外壁面が隣地境界線に対して斜めに振れている敷地では、1階の延焼ラインは3mから2.82m(角度30度)、2.59m(角度45度)まで縮む。2階以上は5mから4.69m、4.31mになる。令和2年2月27日に公布・施行された国土交通省告示第197号が、外壁面と隣地境界線等のなす角度で距離を計算する式を置いた。線が縮めば、防火構造の外壁と軒裏、20分間防火設備の窓を入れる範囲が減る。
線引きは材料の発注に直接効く。準防火地域の木造2階建てでは、延焼ラインの内側だけが防火構造の対象で、外側は一般の外壁で足りる。軒裏の防火被覆に何を使えるかは、外壁で使えるものとは範囲が違う。
延焼のおそれのある部分の起点
法2条6号は、隣地境界線、道路中心線、同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線を「隣地境界線等」と呼び、そこから1階3m以下、2階以上5m以下の距離にある建築物の部分を延焼のおそれのある部分とする。同一敷地内でも、延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は1の建築物とみなすので、母屋と物置の間に中心線は生じない。
ただし書で2種類の部分が除かれる。イは防火上有効な公園、広場、川その他の空地や水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分。ロが角度による除外で、中身は告示197号にある。
告示197号は「隣地境界線等に面する外壁面」を基準にとる。どの外壁面が面するかは、隣地境界線等から鉛直方向に立ち上げた鉛直面に建築物を投影したとき、そこに含まれる外壁面という整理(平成30年改正法の質疑応答集)。隣地境界線等が複数の線分でできている場合は各線分を一つの隣地境界線等として扱い、曲線なら複数の線分に近似する。外壁面が湾曲しているときも、湾曲していない複数の外壁で構成される外壁面に近似して扱う。
角度で決まる距離
告示197号第1号イの式はこうなる。
d = max{D, A(1 − 0.000068θ²)}
dが隣地境界線等からの距離(m)、θが外壁面と当該隣地境界線等とのなす角度のうち最小のもの(度。平行なら0度)。DとAは階の区分で決まる。
| 記号 | 1階 | 2階以上 |
|---|---|---|
| D(下限となる距離) | 2.5m | 4m |
| A(角度0度のときの距離) | 3m | 5m |
式に角度を入れると、こうなる。
| 外壁面と隣地境界線等のなす角度 | 1階のd | 2階以上のd |
|---|---|---|
| 0度(平行) | 3.00m | 5.00m |
| 15度 | 2.95m | 4.92m |
| 30度 | 2.82m | 4.69m |
| 45度 | 2.59m | 4.31m |
| 60度 | 2.50m | 4.00m |
| 90度(直交) | 2.50m | 4.00m |
1階は角度が約50度、2階以上は約54度を超えるとDに当たって下限で止まる。縮む幅は1階で最大0.5m、2階以上で最大1mにとどまる。15度や30度の振れではほとんど変わらない。
計算は隣地境界線等ごとに行い、出てきた部分を合わせたものが延焼のおそれのある部分になる。2つの隣地境界線に囲まれた1階建てで、一方が30度、他方が45度なら、それぞれ2.82mと2.59mで線を引く。
同一敷地内の建築物相互の中心線については、面する他の建築物の主要構造部が耐火構造や準耐火構造であるなど令で定める基準に適合する場合に限り、高さ方向の除外(第1号ロのhの式)が上乗せされる。hは他の建築物の高さhlow、その高さの区分で決まるH(5m未満なら5、5m以上なら10)、建築物から隣地境界線等までの最小距離S、イで計算したdの最大値dfloorから求める。質疑応答集の例では、他の建築物が準耐火構造で高さ6mのとき、hは20mを超える値になる。2階建てや3階建てでこの緩和が効く場面は限られる。
告示197号にかかわらず、従前の3mと5mをそのまま適用してもよい。適用するかは任意。ただし告示で計算した場合は、確認申請の各階平面図や2面以上の立面図に示す延焼のおそれのある部分について、計算した内容も含めて明示する必要がある。図書に書ききれないときは計算内容を別途添付する。
地域と規模で分かれる要求
防火地域と準防火地域で何が要るかは、法61条1項を受けた令136条の2が5つの区分で定める。各区分にイとロがあり、イが仕様で決める道、ロが延焼防止時間で決める道。
特定主要構造部:主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分(法2条9号の2イ)。
