間口3.6m、奥行4.6m、天井高2.4mの居室で内装の面積を出すと、床16.56㎡と天井16.56㎡に壁39.36㎡を足して72.48㎡になる。ここにF☆☆☆の建材を全面に使うと建築基準法に通らない。24時間換気を0.5回/hで回していても、F☆☆☆で張れるのは33.12㎡までだからだ。

規制はホルムアルデヒドの等級と換気設備の二本立てで、二本は連動している。等級を上げても換気設備は省けず、換気回数を上げると第二種と第三種を張れる面積が増える。

規制されている2物質

建築基準法28条の2第3号は、居室を有する建築物について「居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質」の技術的基準に適合することを求める。この政令で定める物質は、クロルピリホスとホルムアルデヒドの2つだけ(施行令20条の5)。

クロルピリホスは建築材料への添加も、あらかじめ添加した建築材料の使用も禁じられる(令20条の6)。添加から建築物に用いられた状態で5年以上経過したものだけは、発散のおそれがないものとして除かれる(平成14年国土交通省告示1112号)。

内装の仕上げに当たる範囲

面積制限がかかるのは「内装の仕上げ」で、条文がその範囲を書いている。

内装:居室の壁、床及び天井(天井のない場合は屋根)並びにこれらの開口部に設ける戸その他の建具の室内に面する部分。回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く(令20条の7第1項1号)。

ここでいう居室には、常時開放された開口部を通じて相互に通気が確保される廊下その他の部分が含まれる。ドアのアンダーカットで居室とつながる廊下は、居室と一体で扱う。

面的でない部分は外れる。柱などの軸材、巾木、手すり、鴨居、長押といった造作、建具枠、部分的に用いる塗料や接着剤は内装の仕上げに当たらない(国土交通省の技術的基準の説明資料)。

建材の区分と等級の対応

区分は夏季の表面積1㎡あたり毎時の発散速度で決まる。測定条件は温度28℃、相対湿度50%、ホルムアルデヒド濃度0.1mg/㎥。

発散速度 区分 対応するJISとJASの等級 内装の仕上げ
0.12mg/㎡h超 第一種ホルムアルデヒド発散建築材料 旧E2、Fc2相当、無等級 使用禁止
0.02mg/㎡h超 0.12mg/㎡h以下 第二種ホルムアルデヒド発散建築材料 F☆☆ 使用面積を制限
0.005mg/㎡h超 0.02mg/㎡h以下 第三種ホルムアルデヒド発散建築材料 F☆☆☆ 使用面積を制限
0.005mg/㎡h以下 どの区分にも当たらない F☆☆☆☆ 制限なし

どの建材がどの区分かは、平成14年国土交通省告示1113号(第一種)、1114号(第二種)、1115号(第三種)が品目ごとに定める。挙がっているのは合板、木質系フローリング、構造用パネル、集成材、単板積層材、MDF、パーティクルボード、ひき板や単板をユリア樹脂等の接着剤で面的に接着して板状に成型したその他の木質建材、ユリア樹脂板、壁紙、接着剤、ロックウールとグラスウールの保温材と緩衝材と断熱材、フェノール樹脂系保温材、ユリア樹脂かメラミン樹脂を使った断熱材、塗料、仕上塗材の17分類。塗料と仕上塗材と現場施工の接着剤は、いずれもユリア樹脂等を用いたものに限られる。

大臣認定でも区分が動く。第一種のうち0.12mg/㎡hを超える量を発散させないものとして認定を受けたものは第二種とみなす。第一種か第二種のうち0.02mg/㎡hを超えないものと認定されたものは第三種とみなし、0.005mg/㎡hを超えないものと認定されたものはどの区分にも当たらないものとみなす(令20条の7第2項から第4項)。建築物の部分に使って5年経過したものも制限を受けない。

