三点照合:注文書、納品書、請求書の三つを突き合わせて、頼んだ物がその通り届き、その分だけ請求されているかを確かめる作業。これを機械にやらせようとするとき、最初に効いてくるのは読み取り精度ではない。電子帳簿保存法が、この三つを同じ区分に置いていないことだ。
注文書は入力期限のない一般書類で、受け取った納品書と請求書は入力期限の付く重要書類。同じ案件の伝票なのに、スキャンして紙を捨てるまでの猶予が片方だけ無期限になる。2027年1月1日には、PDFをOCRで読んで抜いたデータでは要件を満たせない優遇措置が始まる。
重要書類と一般書類の分かれ目
国税庁の一問一答(令和8年7月)は、スキャナ保存の対象書類を重要度で三段に分けている。三点照合で扱う伝票は、この分け方で二つに割れる。
| 区分 | 該当する伝票 | 入力の期限 |
|---|---|---|
| 重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類のうち特に重要) | 契約書、領収書 | 速やかに、または業務サイクル後速やかに |
| 重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類) | 請求書、受け取った納品書、送り状、約束手形 | 速やかに、または業務サイクル後速やかに |
| 一般書類(資金や物の流れに直結・連動しない書類) | 注文書、見積書、検収書、入庫報告書、貨物受領証、自己が作成した納品書の写し | 適時(期限なし) |
「速やかに」はおおむね7営業日以内を指す。各事務の処理に関する規程を定めていれば、業務サイクル(取扱通達4-18で最長2か月)を経過した後おおむね7営業日以内まで延びる。一般書類にはこの制限が丸ごとかからず、過去に受け取った分をあとからまとめてスキャンしてもよい。
要件も区分で変わる。重要書類と一般書類の両方に200dpi以上の解像度、ヴァージョン管理(訂正または削除の事実と内容の確認)、検索機能、システム関係書類の備付けが要る。分かれるのは次の3つ。
| 要件 | 重要書類 | 一般書類 |
|---|---|---|
| カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調以上) | 必要 | グレースケールで可 |
| スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 | 必要 | 不要 |
| 14インチ以上のカラーディスプレイなど見読可能装置の備付け | 必要 | カラーでなくて可 |
タイムスタンプは、記録事項を入力したことを確認できる場合にその確認で代えられる。重要書類では、入力期間内に入力したことの確認であることが条件になる。訂正削除の履歴が全て残るクラウド、または利用者側では訂正削除できないクラウドが、その受け皿になる。タイムスタンプを使う場合、一般書類には入力期限がなくても、作成または受領後おおむね7営業日以内(規程があれば業務サイクル経過後おおむね7営業日以内)に付すか、その期間を過ぎた分は正しく読み取られたことを確認した都度付す。
紙を残す期間は短くて済む。読み取ったデータと紙の記載を比べて同等であること(折れ曲がりの有無を含む)を確認した後なら、紙は即時に廃棄してよい。ただし入力期間を過ぎてしまった場合は、データと合わせて紙も保存することになる。収入印紙を貼った契約書も、貼付後に読み取って同等確認をすれば紙は捨てられる。印紙税の過誤納還付の申請には原本の提示が要るので、そこだけはスキャナデータで代えられない。
検索で求められる3項目
法令が検索の条件として設定できるよう求めているのは3つしかない。取引年月日その他の日付、取引金額、取引先。品番も数量も単価も入っていない。
照合に使う項目と、保存の要件として並べる項目は別物だ。一問一答は、スキャナで読み取った画像をテキスト化する機能が無い場合でも、日付と金額と取引先を手入力すれば検索要件を満たすとしている。読み取り精度は、保存要件の側では問われない。
日付と金額の範囲指定、2項目以上の組み合わせ検索も要件に入るが、税務職員によるダウンロードの求めに応じられるようにしていれば不要になる。一覧表を作ってファイル名と対応させる索引簿方式でもよく、スキャナ保存と電子取引で同じ索引簿を兼ねられる。