| 地域 | 規模 | イのルートで求められるもの | 区分 |
|---|---|---|---|
| 防火地域 | 階数3以上、又は延べ面積100㎡超 | 特定主要構造部を耐火構造等とし、延焼のおそれのある部分の外壁開口部に防火設備 | 1号 |
| 防火地域 | 階数2以下かつ延べ面積100㎡以下 | 主要構造部を準耐火構造等とし、外壁開口部に防火設備 | 2号 |
| 準防火地域 | 地階を除く階数4以上、又は延べ面積1500㎡超 | 1号と同じ | 1号 |
| 準防火地域 | 地階を除く階数3で延べ面積1500㎡以下、又は地階を除く階数2以下で延べ面積500㎡超1500㎡以下 | 2号と同じ | 2号 |
| 準防火地域 | 地階を除く階数2以下で延べ面積500㎡以下の木造建築物等 | 延焼のおそれのある部分の外壁と軒裏を防火構造、外壁開口部設備を20分間防火設備 | 3号 |
| 準防火地域 | 同じ規模で木造建築物等以外 | 外壁開口部設備を20分間防火設備 | 4号 |
| 防火地域・準防火地域 | 高さ2mを超える門又は塀(防火地域は建築物に附属するもの、準防火地域は木造建築物等に附属するもの) | 延焼防止上支障のない構造 | 5号 |
外壁と軒裏を部位として名指しで防火構造にせよと書いてあるのは3号だけ。1号と2号では特定主要構造部や主要構造部を耐火構造・準耐火構造とする要求の中に外壁と軒裏が含まれる。高さ2m以下の門や塀、準防火地域の非木造建築物に附属する門や塀は法61条1項ただし書で対象外。
ロの延焼防止時間のルートを使うと、外壁と窓の性能を上げる代わりに内側の柱やはりに木を見せられる。仕様は令和元年国土交通省告示第194号にあり、1号ロについては地階を除く階数3以下、延べ面積3000㎡以下(一戸建ての住宅は200㎡以下)、各階の外壁の開口部の面積の割合が隣地境界線等までの水平距離に応じた上限以下、といった条件が前提になる。
外壁と軒裏に求められる時間
同じ「延焼のおそれのある部分の外壁」でも、求められる時間は法令の区分で違う。
| 区分 | 部位 | 求められる性能 |
|---|---|---|
| 防火構造(法2条8号、令108条) | 耐力壁である外壁 | 加熱開始後30分間、構造耐力上支障のある変形や溶融、破壊その他の損傷を生じない |
| 防火構造(同上) | 外壁と軒裏 | 加熱開始後30分間、屋内に面する加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない |
| 準防火性能(法23条、令109条の10) | 耐力壁である外壁 | 加熱開始後20分間、構造耐力上支障のある損傷を生じない |
| 準防火性能(同上) | 外壁 | 加熱開始後20分間、屋内に面する加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない |
| 準耐火構造(法2条7号の2、令107条の2) | 外壁(耐力壁) | 加熱開始後45分間、構造耐力上支障のある損傷を生じない |
| 準耐火構造(同上) | 軒裏(延焼のおそれのある部分) | 加熱開始後45分間、屋内に面する加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない |
| 準耐火構造(同上) | 軒裏と非耐力壁である外壁(いずれも延焼のおそれのある部分以外) | 同じ内容で30分間 |
準防火性能に軒裏の行がないのは、法23条が外壁だけを対象にしているため。軒裏の防火被覆が要るのは防火構造と準耐火構造の話になる。
軒裏には共通の逃げ道がある。令107条の2第2号と令108条2号の対象から「外壁によつて小屋裏又は天井裏と防火上有効に遮られているもの」が除かれる。外壁を小屋裏まで立ち上げて軒裏と縁を切れば、軒裏そのものの防火被覆は不要になる。
告示仕様で軒裏に使えない材料
防火構造の仕様は平成12年建設省告示第1359号にある。間柱と下地を不燃材料で造る場合と、不燃材料以外(木材)で造る場合で屋外側に使える防火被覆が分かれ、木下地のほうが厚みを求められる。鉄網モルタルは不燃材料の下地なら塗厚さ15mm以上、木下地なら20mm以上。
木下地の外壁で屋外側に使える防火被覆と、同じ告示が軒裏に認める防火被覆を並べると、3つの材料で扱いが分かれる。
| 屋外側の防火被覆 | 防火構造の外壁 | 防火構造の軒裏 |
|---|---|---|
| 塗厚さ20mm以上の鉄網モルタル又は木ずりしっくい | 使える | 使える |
| 木毛セメント板又はせっこうボードの上に厚さ15mm以上モルタル又はしっくいを塗ったもの | 使える | 使える |
