省エネ改修で補助金を受けた工事でも、所得税の住宅特定改修特別税額控除は使える。控除の基礎になるのは実際に払った工事費ではない。基礎は標準的な工事費用相当額(平成21年経産省・国交省告示第4号が工事ごとに決めた単価から計算する額)で、国税庁はここから「補助金等の交付を受ける場合はその額を控除した額」を対象とする。引いた後が50万円を超えなければ、控除額はゼロになる。

内窓の単価は4〜7地域で家屋の床面積1㎡あたり8,100円。床面積100㎡の住宅で窓の8割に内窓を入れても648,000円で、先進的窓リノベ2026事業で性能区分P(SS)の内窓6か所分の補助額を引くと、下限の50万円を割る。

省エネ改修で使える2つの控除

両方の要件を満たすときは、どちらか一方を選ぶ。国税庁は住宅特定改修特別税額控除を適用して確定申告書を提出した場合、その後も選択替えはできないとしている。適用しなかった場合も同じ。

項目 住宅特定改修特別税額控除(省エネ改修) 住宅借入金等特別控除(増改築等)
ローン 不要。自己資金でも使える 償還期間10年以上の借入金が必要
控除の基礎 標準的な工事費用相当額(告示単価、補助金等を控除後) 年末残高と増改築等の額(補助金等を控除後)のうち少ない方
控除率 10%(限度超過分と併せて行う増改築等の費用は5%) 0.7%
控除額の上限 10%部分は25万円(太陽光発電設備設置工事を含む場合35万円)。5%部分は別枠 年14万円
控除期間 工事をして居住した年の1年だけ 10年
工事費の下限 補助金等控除後に50万円超 補助金等控除後に100万円超
合計所得金額 2,000万円以下 2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満は1,000万円以下)
床面積 50㎡以上(令和8年1月1日以後の居住は40㎡以上50㎡未満も可、合計所得1,000万円以下) 50㎡以上(特例で40㎡以上50㎡未満も可)
居住の時期 工事の日から6か月以内に居住 増改築等の日から6か月以内に居住
居住用部分 工事費用の2分の1以上が自己の居住用部分。床面積の2分の1以上を自己の居住用 床面積の2分の1以上を専ら自己の居住用
適用期限 令和10年12月31日までに居住 令和12年12月31日までに居住

住宅特定改修特別税額控除の5%部分の対象額は、(1)10%の対象限度額を超える部分の額と、併せて行った一定の増改築等の費用の額(補助金等の交付がある場合は控除後)の合計額、(2)標準的な工事費用相当額、のいずれか低い金額になる。1,000万円から10%の対象額を引いた額が限度で、10%の対象額が250万円なら5%部分は最大37万5千円。

併せて行う一定の増改築等は、租税特別措置法施行令26条33項の第1号から第6号工事。増築や改築、建築基準法の大規模の修繕と模様替え、区分所有部分の一定の修繕、居室や浴室などの床または壁の全部の修繕、新耐震基準に適合させる修繕、一定のバリアフリー改修がこれに当たる。全ての居室の全ての窓の断熱改修(6号工事)は、省エネ改修の控除を使う場合は対象から外れる。

同じ住宅で前年以前3年内にこの控除(窓を中心とする一般省エネ改修工事)を受けている場合は適用できない。

控除の基礎になる告示単価

断熱改修は「単価 × 家屋の床面積の合計 × 施工した窓面積の割合」で計算する。割合は、外気に接する窓のうち該当工事を行った面積の合計を、外気に接する全ての窓の面積の合計で割った値。窓以外の部位は、改修工事に係る部分の床面積にそのまま単価を掛ける。令和7年1月1日以降に工事を完了して居住する場合の単価は次のとおり。

断熱改修の内容 単位あたりの金額(税込) 単位
ガラスの交換(1〜8地域) 6,300円 家屋の床面積の合計(㎡)× 施工割合
内窓の新設又は交換(1・2・3地域) 11,300円 同上
内窓の新設(4・5・6・7地域) 8,100円 同上
サッシ及びガラスの交換(1・2・3・4地域) 19,000円 同上
サッシ及びガラスの交換(5・6・7地域) 15,000円 同上
天井等の断熱(1〜8地域) 2,700円 改修部分の床面積(㎡)
壁の断熱(1〜8地域) 19,400円 改修部分の床面積(㎡)
床等の断熱(1・2・3地域) 5,800円 改修部分の床面積(㎡)
床等の断熱(4・5・6・7地域) 4,600円 改修部分の床面積(㎡)
太陽熱利用冷温熱装置(冷暖房等及び給湯用、JIS A4112適合) 151,600円 集熱器面積(㎡)