第二種と第三種の使用面積

第二種と第三種を内装の仕上げに使うときは、次の式を満たす範囲までとなる(令20条の7第1項2号)。

N2 × S2 + N3 × S3 ≦ A

S2が第二種を使う部分の面積、S3が第三種を使う部分の面積、Aが居室の床面積。係数N2とN3は居室の種類と換気回数で変わる。

居室の種類 換気の条件 N2(第二種) N3(第三種)
住宅等の居室 換気回数0.7以上 1.2 0.20
住宅等の居室 その他 2.8 0.50
住宅等の居室以外 換気回数0.7以上 0.88 0.15
住宅等の居室以外 換気回数0.5以上0.7未満 1.4 0.25
住宅等の居室以外 その他 3.0 0.50

住宅等の居室:住宅の居室と、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場(令20条の7第1項2号の表の備考一)。これらと常時開放された開口部を通じて通気が確保される廊下などの部分も含む。

換気回数はn=V/Ahで計算する。Vが機械換気設備の有効換気量、Aが床面積、hが天井の高さ。空気を浄化して供給する方式なら有効換気換算量を使う。

冒頭の16.56㎡の居室で当てはめると、24時間換気が0.5回/hの住宅の居室は表の「その他」に入る。第三種だけなら16.56÷0.50で33.12㎡、第二種だけなら16.56÷2.8で5.91㎡が上限になる。内装の面積は72.48㎡あるので、どちらも全面には届かない。

換気設備を0.7回/h以上にすると第二種の上限は16.56÷1.2で13.8㎡に広がり、第三種は82.8㎡で内装全面をまかなえる。第二種で使える面積は2.33倍になる計算で、係数の比(2.8対1.2)がそのまま効く。

換気設備の義務

換気設備は建材の等級と切り離されていて、内装を全部F☆☆☆☆でそろえても義務は消えない。居室には次のいずれかの構造の換気設備を設ける(令20条の8第1項1号)。

方式 求められる能力
機械換気設備 必要有効換気量Vr=nAh以上の有効換気量。nは住宅等の居室0.5、その他の居室0.3。Aは床面積、hは天井の高さ
居室内の空気を浄化して供給する方式の機械換気設備 有効換気換算量Vq=Q((C−Cp)/C)+VがVr以上。Qは浄化して供給する空気の量、Cは浄化前のホルムアルデヒド量、Cpは浄化後の量、Vは有効換気量。告示基準への適合か大臣認定が要る
中央管理方式の空気調和設備 Vr=10(E+0.02nA)以上の有効換気量。Eは内装の仕上げの建材から発散するホルムアルデヒドの量、nは住宅等の居室3、その他の居室1(平成15年国土交通省告示274号第二)

16.56㎡で天井高2.4mの住宅の居室なら、必要有効換気量は0.5×16.56×2.4で19.9㎥/hになる。1つの機械換気設備が2以上の居室にかかるときは、それぞれの必要有効換気量の合計以上が要る。

給気機と排気機は、直管部損失と局部損失と機器の圧力損失を足した換気経路の全圧力損失を考慮した計算で能力を確かめる。居室の規模や換気経路から必要な換気が確保できることが明らかな場合は、この計算を省ける(告示274号第一第一号)。気流や温度、騒音で居室の使用に支障が出ない位置と構造にすることも同じ告示が求めている。

中央管理方式の空気調和設備を設ける居室は、内装の仕上げの制限そのものが適用されない(令20条の7第5項)。1年を通じて人が通常活動する空間のホルムアルデヒド量を空気1㎥あたりおおむね0.1mg以下に保てるものとして大臣認定を受けた居室は、内装の制限も換気設備の義務も外れる(令20条の9)。

換気設備の義務が外れる居室と緩む居室

隙間で換気が確保される居室には、平成15年国土交通省告示273号が別の道を用意している。

1つ目は開口部の面積で足りる場合。常時外気に開放された開口部と隙間の換気上有効な面積の合計が、床面積の1万分の15以上(床面積1㎡あたり15c㎡以上)ある居室が当たる。就寝に使う居室(住宅の居室、ホテルや旅館や下宿の宿泊室など)以外なら、使用時に外気に開放される開口部と隙間で同じ面積を満たせばよい。

