鋼材や鉄筋を納めると付いてくる1枚を、現場は「ミルシート」と呼ぶ。公共工事の仕様書での呼び名は違う。公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の1.1.2が置く定義は、規格証明書:設計図書に定められた規格や基準に適合することの証明になる資料で、その規格や基準の制度で定められた者が発行したもの。鉄骨工事の7.2.10(2)は、JIS等の規定に適合する品質であることを証明する資料を規格品証明書とし、監督職員の承諾を受けた場合だけ他の資料に代えられるとする。

書類が効くのは材料の検査の場面だ。1.4.4(4)は、JISまたはJASのマーク表示のある材料と、規格証明書が添付された材料を、設計図書に定める品質及び性能を有するものとして取り扱えるとする。どちらも無い材料は、1.4.5の材料試験に回る。試験計画書を作って承諾を受け、監督職員の立会いで行い、結果を報告する手順になる。

検査文書の4区分

鋼材のミルシートの正体は、JIS G 0415(鋼及び鋼製品―検査文書)が定める検査文書だ。現行版は2024年6月20日発行で、国際規格ISO 10474:2013をもとに技術的内容を変更した規格になっている。鉄筋のJIS G 3112:2025も、引用規格にJIS G 0404(鋼材の一般受渡し条件)とJIS G 0415を挙げている。

記号 名称 もとになる検査 試験結果の記載 妥当性を確認する者
2.1 注文合格書 随時検査 なし 製造業者
2.2 試験報告書 随時検査 随時検査の結果 製造業者
3.1 検査証明書3.1 受渡検査 受渡検査の結果 製造部門から独立した、オーソライズされた検査代表者
3.2 検査証明書3.2 受渡検査 受渡検査の結果 上の検査代表者に加え、購入者の代表者または第三者の検査員

区分を分けているのは検査の種類だ。随時検査は、製造業者が自己の手順で、同一製造工程の製品が注文の要求に合格するかを検証する検査で、試験する製品は実際の出荷品と異なってもよい。受渡検査は、出荷品またはその試験単位に対して、受渡し前に製品規定に従って行う検査を指す。納めた材料そのものの実測値が要る場面では、2.2では足りず3.1か3.2になる。

製品規格の側に「3.1.B」と書かれている場合は、JIS G 0415の検査証明書3.1を指す。旧版にあった「受渡試験報告書2.3」は2.2に置き換わっている。どの区分の文書を出すかは、注文書の要求内容に従う。

ミルシートで照合する欄

欄 突き合わせる先
規格番号と年版 設計図書と注文書の指定。材料告示が指す年版とは別物
種類の記号 設計図書(SD345、SN490B など)
溶鋼番号・製造番号 現物のタグ、納品書、加工後の部材の記録
呼び名・寸法 注文書と拾い表
化学成分と炭素当量 規格値の上限。SD345からSD490は炭素当量の規定がある
降伏点または耐力、引張強さ、伸び、降伏比 構造計算の前提と規格値
検査文書の種類 注文書で指定した区分
責任者の地位、氏名、署名 発行者が製造業者本人か、中間業者の複製か

JIS G 0415は、すべての検査文書について責任ある者の妥当性確認を求め、その者の地位、氏名、署名またはマークの記載を要求する。ただし適正なデータ処理システムで作成する場合は署名を省略できる。電子で届くミルシートに手書きの署名が無いのは、この規定どおりの形だ。

JIS G 3112:2025では、注文者が提示する情報の箇条が新たに加わった。注文時に少なくとも種類の記号と径または呼び名を、製造業者、加工業者または中間業者に示す形になっている。

現物との照合

鉄筋は、ミルシートの種類の記号と現物の表示が合うかを見る。日本製鉄の建設用資材ハンドブック(2025年9月改訂版)の異形棒鋼では、鋼種確認マークは節の間の突起で表され、SD295は突起なし、SD345が1つ、SD390が2つ、SD490が3つ。鋼種識別色はSD295が無色、SD345が黄、SD390が緑、SD490が青で、製品長さ1.5mごとに幅30mmで表示する。呼び名を見分けるサイズ識別色は、同じ資料のタフネジバーではD13とD16が無色、D22・D29・D35・D41が白、D19・D25・D32・D38・D51がピンクで、製品ごとに決まっている。

二次製品では、原板のミルシートまで届かないことがある。日建連の鉄骨工事Q&A(A-1-3、2023年2月1日改訂)は、大臣認定品のBCP材について、工事監理者の指定が無ければ施工者が原板ミルシートの確認を行わない場合が多いとする。同じ資料が引く日本鉄鋼連盟製品規定MDCR 003-2017の13.報告では、角形鋼管の検査証明書に製造履歴が確認できる識別番号を載せることになっており、識別番号は鋼帯または鋼板の製造業者が発行する鋼材検査証明書の番号、製鋼番号、製造番号などを指す。番号を載せる目的は、素材製造業者の鋼材検査証明書との照合を可能にすることだ。主要構造部の鋼材に高炉材が指定されている場合や、電炉材を使うときの成分や機械的性質の確認規定が特記にある場合は、原板側のミルシートで仕様を満たすかを見る対象になる。成績書と原板のミルシートをセットで出すメーカーもあるが、要求しないと出てこない場合もある。