建材で問題になるのは粒度だ。1か月分の取引をまとめて記載した納品書について、一問一答(問42)は、個々の取引日で検索できるようにしてもよいし、書類の発行または受領の年月日で検索できるようにしてもよいとしている。条件は、その扱いが各課税期間で自社の一貫した規則性を持っていること。
そして金額の粒度は日付の粒度に従う。日付を個々の取引日で取るなら金額も個々の取引金額で、日付を書類の発行日で取るなら金額はその書類の合計額で検索できるようにする。片方だけ細かくする組み合わせは通らない。三点照合の突合単位を伝票行にするか伝票にするかは、ここで先に決まる。
税抜と税込は帳簿の処理方法に合わせるのが基本で、受け取った書類に書かれている金額をそのまま記録項目にしても差し支えない。単価契約のように金額の記載がない書類は、空欄または0円と設定してよい。空欄にするなら、空欄であることを対象に検索できる必要がある。
品番を社内コードに置き換えるとき
メーカー品番を社内コードに直してから保存する処理は、EDIで受け取ったデータについて一問一答(電子取引関係の問41)が正面から扱っている。あらかじめ定めた変換テーブルを使い、内容を変えずコードの表記だけを変えるのは合理的な編集にあたる。
条件は2つ。コード変換が自動で行われること(手動は不可)と、変換テーブルを併せて保存しておくこと。目視の手入力が挟まると意図せず内容が変わるおそれがあるとして、そこで線が引かれている。相手から受け取ったデータを要件どおりそのまま保存しておき、複製を加工して使う方法でも構わない。
XML形式でやり取りしたデータを一覧表としてエクセル形式に変換して保存するのも、取引内容が変更されない限り認められる。ここでも手作業の転記は合理的な編集に当たらない。品番の対応表を人が打ち直して回している運用は、保存の側から見ると別のデータを作っていることになる。
メールやPDFで届く請求書
取引先からメールで届く請求書は電子取引データで、紙に出して保存する道は令和3年度の改正で閉じている。改ざん防止の措置として使えるのは4通り。
- 送信側でタイムスタンプが付されたデータを受け取る
- 受け取った側が速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正削除の履歴が残る、または訂正削除ができないシステムで授受と保存を行う
- 正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する
3番目は保存だけそのシステムで行っても足りない。データの授受も同じシステム内で行う必要がある。クラウド上に一時保存されたデータをダウンロードして自社に持ってくる形は、これに当たらない。保存サービスの提供者との契約でデータ訂正を防ぐ方式は、4番目の規程を定める方法として認められる。
検索機能は、個人事業者なら前々年、法人なら前々事業年度の売上高が5,000万円以下であれば不要になる。出力した書面を取引年月日その他の日付と取引先ごとに整理して提示または提出できるようにしている場合も同じ。いずれもダウンロードの求めに応じられることが前提で、この売上高には営業外収入や雑収入が入らない。
要件どおりに保存できなかったことについて所轄税務署長が相当の理由があると認め、データと出力書面の提示または提出に応じられるなら、要件を満たさない保存も許される。この猶予措置でも、データの保存に代えて紙で保存することは認められない。
請求書を待たずに支払う型
三点照合の答えを買い手側で作ってしまう道もある。仕入税額控除に必要な請求書等には、仕入れた側が作成する仕入明細書が含まれる。検収データから支払額を確定し、それを仕入先に示す支払通知の形だ。
記載事項は6つ。作成者の氏名または名称、課税仕入れの相手方の氏名または名称および登録番号、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産または役務の内容、税率ごとに合計した支払対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等。登録番号は相手方のものを載せる。
条件は相手方の確認を受けたものであること。国税庁が挙げる確認の方法は3通りで、記載内容を相手方の端末に出力して確認の通信を受ける、電磁的記録をメール等で提供して確認の通知を受ける、写しまたは電磁的記録を提供したうえで一定期間内に誤りの連絡がなければ確認があったものとする基本契約を結んでおく。
