床鳴りの連絡と、火災の連絡では、動く先が違う。前者は売買や請負の契約の話で、相手はメーカーと商社に閉じる。後者は消費生活用製品安全法の事故報告の話になり、報告先は消費者庁で、期限も法律で決まっている。

分かれ目は二つある。人の被害か火災が出たかどうかと、その建材が消費生活用製品に当たるかどうか。後者は建材の種類でかなり割り切れる。

消費生活用製品に当たる建材、当たらない建材

消費生活用製品は「主として一般消費者の生活の用に供される製品(別表に掲げるものを除く。)」と定義される(消費生活用製品安全法2条1項)。除外される製品だけを別表で列挙するネガティブリスト方式で、別表に無ければ対象になる。製品:工業的プロセスを経た物であって、独自に価値を有し、一般消費者の生活の用に供される目的で販売されるもの。この定義から建築物と構築物は外れる。

消費者庁と経済産業省の事業者用ハンドブック2025は、建材まわりの線引きを製品名で示している。

建材や住宅設備 消費生活用製品か 理由
シャッター、窓、ドア 当たる 家屋に設置されるものでも一つの製品として流通し、ショールームやカタログで一般消費者が広く購入できる
一般家屋用の断熱材、ガーデニング用のレンガ 当たる 一般消費者が購入して設置する
床暖房、インターホン、ガス警報器 当たる 一般消費者向けに製品として流通する
家庭用の小出力発電装置(太陽光、ガスエンジン、燃料電池) 当たる 家庭に設置されるもの
天井、壁、床、柱、屋根、屋根材 当たらない 建築物と考えられ、一般消費者が店頭で購入して設置する性質のものではない
木材、布、糸 当たらない 中間製品ないし半製品
エレベータ、家庭用エレベータ、階段昇降機 当たらない 建築基準法で建築物として取り扱われる
消火器、住宅用防災警報器ほか消防検定の12品目 当たらない 消防法施行令で技術上の規格が定められた検定品目(法別表3号)

同じ屋根の下にある物でも、屋根材は外れてサッシは入る。基準は建築物の一部かどうかと、一般消費者が市場で買えるかどうかの二つで、施工の難易度ではない。

販路も判定に効く。業務用として製造や輸入をしている製品でも、仕様と販路からみてホームセンターの店頭やカタログ通販で一般消費者が容易に買え、一般家庭でも広く使えるものは消費生活用製品になる場合がある。逆に業務用としてのみ販売している厨房機器は当たらない。中古品も、通常市場で一般消費者に販売されている製品であれば当たる。

部品は原則として外れる。製品に組み込まれて使われ、一般消費者が市場で買うものではないためで、単体で店頭に並ぶ乾電池やカッターの替え刃のようなものだけが例外になる。

重大製品事故の五つの要件

製品事故は、消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、危害が発生したもの、または製品が滅失もしくはき損して危害が発生するおそれのあるものを指す(法2条6項)。欠陥によって生じたものでないことが明らかな事故だけが外れる。使用者の不注意や誤使用に見えても、設計や製造上の問題、注意表示の不備の可能性が残るなら製品事故に当たる。

そのうち次の要件に触れたものが重大製品事故になる(施行令6条)。

要件 内容 補足
死亡 一般消費者の死亡 ー
重傷病 治療に要する期間が30日以上の負傷または疾病 治療期間には投薬期間を含む
後遺障害 治ったとき(症状固定を含む)に内閣府令2条が定める身体の障害が残るもの 視覚、聴覚、嗅覚、音声機能、肢体不自由、内臓機能などを号ごとに規定
一酸化炭素中毒 一酸化炭素中毒またはその疑いと診断されたもの 軽症を含む
火災 火災が発生したこと 消防が火災認定したものに限る。出動と認定は別