2つ目は真壁造。外壁に合板その他これに類する板状に成型した建築材料を用いない真壁造の建築物で、天井と床にも同種の材料を使わないもの。または外壁の開口部の建具に、通気が確保できる空隙のある木製枠を用いるもの。

天井が高い居室は扱いが違い、機械換気設備は要るまま計算に使うnが下がる。適用の下限は求める水準ごとに決まっていて、天井が低い居室には効かない。

求める換気の水準 天井の高さと係数n
0.7回/h相当 2.7m以上3.3m未満は0.6、3.3m以上4.1m未満は0.5、4.1m以上5.4m未満は0.4、5.4m以上8.1m未満は0.3、8.1m以上16.1m未満は0.2、16.1m以上は0.1
0.5回/h相当 2.9m以上3.9m未満は0.4、3.9m以上5.8m未満は0.3、5.8m以上11.5m未満は0.2、11.5m以上は0.1
0.3回/h相当 3.5m以上6.9m未満は0.2、6.9m以上13.8m未満は0.1、13.8m以上は0.05

天井裏や壁の中に使う建材

機械換気設備または中央管理方式の空気調和設備を設ける場合、天井裏、小屋裏、床裏、壁、物置その他これらに類する部分から居室への流入を抑える措置が要る(告示274号第一第三号)。措置は3択。

  1. 下地材、断熱材その他これらに類する面材に、第一種と第二種、および第二種とみなす大臣認定を受けた建材を使わない
  2. 平成11年建設省告示998号の気密材、またはこれと同等以上の気密性を持つ材料(石こうボードなど)で、連続した気密層または通気止めを設けて居室と区画する
  3. 居室の空気圧が天井裏等の空気圧以上になるよう、機械換気設備で調整する

3番目は換気方式で手間が変わる。給気機だけの第2種換気は給気を機械で行うため特別な措置は要らない。排気機だけの第3種換気は、居室の排気機かこれとは別の排気機で天井裏等からも排気する。給気機と排気機の両方を持つ第1種換気は、能力の調整に加えて天井裏等からの排気を組み合わせる。

天井裏に回す断熱材の等級が決まるのは内装の面積制限ではなく、この3択のどれを取るかによる。1番目を選べば断熱材はF☆☆☆以上、2番目と3番目なら等級を問わない。

規制を受けない建材

告示1113号から1115号に挙がっていない建材は、ホルムアルデヒドの発散がほとんど認められないため、内装の仕上げにも天井裏等にも制限なしで使える。国土交通省が例を公表している。

種類 例
金属類 アルミ板、銅板、ステンレス板、琺瑯鉄板(PCM板や塩ビ鋼板やカラーアルミを含む)
コンクリート類 コンクリート、モルタル、コンクリートブロック
窯業建材 ガラス、タイル、レンガ
天然石材 石材、大理石
無機系塗壁 漆喰、プラスター(水和硬化型と自己接着型)
木材 無垢の木材、面的に接着して板状に成型したものでないもの(縦継ぎ等)
ボード類 木質系セメント板、パルプセメント板、石こうボード、ケイカル板、ロックウール吸音板、インシュレーションボード、ハードボード、火山性ガラス質複層板、竹製のフローリング
化粧材 印刷紙、オレフィンシート、突板、塩ビシート、高圧メラミン樹脂板

塗料では、セラックニス類、ニトロセルロースラッカー、塩化ビニル樹脂系とアクリル樹脂系のワニスやエナメルやプライマー、合成樹脂エマルションペイント、建築用ポリウレタン樹脂塗料、オイルステインなどが対象外。接着剤では酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形、ゴム系ラテックス形、水性高分子イソシアネート系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、変成シリコーン樹脂系、ホットメルト形が対象外になる。