| 土塗壁で塗厚さ20mm以上のもの(下見板を張ったものを含む) | 使える | 使える |
| モルタルの上にタイルを張ったもので厚さの合計25mm以上 | 使える | 使える |
| セメント板又は瓦の上にモルタルを塗ったもので厚さの合計25mm以上 | 使える | 使える |
| 厚さ12mm以上のせっこうボードの上に金属板を張ったもの | 使える | 使える |
| 厚さ25mm以上のロックウール保温板の上に金属板を張ったもの | 使える | 使える |
| 厚さ15mm以上の窯業系サイディング(中空部があるものは厚さ18mm以上かつ中空部を除く厚さ7mm以上) | 使える | 使えない |
| 厚さ12mm以上の硬質木片セメント板 | 使える | 使えない |
| 厚さ12mm以上の下見板(屋内側が塗厚さ30mm以上の土塗壁である場合に限る) | 使える | 使えない |
告示第二が軒裏の仕様を定める際、外壁の一覧から窯業系サイディングと硬質木片セメント板と下見板を除いている。軒裏を窯業系サイディングで納めるなら、告示仕様ではなく軒裏の防火構造として大臣認定(認定記号PC030RS)を取った製品を選ぶことになる。
屋内側の防火被覆は、木下地の場合に厚さ9.5mm以上のせっこうボード、厚さ75mm以上のグラスウールかロックウールを充填した上に厚さ4mm以上の合板や構造用パネル、パーティクルボード、木材を張ったもの、塗厚さ30mm以上の土塗壁、準耐火構造の告示(平成12年建設省告示第1358号)が定める一部の仕様が並ぶ。屋外側と屋内側の組み合わせで1セットになるので、片方だけ告示仕様にそろえても防火構造にはならない。
令和3年6月7日の国土交通省告示第513号は、認定実績が多く普及している仕様を告示に追加した。防火構造の外壁では、間柱と下地が木材で、屋外側が塗厚さ15mm以上の鉄網軽量モルタル(有機物量8%以下)、屋内側が厚さ50mm以上のグラスウール(かさ比重0.01以上)またはロックウール(同0.024以上)を充填した上に厚さ12mm以上のせっこうボードを張ったもの。すでに同じ内容で大臣認定を受けている製品については、確認申請で認定仕様との整合性を確認する手間がなくなった。
法22条区域の屋根と外壁
特定行政庁が防火地域と準防火地域以外の市街地について指定する区域(法22条1項の区域)では、屋根に火の粉対策が要る。技術的基準は令109条の9で、火の粉により防火上有害な発炎をしないこと、屋内に達する防火上有害な溶融や亀裂その他の損傷を生じないこと。
仕様は平成12年建設省告示第1361号が、防火地域と準防火地域の屋根と同じ構造でよいと定める。中身は平成12年建設省告示第1365号第一の3つ。
- 不燃材料で造るか、又はふくこと
- 屋根を準耐火構造とすること(屋外に面する部分を準不燃材料で造ったものに限る)
- 屋根を耐火構造(屋外に面する部分を準不燃材料で造ったもので、かつ勾配が水平面から30度以内のものに限る)の屋外面に、断熱材と防水材を張ったものとすること
3つめの断熱材には上限がある。ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォームその他これらに類する材料で、厚さの合計50mm以下。防水材はアスファルト防水工法、改質アスファルトシート防水工法、塩化ビニル樹脂系シート防水工法、ゴム系シート防水工法、塗膜防水工法のいずれか。陸屋根の外断熱で断熱材を厚く積む設計は、この仕様から外れる。
2つの基準のうち第1号だけを満たせばよい屋根もある。不燃性の物品を保管する倉庫その他これに類するものとして大臣が定める用途に供し、かつ火の粉が屋内に到達しても火災が発生するおそれのないものとして大臣が定めた構造方法を用いる場合で、この屋根は難燃材料で造るかふくことでも足りる。茶室、あずまや、延べ面積10㎡以内の物置や納屋などは、屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分について法22条1項の適用を受けない。
法22条区域の外壁は法23条が主要構造部の一定部分が木材やプラスチックなど可燃材料で造られた建築物(木造建築物等)に限って規制し、延焼のおそれのある部分を準防火性能のある構造にする。仕様は平成12年建設省告示第1362号で、防火構造とするほか、次のものが挙がる。
- 塗厚さ30mm以上の土塗真壁造で、土塗壁と間柱や桁との取合いの部分にちりじゃくりを設けるなど、内部への炎の侵入を有効に防止できる構造としたもの