火災認定の有無は消防に確認しないと分からない。現場に消防車が来たからといって火災認定されているとは限らない。

通知の宛先と報告の期限

報告義務を負うのは製造又は輸入事業者だけで、工務店や商社は通知の側に立つ。

立場 送り先 期限 根拠
小売販売、修理、設置工事の事業者 その製品の製造又は輸入事業者 知ったとき(期限の定めなし、努力義務) 法34条3項
製造又は輸入事業者 消費者庁長官 重大製品事故を知った日を含め10日以内、様式第一 法35条1項、内閣府令3条
製造、輸入、小売販売の各事業者 NITE(製品評価技術基盤機構) 重大製品事故に当たらない製品事故を知ったとき 経済産業省通達
販売事業者(製造又は輸入事業者が倒産や廃業で不在) 消費者庁 知ったとき ハンドブック2025のQ&A

10日目が土曜、日曜、祝日、年末年始に当たる場合は、その休日の翌日が期限になる。報告書に書くのは製品の名称と型式、事故の内容、製造または輸入した数量、販売した数量で、日本語で記載する。

報告義務者が誰かは、建材では組み合わせで迷う場面が出る。ハンドブックの判定を並べると、輸入品は海外の製造者ではなく輸入事業者。製造行為だけを外注したOEMは、委託元が自ら設計して完成品の検査も自己の責任で行っているなら委託元が製造事業者になる。システムキッチンに組み込まれたガスこんろは、こんろが単体で一般消費者向けに売られていればこんろのメーカー、特定のシステムキッチン専用に作られていればキッチン全体のメーカー。製造を中止した製品でも、同じ型式を使っている消費者への注意喚起が要るため報告義務は残る。

施工が原因に見える場面でも、報告が止まるとは限らない。修理や設置工事の事業者の不正改造によって生じたと公的機関などによって明らかにされている場合だけが対象外で、事故と改造の関連が不明確なら製造又は輸入事業者は期限内に報告する。

報告を怠るか虚偽の報告をすると、消費者庁が事実確認のうえ製品名、事業者名、機種と型式名、事故の内容、原因を記者発表とウェブサイトで公表し、必要があれば体制整備命令を出す(法37条)。この命令と、危害防止命令(法39条1項)への違反は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、併科もある(法58条4号、5号)。

回収への協力の範囲と費用の負担

製造又は輸入事業者は、製品事故が起きたら原因を調査し、危害の発生と拡大を防ぐ必要があると認めるときに回収などの措置をとる(法38条1項)。リコールとして挙げられているのは四つ。製造と流通と販売を止めて流通販売の段階から引き揚げること、リスクを消費者に伝えること、使用上の注意を含む注意喚起、消費者が持っている製品の交換と改修と引取り。

販売側の義務は二段階に分かれる。

場面 販売事業者の立場 根拠
製造又は輸入事業者の自主回収 協力するよう努めなければならない(努力義務)。事業の規模、取り扱う製品、製造事業者等との関係、事業の実態に応じて可能な努力で足りる 法38条2項
危害防止命令を受けてとる措置 協力しなければならない(義務) 法38条3項

具体的な協力として挙がるのは、対象製品の販売停止、製造又は輸入事業者への在庫情報と顧客情報の提供、店頭でのリコール情報の提供。小売販売事業者は消費者に近く、リコール製品の所在確認や消費者からの情報が早く届くため、回収の速さを左右する位置にいる。

費用の帰属は決まっている。危害防止命令に基づく回収では、その費用は人件費を含め、特段の事情がない限りリコールを実施する製造又は輸入事業者が負担することを国が併せて求める。現場へ再訪して交換する手間をどちらが持つかは、この線から交渉する。

輸入建材を自社で通関している商社は、回収する側に回る。リコールを始めると決めたら経済産業省の製品安全課製品事故対策室へ連絡し、開始と進捗をそれぞれの様式で報告する。掲載先は経済産業省のウェブサイトと、NITEの検索ツールNITE SAFE-Lite。交換用の部材の調達に時間がかかる場合は、開始を予告する扱いがあり、その旨を早めに同室へ伝える。