3番目は、仕入明細書に「送付後一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする」と記載して相手方の了承を得る形でもよい。一定期間の具体的な日数まで表示することは求められないが、業務の内容と取引先との関係を踏まえて認識を合わせることが求められる。記載事項を記録した電磁的記録の保存でも、保存要件を満たす。
2027年1月に変わること
電子取引データに関連する隠蔽や仮装があった場合、重加算税は10%加重される。令和7年度の税制改正で、この加重措置から外れる仕組みが電子帳簿保存法に入り、法第8条第5項として2027年1月1日に施行される。
外れるのは、国税庁長官が定める基準に適合するシステム(特定電子計算機処理システム)を使い、規則第5条第5項の各号を満たして送受信と保存を行った電子取引データ。令和7年国税庁告示第2号が定めた基準は次の2つで、どちらか一方に対応できていればシステム側の条件は満たす。
| 告示の号 | 対象データ |
|---|---|
| 第1号 | デジタル庁が管理するJP PINTのうち「Peppol BIS Standard Invoice JP PINT」(適格請求書に対応)または「JP BIS Self-Billing Invoice」(仕入明細書に対応)に従い、PeppolネットワークでやりとりされたXML形式のデータ |
| 第2号 | 預金者または貯金者の委託を受けて金融機関等が行う為替取引の取引情報(他者口座からの入金データ、自らの口座からの出金データ) |
JP PINTに従ったXMLでも、メールに添付して提供されたものは第1号に当たらない。Peppolネットワークを通ったことが条件になる。デジタル庁は日本のPeppol管理局として3つの仕様を公開しており、Peppol BIS Standard Invoice JP PINT、JP BIS Self Billing Invoice、JP BIS Invoice for Non-tax Registered Businessesはいずれも2026年6月8日にVer.1.1.3へ更新された。
OCRで抽出したデータは、この措置の要件を満たさない。 テキスト埋込形式のPDFと画像形式のPDFは、規則第5条第5項第2号を満たすためにOCR等で読み取ってデータを抽出する必要があり、その方法は抽出したデータが取引内容を反映しているかの確認と補正が前提になる。確認と補正が入る以上、取引内容の変更可能性があるため合理的な方法による編集の範囲に収まらない、という理由づけだ。データ添付形式のPDFなら、添付されたXML等からそのまま帳簿に記録するので要件を満たす。
システムをまたぐ連携にも同じ線が引かれている。証憑管理ソフトから帳簿作成ソフトへのAPI連携、ファイル転送、DB連携、CSV連携は、連携された金額を訂正削除したうえで帳簿に記録できない仕組みであれば要件を満たす。人がCSVファイルをエクスポートして別のソフトにインポートする運用は、その過程で手作業の訂正削除ができるため満たさない。ECサイトのマイページからAPI連携で取ったデータを担当者が手動で登録し直す形も同じ扱いになる。
連携先の帳簿に求められる水準は高くない。帳簿とデータの相互関連性は要るが、訂正削除履歴や検索の要件は課されず、システムの説明書とディスプレイ等の備付けで足りる。証憑管理ソフトの中で売掛帳や仕入先元帳といった補助簿を作る形でもよい。
適用には届出が要る。法第8条第5項の適用を受けない旨を記載した届出書を、適用を受けようとする国税の法定申告期限までに納税地の所轄税務署長へ出す。要件を満たすために使っているシステムは全て書く必要があり、Peppolインボイスの発行と受領が別システムなら両方、証憑管理ソフトと帳簿作成ソフトが別なら両方が対象になる。事業所ごとにデータを保存していても、届出は法人が本店所在地の所轄税務署長に出す。
適用の判定は取引単位で行われる。課税期間の途中でシステムを導入した場合、導入後に保存する電子取引データから対象になる。その課税期間にPeppolインボイスの送受信が1件も無くても、そのシステムを使って要件どおり保存した他の電子取引データは対象に入る。
確認先: 電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(国税庁)、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁)、デジタルインボイス(JP PINT)(デジタル庁)