- 屋内側にせっこうボード9.5mm以上、又は厚さ75mm以上のグラスウールかロックウールを充填した上に厚さ4mm以上の合板、構造用パネル、パーティクルボード、木材を張り、屋外側を土塗壁、準不燃材料の下地に亜鉛鉄板を張ったもの、せっこうボードや木毛セメント板(準不燃材料で表面を防水処理したものに限る)、アルミニウム板張りペーパーハニカム芯パネルのいずれかとしたもの
延べ面積が1000㎡を超える木造建築物等には、地域の指定に関係なく法25条が働く。外壁と軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、屋根を法22条1項の構造にする。同一敷地内に2以上の木造建築物等があれば延べ面積を合計して判定する。
開口部と門と塀
外壁の開口部で延焼のおそれのある部分には防火設備が要る。防火設備は防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備(令109条1項)。求められる遮炎性能は2種類あり、厳しいほうが法2条9号の2ロの防火設備で、加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さないこと(令109条の2)。準防火地域の階数2以下500㎡以下で使う20分間防火設備は、火炎を出さない対象が屋内に面する面に限られる。
開口部を物理的に遮る手も認められている。隣地境界線や道路中心線、外壁間の中心線のあらゆる部分で、開口部から1階3m以下、2階以上5m以下の距離にあるものと開口部とを遮る外壁、袖壁、塀その他これらに類するものは、防火設備とみなされる(令109条2項)。袖壁を立てて窓の防火設備を省く判断は、ここが根拠になる。
高さ2mを超える門と塀の仕様は令和元年国土交通省告示第194号第七にある。門は不燃材料で造るか覆うこと、または道に面する部分を厚さ24mm以上の木材で造ること。塀は不燃材料で造るか覆うこと、厚さ24mm以上の木材で造ること、塗厚さ30mm以上の土塗真壁造(表面に木材を張ったものを含む)のいずれか。準防火地域の木造建築物等に附属するものは、その門や塀が建築物の1階であるとした場合に延焼のおそれのある部分に当たる範囲に限って適用される。門や塀があることで本体の建築物に延焼のおそれのある部分が新たに生じることはない、というのが国土交通省の整理。
防火地域では別に法64条が働く。建築物の屋上に設ける看板や広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物、または高さ3mを超えるものは、主要な部分を不燃材料で造るか覆う。
準防火地域で3階建てを木造にする
準防火地域の地階を除く階数3で延べ面積500㎡以下の建築物は令136条の2第2号に入り、イのルートでは主要構造部を準耐火構造にすることになる。木造で建てる場合、告示194号第四第一号イの仕様ルートがある。
外壁は準耐火構造とするか、防火構造としたうえで屋内側に防火被覆を足す。足す被覆は厚さ12mm以上のせっこうボード、厚さ5.5mm以上の難燃合板か厚さ9mm以上のせっこうボードの上に厚さ9mm以上のせっこうボードを張ったもの、厚さ7mm以上のせっこうラスボードの上に厚さ8mm以上のせっこうプラスターを塗ったもののいずれか。防火被覆の取合いや目地の部分は、裏面に当て木を設けるなど外壁の内部への炎の侵入を有効に防止できる構造にする。
開口部には面積の制限が立つ。隣地境界線等や道路中心線から水平距離5m以下にある開口部について、基準面への投影面積を距離の区分ごとの数値で除し、その合計が1を超えないこと。
| 隣地境界線等又は道路中心線からの水平距離 | 投影面積を除する数値 |
|---|---|
| 1m以下 | 9 |
| 1mを超え2m以下 | 16 |
| 2mを超え3m以下 | 25 |
| 3mを超え4m以下 | 36 |
| 4mを超え5m以下 | 49 |
法2条9号の2ロの防火設備で一定の要件を満たすものか、はめごろし戸を設けた開口部以外は、投影面積を1.5倍として計算する。境界に近い面に大きな引き違いを並べると合計が1を超えるので、窓の位置と種類を早い段階で固める必要がある。外壁面の投影長さが10mを超える場合は、10m以内ごとに区分して算定する。
敷地が地域をまたぐとき
建築物が防火地域または準防火地域と、指定のない区域にわたる場合は、全部について厳しい側の規定を適用する(法65条1項)。防火地域と準防火地域にわたる場合は全部に防火地域の規定(同2項)。例外は防火壁で区画した場合で、防火地域または準防火地域の外で区画すれば、防火壁の外側にはその規定が及ばない。2項の場合は防火壁の外側に準防火地域の規定が適用される。
確認先: 隣地境界線等の捉え方と図書への明示は国住指第3958号(令和2年2月27日)、個別の計画への告示仕様の当てはめは特定行政庁と指定確認検査機関。



