海外のメーカーから建材を直で引くとき、原価に乗る関税は品目ごとに開きがある。アルミや鉄の窓枠は無税で、書類をどう揃えても下がる余地がない。合板は8.5%かかり、協定を使えば1.5%まで落ちる。同じ「輸入建材」でも、税率表のどの行に落ちるかで話がまるごと変わる。

建材の関税率

実行関税率表(2026年4月1日版)で基本税率が無税の建材はこうなる。原産地を問わず無税で、協定を使うかどうかと関係がない。

品目 HS番号
アルミ製の戸及び窓並びにこれらの枠、戸敷居 7610.10
鉄鋼製の戸及び窓並びにこれらの枠、戸敷居 7308.30
石膏ボード(紙又は板紙のみを張ったもの) 6809.11
断熱用複層ガラス 7008.00
花こう岩(加工した建築用石材) 6802.23
壁紙(プラスチックを塗布又は被覆した紙製) 4814.20
衛生陶器(磁器製) 6910.10
木製の窓及びフランス窓並びにこれらの枠 4418.11、4418.19
木製の戸及びその枠並びに敷居 4418.21、4418.29

サッシや玄関ドアは枠ごと入れても関税がかからない。アルミでも鉄でも木でも同じで、原産地証明の書類を揃えても下がる額はない。

税率が残るのは木材系と、タイル、板ガラス、ビニル床材になる。「一般の税率」は協定を使わない場合に適用される率で、基本税率とWTO協定税率のうち低いほうを載せた。

品目 HS番号 一般の税率 EPA税率の例 RCEP
陶磁製タイル 6907.21〜6907.23 1.7% 締約国は無税 中国0.8〜1%、韓国とアセアンは無税〜1%
板ガラス(厚さ4ミリ以下) 7005.29 3.1% 無税 中国と韓国1.4%
ビニル床材(塩化ビニル重合体製) 3918.10 3.1% 無税 中国と韓国1.4%
多層フローリング(組み合わせた床用パネル) 4418.75 2% 無税 1.3%
構造用集成材(グルラム) 4418.81 3.9% 無税 2.4%
直交集成板(CLT。ラミナが全て厚さ12ミリ以上) 4418.82 3.9% 無税 2.4%
直交集成板(それ以外) 4418.82 6% CPTPP1%、日EU1.1%、日アセアン5% 5%
ラワン合板(厚さ6ミリ以上、表面加工なし) 4412.31 8.5% 日アセアン5%、CPTPP1.5%、日EU1.5% 8.5%

RCEP欄は、協定が締約国ごとに別の率を置いているため相手国で分かれる。木材系の4品目は、アセアン、オーストラリア、ニュージーランドの欄にだけ率があり、中国と韓国の欄は空欄で一般の税率のまま。タイル、板ガラス、ビニル床材は中国と韓国にも率が置かれている。タイルのように幅のある表記は、旧品目表に基づいて複数の税率が設定されている品目で、実際に使う率はNACCSの品目コードで特定する。

税率が決まる順番

関税の税率は、貨物の種類と原産地の組み合わせで決まる。種類はHS番号と統計細分で確定し、原産地ごとに適用される税率が次のように選ばれる。

基本税率:国内産業の状況を踏まえて長期的な観点から設定される税率。関税定率法で定める。

暫定税率:特殊事情がある場合に暫定的に適用される税率。関税暫定措置法で定める。

WTO協定税率:WTO加盟国を原産地とする貨物にこれ以上課さないと約束(譲許)した税率。便益関税受益国と二国間協定で最恵国待遇を認めている国にも適用される。

特恵税率:特恵受益国を原産地とする貨物に適用される税率で、実行税率より低い率が供与される。後発開発途上国(LDC)が原産地の場合は特別特恵税率で全て無税になる。適用には原則として特恵原産地証明書の提出が要る。

EPA税率:日本と特定の国との経済連携協定で定めた税率。協定が品目ごとに定めた関税の削減と撤廃の予定に従って下がる。適用にはその協定の原産地証明書の提出が要る。

適用の順序は低いほうを採るかたちで決まっている。協定税率が設定されている品目では、基本税率(暫定税率があればそれ)と協定税率の低いほうが一般の税率になり、そこよりEPA税率が低ければEPA税率が適用される。一般特恵の対象品目では、一般特恵税率とEPA税率を比べて低いほうが使われる。LDCが原産地で特恵対象品目なら無税になる。

使える協定が複数あるとき

一つの国と複数のEPAを結んでいる場合、どれを使うかは輸入者が選ぶ。ラワン合板(厚さ6ミリ以上で表面加工のないもの)で見ると、産地別に使える協定と税率はこうなる。