設備の設置工事は台数か出力数で計算する。

設備設置工事の内容 単位あたりの金額(税込) 単位
太陽熱利用冷温熱装置(給湯用、JIS A4111適合) 365,400円 件(台)
潜熱回収型給湯器 49,700円 件(台)
ヒートポンプ式電気給湯器 412,200円 件(台)
燃料電池コージェネレーションシステム 789,800円 件(台)
ガスエンジン給湯器 適用外 適用外
エアコンディショナー 134,400円 件(台)
太陽光発電設備 425,500円 太陽電池モジュールの出力数(kW)
太陽光の安全対策工事 37,600円 出力数(kW)
太陽光の陸屋根防水基礎工事 55,500円 出力数(kW)
太陽光の積雪対策工事 27,800円 出力数(kW)
太陽光の塩害対策工事 9,000円 出力数(kW)
太陽光の幹線増強工事 106,800円 件

窓の断熱改修は必須工事。床、壁、天井の断熱改修も、太陽熱利用冷温熱装置や給湯器、エアコン、太陽光発電設備の設置工事も、窓の断熱改修と併せて行ったものが対象になる。給湯器やエアコンの設置だけでは控除の対象にならない。改修後の断熱部位がいずれも平成28年基準(平成28年省エネ基準)を新たに満たすことが要件になる。地域区分は平成28年国土交通省告示第265号別表第10による。

窓の断熱改修として認められる熱貫流率の基準値は、1〜3地域が2.3、4地域が3.5、5〜7地域が4.7(いずれも1平方メートル1度につきワット)。この値以下であることが条件になる。8地域の欄に熱貫流率の基準値は置かれていない。

窓の日射遮蔽性を高める工事は、一戸建てなら開口部の日射熱取得率0.53以下、ガラスの日射熱取得率0.66以下、付属部材を設けるもの、ひさしや軒等を設けるもののいずれか。共同住宅等と複合建築物の住宅部分は、北から±22.5度以外の方位に設置された開口部が、日射熱取得率0.52以下、ガラスの日射熱取得率0.65以下、付属部材、ひさしや軒等のいずれかに該当することが条件。

屋根または天井、壁、床、基礎の断熱改修には、告示に3つの基準表がある。外皮の熱貫流率が基準値以下となるもの、断熱材の熱抵抗が基準値以上であるもの、外壁は断熱材の熱抵抗が建築物の種類と外装材の有無と地域区分に応じた基準値以上であるもの。熱貫流率と熱抵抗の基準値は、建築物の種類、構造や構法、部位、断熱材の施工法(内断熱、外断熱、両面断熱、充填断熱、外張断熱、内張断熱)、地域区分の組み合わせごとに決まる。外壁の表はさらに外装材の熱抵抗と、断熱層を貫通する金属部材の有無で分かれる。

断熱材を重ねる部位は合計値で見る。鉄筋コンクリート造の両面断熱は室外側と室内側の熱抵抗の合計値を両面断熱の基準値に当て、木造で充填断熱と外張断熱を併用した部位は外張部分と充填部分の合計値を充填断熱の基準値に当てて判定する。床の外気に接する部分のうち、単位住戸の床面積の合計に0.05を掛けた面積以下の部分は、その他の部分とみなせる。

補助金を引く順序

告示単価で出した額から補助金等を引き、残った額に控除率を掛ける。手順は5段階。

順 やること
1 告示の単価と単位で工事の内容ごとに金額を出し、合計して一般省エネ改修工事の標準的な費用の額とする
2 その合計額から、工事の費用に対して交付される補助金等の額を引く
3 引いた後の額が50万円を超えるか判定する。超えなければ適用なし
4 引いた後の額のうち250万円(太陽光発電設備設置工事を含む場合350万円)までに10%を掛ける
5 限度を超える部分の額と併せて行った一定の増改築等の費用(補助金等控除後)の合計額、または標準的な工事費用相当額の低い方に5%を掛ける。1,000万円から10%の対象額を引いた額が限度
6 10%分と5%分のそれぞれで100円未満の端数を切り捨てて合計する

