分名と熱効率、エコキュートの年間給湯保温効率(寒冷地仕様は寒冷地の値)などの表示義務は新しい告示に引き継がれる |
| メーカー各社の取組方針と目標値 | 2028年3月31日までに各社がインターネットなどで公表 |
| 化石エネルギー消費量の表示 | 改正案には入っていない。取りまとめは、表示のあり方を2031年度末までに検討するとしている |
目標値が判断の基準を踏まえていない場合や、2034年度の実績が目標に届かない場合は、国が省エネ性能の向上を求める勧告などを行うことがあると、取りまとめは書いている。
未確定の点
施行日と5,605MJの目安は案の段階で、意見募集の結果を受けて決まる。結果の公示と告示の公布は、締切の11月20日より後になる。流通事業者に向けた取組は、取りまとめで「検討する」とされた段階で、中身はまだ示されていない。
意見は e-Gov の意見提出フォーム、郵送、メール(bzl-toprunner-shoene@meti.go.jp)で出せる。問合せ先は資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課 トップランナー制度担当。
同じ時期に、建材のトップランナー制度でも中高層マンション用サッシの基準案が意見募集にかかっている(中高層マンション用サッシにトップランナー基準案)。エコキュートの補助対象と効率の現状は給湯省エネ2026の登録リストの記事にまとめている。