産地 使える枠と税率
ベトナム 日ベトナムEPA8.5%、日アセアン協定5%、CPTPP1.5%、RCEP8.5%
マレーシア 日アセアン協定5%、CPTPP4.2%、RCEP8.5%
インドネシア 日アセアン協定5%、RCEP8.5%
EU 日EU・EPA1.5%
協定なしの国 8.5%(WTO協定税率)

ベトナム産でCPTPPを使えば、日ベトナムEPAより7ポイント下がる。CPTPPは同じ協定の中でマレーシア原産だけ4.2%と別扱いになっているため、産地が変われば有利な協定も変わる。選ぶときの判断材料は税率だけではなく、その協定の原産地規則を満たせるか、満たすことを確認する負担がどれだけかの2つになる。

原産品と認められる要件

EPA税率は「協定の原産品」にだけ適用される。相手国から船積みされた事実は要件ではない。要件は完全生産品、原産材料のみから生産される産品、実質的変更基準の3系統で、実質的変更基準はさらに3つに分かれる。税関が確認を求める書類も要件ごとに違う。

要件の種類 確認する内容 確認書類の例
完全生産品 産品と原材料が全て締約国で完全に得られたこと 契約書、生産証明書、製造証明書、漁獲証明書
原産材料のみから生産される産品 生産に使った全ての一次材料が協定の原産品と認められること 契約書、総部品表、製造工程フロー図、生産指図書、原材料の投入記録、製造原価計算書
関税分類変更基準 産品のHS番号と非原産材料のHS番号の間に、品目別原産地規則が定める変更が生じていること 総部品表、原材料一覧表、製造工程フロー図、生産指図書
加工工程基準 品目別原産地規則が定める特定の生産又は加工の工程が行われていること 契約書、製造工程フロー図、生産指図書、生産内容証明書
付加価値基準 協定ごとの計算式で算出した付加価値が基準を満たすこと 製造原価計算書、仕入書、伝票、請求書、支払い記録、製造工程フロー図

関税分類変更基準を見るときは、材料のHS番号を先に押さえる必要がある。合板(4412)の材料になる合板用単板は4408で、どちらも第44類に入る。品目別原産地規則には特定のHS番号からの変更を除く書き方が混ざるため、変更の幅と除外の有無を品目ごとに読む作業になる。

運び方にも条件が付く。原産国から日本に直送されるか、第三国を経由する場合は貨物が税関の管理下に置かれ、行われた作業が積替え、一時蔵置、実質的な変更を加えない程度の作業だけであること。これを積送基準といい、第三国で積み替える場合は締約国からの通しB/L等が要る。

証明手続の3方式

原産品であることを税関に示す手続は3つに分かれる。一つの協定で複数が採用されているときは、輸入者が自由に選べる。

方式 使えるEPA(日本への輸入) 輸入申告時の提出書類
第三者証明制度 日シンガポール、日メキシコ、日マレーシア、日チリ、日タイ、日インドネシア、日ブルネイ、日アセアン、日フィリピン、日スイス、日ベトナム、日インド、日ペルー、日豪、日モンゴル、RCEP 相手国の発給当局が発給した原産地証明書
認定輸出者による自己証明制度 日メキシコ(適用除外品目あり)、日スイス、日ペルー、RCEP 認定輸出者が作成した原産地申告
自己申告制度 日豪、CPTPP、日EU、日米貿易協定、日英、RCEP 原産品申告書、原産品申告明細書、関係書類

原産地証明書は輸出の際に輸出者等の申告に基づき発給されたものでなければならず、有効期限は発給の日から1年。輸入申告の際の提出が原則で、課税価格の総額が20万円以下の貨物は除かれる(関税法施行令61条1項2号、同条4項から8項、関税法基本通達68-5-0から68-5-23)。

自己申告制度には相手方の制限がある。日米貿易協定は輸入者による自己申告のみ。RCEP協定で輸出者や生産者が行う自己申告は、相手国がオーストラリア、ニュージーランド、韓国の場合に限られる(2025年1月時点)。CPTPPのベトナム、マレーシア、ブルネイは、権限ある当局が輸出者又は生産者に代わって発給する。

RCEPで輸入者自己申告を使う場合、原産品申告書は協定附属書3Bの必要的記載事項を含めば任意の様式でよいが、英語で作成する必要がある。これに加えて原産品申告明細書と、明細書の記載内容を確認できる関係書類(契約書、価格表、総部品表、製造工程表等)の提出が要る。認定輸出者制度なら提出は原産地申告だけで、追加の資料はいらない。