長期優良住宅化改修の控除を使う場合も同じで、耐震改修、省エネ改修、耐久性向上改修のそれぞれについて、標準的な工事費用相当額から補助金等を引いた額が50万円を超えていることが要件になる。10%の控除対象限度額は、耐震と耐久性向上の組み合わせで250万円、省エネと耐久性向上で250万円(太陽光発電設備設置工事を含む場合350万円)、耐震と省エネと耐久性向上の3つで500万円(同600万円)。

内窓と窓リノベを組み合わせた場合

6地域の戸建、床面積100㎡、外気に接する窓のうち面積で8割に内窓を新設した場合の計算例。

計算 金額
標準的な工事費用相当額(8,100円 × 100㎡ × 0.8) 648,000円
先進的窓リノベ2026事業の補助額(戸建の内窓、性能区分P(SS)の中サイズ 58,000円 × 6か所) 348,000円
差引後 300,000円
判定 50万円以下で住宅特定改修特別税額控除の適用なし

この条件では、補助金が148,000円以上になると控除は残らない。窓リノベの内窓の補助額は性能区分(P(SS)とS)とサイズ区分(特大、大、中、小)の組み合わせで決まる定額で、戸建の表はP(SS)が特大140,000円から小36,000円、Sが特大76,000円から小22,000円。低層と中高層の集合住宅は別の表で、P(SS)が特大152,000円から小40,000円。戸建でP(SS)なら中サイズ3か所でも50万円の下限を割る。

窓リノベ側にも金額の線がある。補助の対象になるのは1申請あたりの補助額の合計が5万円以上の工事で、補助上限は住宅1戸あたり100万円。内窓の設置は1箇所22,000円から152,000円の幅に収まる。

実費を基礎にする住宅借入金等特別控除では、判定の線が変わる。増改築等の額から補助金等を引いた後に100万円を超えていればよく、控除の基礎も実費と年末残高の少ない方で、告示単価は関係しない。

補助金そのものの課税

個人が受けた補助金は一時所得に当たる。一時所得は「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)」で計算し、その2分の1を他の所得と合計して税額を出す。

先進的窓リノベ2026事業のFAQは、補助金が所得税法42条1項(国庫補助金等の総収入金額不算入)の国庫補助金等に該当するので、所定の手続きで所得への算入から除外できる場合があるとしている。不算入にした場合、その資産の取得価額は実際の取得費から不算入にした補助金の額を引いた額になる。手続きは、確定申告書に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付して所轄税務署に提出する。FAQは、住宅ローン減税等を併用する場合に住宅の取得価格等から補助金を控除する必要があるとも書いている。交付決定通知書は申告で提出を求められる場合があるため保管対象になる。

法人が受けた場合は収入に該当する。同じFAQは、圧縮記帳(補助金の分だけ資産の取得価額を減らして課税を先送りする経理処理)の対象にできる場合があるとしている。

確定申告で出す書類

書類 発行元
確定申告書 申請者
住宅耐震改修特別控除額・住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書 申請者
増改築等工事証明書 一級・二級・木造建築士(登録された建築士事務所に属する者)、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれか
床面積が50㎡以上、または40㎡以上50㎡未満であることを明らかにする書類 法務局(登記事項証明書)
補助金等の金額が明らかな書類 補助事業の事務局(交付決定通知書等)
国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書(不算入を使う場合) 申請者

登記事項証明書は、計算明細書への不動産番号の記載または写しの添付で代えられる。増改築等工事証明書の発行元は上の4者に限られ、標準的な工事費用相当額と太陽光発電設備設置工事の有無もこの証明書で確認する形になる。

国の他の補助制度との併用

先進的窓リノベ2026事業のFAQは、住宅(外構を含む)のリフォーム工事を対象とする国の他の補助制度との併用はできないとしている。例外は、各事業で対象とするリフォーム工事の請負工事契約が別になっている場合で、制度によっては工期も別であることを併用の要件にしている。住宅省エネ2026キャンペーンの4事業(みらいエコ住宅2026、先進的窓リノベ2026、給湯省エネ2026、賃貸集合給湯省エネ2026)どうしは、補助対象が重複しなければ併用できる。こちらは同一の工事請負契約と工期でも併用できると交付申請の要件に書かれている。

過去の住宅省エネキャンペーン(2023、2024、2025)で交付を受けた開口部に行う改修工事は、窓リノベ2026の補助対象にならない。