素板として二次加工した場合は、使う接着剤に応じて規制対象になる。竹製フローリングも接着剤を使うなら別に判断が要る。

等級を確かめる資料

区分の根拠として使えるものは、国土交通省建築指導課の審査方法が示している。改正後のJAS規格またはJIS規格によるF☆☆☆☆やF☆☆☆やF☆☆の表示があるマーク、非ホルムアルデヒド系接着剤使用や接着剤等不使用の表示があるJASマーク、大臣認定書、改正前の規格のマークにガラスデシケーター法などの試験成績書を添えたもの。大臣認定書と試験成績書は写しでよい。

区分の判断は次の4点で分かれる。

大臣認定は原則としてJIS規格やJAS規格に適合しない建材が対象になる。規格のマークに紛らわしい表示をすることは、JISとJASのそれぞれの根拠法で禁じられている。

確認申請に出す図書

法28条の2が適用される建築物の確認申請には、3種類の図書が要る(建築基準法施行規則1条の3の表のうち、法28条の2の規定が適用される建築物の項)。

図書 明示すべき事項
各階平面図 給気機または給気口、排気機または排気口の位置。外壁の開口部に設ける建具(通気ができる空隙のあるものに限る)の構造
使用建築材料表 内装の仕上げに使用する建築材料の種別。第一種、第二種、第三種を使用する内装の仕上げの部分の面積。その面積に係数を乗じて得た面積の合計
有効換気量または有効換気換算量の計算書 有効換気量または有効換気換算量とその算出方法。換気回数と必要有効換気量

使用建築材料表は建材の種別と区分別の面積を書く様式なので、内装材の仕様が確認申請の前に固まっていないと出せない。設計の途中でフローリングや壁紙を差し替えるとき、等級が同じかどうかがそのまま申請図書の作り直しにつながる。

2003年7月1日より前の建物を改修するとき

シックハウス対策の規定は2003年7月1日施行なので、それ以前に着工した建物の多くは既存不適格になる。既存不適格建築物に増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替をする場合、令20条の7から20条の9までの技術的基準は増築等をする部分以外の部分に適用されない(法86条の7第3項、令137条の15第1項)。

改修する部分だけがホルムアルデヒドの規制と換気設備の義務を負い、手を付けない居室は現状のままでよい。増築部分に24時間換気を入れても、既存棟の全居室まで遡って設ける必要はない。

この緩和はホルムアルデヒドの技術的基準に限られる。クロルピリホスを含む法28条の2第1号と第2号の基準は、政令で定める範囲内の増築等を対象とする法86条の7第1項の側に置かれている。

建築基準法の外にある指針値

法28条の2第3号が縛るのはホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質だけで、室内空気の目安はもっと広い。厚生労働省が定める室内濃度指針値は13物質と、TVOC(総揮発性有機化合物量)の暫定目標値からなる。

ホルムアルデヒドは100μg/㎥(0.08ppm)で、1997年6月13日の設定から変わっていない。TVOCの暫定目標値は400μg/㎥。この値は国内家屋の実態調査から合理的に達成可能な限り低い範囲で決めたもので、毒性学の知見から導いたものではなく、個別のVOC指針値とは独立に扱うと注記されている。

2025年1月17日に動いたのがエチルベンゼンで、指針値が3,800μg/㎥から370μg/㎥(0.085ppm)へ10分の1近くまで下がった。厚生労働省は同日の中間報告書で、2026年3月末を目標に新指針値へ対応する取組を進めるよう関係者に求めている。F☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放散量に付く等級なので、この物質は等級表示では拾えない。

同じ検討会は2-エチル-1-ヘキサノールと2種類のトリメチルペンタンジオール系エステルの初期リスク評価も行い、いずれも現時点でリスクは高くないと判断した。

指針値は建築確認の審査項目ではない。確認が下りていることと、指針値を下回っていることは別の話になる。