材料告示が指す年版

鉄筋、構造用鋼材及び鋳鋼、アルミニウム合金材は、いずれも建築基準法37条の指定建築材料だ。品質が大臣の指定するJISまたはJASに適合するか、大臣が定める技術的基準への適合について大臣認定を受けたものでなければ、基礎や主要構造部その他の重要な部分には使えない。

指定する規格を並べた材料告示の別表第一は、規格番号に年版を付けて書く。鉄筋はJIS G 3112の1987年版とJIS G 3117(鉄筋コンクリート用再生棒鋼)の1987年版、アルミニウム合金材は押出形材のJIS H 4100と板及び条のJIS H 4000がいずれも1999年版。令和5年12月の改正でアルミニウム合金材に加わった継目無管も、JIS H 4080の1999年版という形で入った。

材料 材料告示が指す年版 現行のJIS JISマーク表示認証で旧版を適用できた期限
鉄筋 JIS G 3112の1987年版 2025年版(令和7年4月21日改正) 2020年版は令和8年4月20日まで
アルミ押出形材 JIS H 4100の1999年版 2022年版(令和4年12月20日改正) 2015年版は令和5年12月19日まで

年版がずれると、記号そのものが変わる場面が出る。2020年版のJIS G 3112でSD295BとSD295Aが整理されSD295になった件について、登録認証機関のビューローベリタスジャパンは、確認申請図書にSD295Aと書かれていても納入品がSD295であれば1987年版のSD295Aの規定に適合するため材料変更とはみなされず、軽微な変更としての報告も要らないとしている。同じ解説は、1987年版に規定が無いSR785やSD590A以上の鋼種を基礎や主要構造部に使う場合、法37条第二号の大臣認定が要り、令第3章第8節を適用する建築物では基準強度の大臣指定も要るとする。

公共工事側の受け皿は1.4.2(7)だ。設計図書に定める規格等が改正された場合は1.1.8(疑義に対する協議等)によるとし、監督職員との協議と、訂正や変更に至らなかった事項の記録の整備に回す。

中間業者が渡す複製

JIS G 0415は、中間業者が交付する複製について、原本から修正も追加もせずに提出し、トレーサビリティを確保することを求める。社名や取引先ごとの押印を足す運用を取るとしても、原本の記載を書き換えず、番号から原本の検査文書までたどれる状態が規格の条件になる。

検査証明書3.1と3.2に、一次製品の受渡検査の試験結果を転記できるのは、トレーサビリティが確保され、要求されたときに一次製品の検査文書を用意できる場合に限られる。コイルから加工した製品や、原板から成形した鋼管の証明書で、素材側の番号が消えていると、この条件が崩れる。

アルミ建材の材料証明

アルミの材料証明で見る欄は合金番号と質別だ。質別記号はJIS H 0001(アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金の質別記号)が定め、JIS H 4100:2022も引用規格に挙げている。公共建築工事標準仕様書16.2.3は、アルミニウム製建具の押出形材をJIS H 4100、板材をJIS H 4000によるとし、それ以外は建具の製造所の仕様とする。

表面処理は材料の証明とは別の書類になる。14.2.1は種別ごとに規格と皮膜の種類を決めている。

種別 表面処理 規格 皮膜または複合皮膜の種類
AB-1種・AB-2種 無着色・着色の陽極酸化皮膜 JIS H 8601 AA15
AC-1種・AC-2種 無着色・着色の陽極酸化皮膜 JIS H 8601 AA6
BA-1種・BA-2種 無着色・着色の陽極酸化塗装複合皮膜 JIS H 8602 A2(過酷な環境の屋外)
BB-1種・BB-2種 無着色・着色の陽極酸化塗装複合皮膜 JIS H 8602 B(一般的な環境の屋外)
BC-1種・BC-2種 無着色・着色の陽極酸化塗装複合皮膜 JIS H 8602 C(屋内)
C種 化成皮膜の上に塗装 JIS H 4001 規定なし

発注前に固まっていないと後から変えられないのは、合金番号と質別、それに皮膜の種別だ。皮膜の着色方法は、特記が無ければ二次電解着色になる。

提出先ごとの書類

対象 出す書類 根拠
鉄骨の鋼材 規格品証明書。監督職員の承諾を受けて他の資料に代替可 7.2.10(2)
鉄筋 規格品証明書の明文は無く、品質及び性能を有することの証明となる資料 1.4.2(2)。試験で証明する場合の方法は5.2.3
JISまたはJASのマーク表示品 証明資料の提出は不要。あらかじめ監督職員の承諾を受けた場合も同じ 1.4.2(2)ただし書
マークも証明書も無い材料 試験計画書と試験結果の報告 1.4.5
板厚方向に引張力を受ける鋼板 超音波探傷試験の結果(JIS G 0901)。適用は特記 7.2.10(3)
検査で不合格になった材料 直ちに工事現場外へ搬出 1.4.4(3)

鉄筋について規格品証明書を名指しした条文は、鉄骨の7.2.10(2)に当たるものが置かれていない。マーク表示の無い鉄筋を使う案件では、1.4.2(2)の証明資料として検査証明書を取るか、1.4.5の材料試験に回るかに分かれる。