方式の違いは、輸入後に原産性を問われたとき誰が説明するかに出る。輸入者自己申告に基づいてEPA税率を適用した場合、協定上、輸出国に対する事後確認は原則として実施されない。輸入者が出した情報が不十分だと、その時点で適用が否認される。

事後確認で聞かれること

EPA税率や特恵税率を適用した貨物は、通関後に原産品かどうかの確認を受けることがある。輸入者への事後確認は原則として書面による情報提供要請で行われ、事業所を訪問する事後調査の形もある。

税関から確認の対象貨物と確認内容を記した質問書が届き、輸入者は回答と根拠資料を提出する。回答期限は質問書に記載され、基本的に到着の日から30日。回答がない場合や情報が不十分な場合は特恵税率の適用が否認され、事案の内容に応じて過少申告加算税等の対象になる。回答内容によっては、税関が輸出者や原産地証明書の発給機関に情報提供を求め、現地へ訪問して検証することもある。

根拠資料として求められるのは、対象貨物の生産に係る契約書、仕入書、価格表、総部品表、製造工程表など。品目別規則によっては、材料を作った事業者まで遡った製造工程や材料一覧の提出まで必要になる。

第三者証明で入れた貨物も対象から外れない。相手国の発給機関で原産性の審査が十分にされないまま証明書が発給された事案や、偽造の証明書が提出された事案が起きているため、税関は第三者証明の場合も確認を行う。輸入者は納税義務者であり特恵税率の便益を直接受ける者として、貨物の原産性を証明する義務を負う。輸出者から資料が出てこないときは税関に相談する道があり、その場合は税関が輸出者等に事後確認を実施することがある。

帳簿と書類の保存

業として輸入する申告者には帳簿書類の保存義務がある(関税法94条、94条の5、関税法施行令83条)。

対象 中身 保存期間
帳簿 品名、数量、価格、仕出人の氏名又は名称、輸入許可年月日、許可書の番号 7年(輸入許可の日の翌日から起算)
書類 契約書、仕入書、運賃明細書、保険料明細書、包装明細書、価格表、製造者又は売渡人が作成した仕出人との取引の書類など、申告内容を明らかにできる書類 5年(同)
電子取引の取引情報 EDI取引やインターネット、電子メールで授受した取引情報 5年(同)

書類や輸入許可書に帳簿の記載事項が全て載っているなら、その書類を保存することで帳簿への記載を省略できる。その場合の書類は帳簿と同じ期間保存する。帳簿と書類は、輸入許可書の番号などで対応が分かるように整理して保存する。

事前教示の回答が効く期間

輸入前に原産地規則を満たすかどうかを税関に照会し、文書で回答を受ける制度がある。文書による照会には原則30日以内に回答があり、回答の内容は最長3年間、税関が輸入申告を審査する際に尊重される(法令改正等で取扱いが変わった場合を除く)。RCEP協定については、協定2.6条の「RCEP原産国」も希望すれば回答の対象になる。

口頭やEメールでの照会は、文書による照会に準じた取扱いに切り替えた場合を除き、輸入申告の審査で尊重されない。同じ品番を継続して入れるなら、文書で取った回答が効く期間は3年ある。

日本から出すときの証明書

商社が国内メーカーの建材を海外へ出す側に立つ場合は、発給の手続きが逆になる。EPAに基づく第一種特定原産地証明書は、経済産業大臣が指定した日本商工会議所が発給する。企業登録は無料で有効期限は2年。発給に必要な情報を日本商工会議所が受理してから審査結果を通知するまでは原則2営業日(申請者の責めに帰すべき遅延期間を除く)。発給申請は、原産品判定依頼で原産品と判定された産品の輸出者が行う(日豪協定とRCEP協定では生産者も申請できる)。

輸入前に踏む順番

# 確認すること
1 仕出国と日本がEPA等を結んでいるか
2 貨物のHS番号と統計細分
3 その細分にEPA税率が設定されているか、一般の税率と比べて下がるか
4 複数の協定が使えるとき、税率と原産地規則の満たしやすさの両方
5 適用される原産地基準(完全生産品、原産材料のみ、実質的変更基準のどれか)
6 原産地基準と積送基準を満たす証拠書類を輸出者から入手できるか
7 使う証明手続の方式と、輸入申告時に出す書類
8 NACCSに入力する原産地証明識別コード
9 事後確認で出す根拠資料の保管場所と保存期間

JISやJASへの適合、大臣認定、クリーンウッド法の合法性確認といった規格と法令の側は輸入建材はJISかJASに適合しなければ大臣認定にまとめている。関税と原産地の手続は、そちらを通したうえで別に積む作業になる。

確認先: 実行関税率表(税関)、EPA・原産地規則ポータル(税関)