顧客情報を渡してよい場面

回収で最初に詰まるのが施主の連絡先の扱いで、根拠条文は場面ごとに違う。

場面 根拠 本人の同意
製造又は輸入事業者の自主リコール(注意喚起、回収、点検、修理)に協力して顧客情報を渡す 個人情報保護法18条3項2号(人の生命、身体又は財産の保護に必要で、本人の同意を得ることが困難) 不要
危害防止命令が出た後に顧客情報を提示する 同法18条3項1号(法令に基づく場合) 不要

消費者庁と経済産業省は、この整理のうえで小売販売事業者に可能な限り積極的な協力を求めている。

施工済み物件を洗い出す

回収の速さは、対象の建材が消費者の手に渡るまでの販路をどこまで把握しているかで決まる。最終消費者まで完全には追えない製品もあるため、追える範囲を事前に確かめておく扱いになっている。対象者が特定できる場合の周知は、ダイレクトメール、電話、電子メール、直接訪問、流通や販売の事業者を通じた連絡から選ぶ。

工務店側で追跡の起点になるのは、発注者から直接請け負った建設工事について10年間の保存義務がかかる営業に関する図書で、完成図と打合せ記録、施工体系図、見積書が含まれる(保存の対象と期間は発注書と注文請書の作り方にまとめている)。品番とロットの対応が取れるかどうかは、社内の品番マスタと納品書の突合に戻る。

他社の製品を外から拾う窓口は二つ。消費者庁のリコール情報サイトは製品分野別に回収と無償修理の情報を載せ、「住居品」と「建物・設備」の区分があり、メール配信の登録ができる。NITE SAFE-Liteは事故情報とリコール情報を横断で引ける。

損害賠償の期間制限

同じ不具合でも、どの請求権を立てるかで期限が変わる。

請求の根拠 期間 起算点 条文
製造物責任 3年 被害者かその法定代理人が損害と賠償義務者を知った時 製造物責任法5条1項1号
製造物責任(人の生命または身体の侵害) 5年 同上 同法5条2項
製造物責任(上限) 10年 製造業者等が製造物を引き渡した時 同法5条1項2号
製造物責任(蓄積性物質による損害、潜伏期間の後に症状が出る損害) 10年 損害が生じた時 同法5条3項
売買の契約不適合 1年以内に通知 買主が不適合を知った時 民法566条
請負の契約不適合 1年以内に通知 注文者が不適合を知った時 民法637条1項
債権の消滅時効 5年/10年 権利を行使できると知った時/行使できる時 民法166条1項
新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分 10年 注文者または買主への引渡し 品確法94条1項、95条1項
不法行為 3年(人の生命身体は5年)/20年 損害と加害者を知った時/不法行為の時 民法724条、724条の2

1年の通知期間には抜け道がある。売主または請負人が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この制限が働かない(民法566条ただし書、637条2項)。新築住宅の10年は不利な特約を無効とし(品確法94条2項、95条2項)、契約で20年まで伸ばせる(同法97条)。

製造物責任の射程と責任を負う者

製造物責任法が守るのは、欠陥のある製造物が他人の生命、身体、財産を侵害した場合の損害で、「その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない」とただし書が付く(3条)。床材が反った、サッシが動かない、といった建材そのものの損害は、この法律ではなく契約不適合責任と債務不履行で処理する。製造物責任法が前に出るのは、建材が原因で火災が起きて建物や家財が焼けた、落下して人が怪我をした、という場面になる。

対象になるのも動産に限られる。製造物は「製造又は加工された動産」(2条1項)で、建物そのものは含まれない。

責任を負う者の範囲は広い。製造業者等は三つの号で定義され、製造、加工、輸入をした者に加えて、自ら製造業者として氏名や商号や商標を表示した者、製造業者と誤認させる表示をした者、販売に係る形態その他の事情からみて実質的な製造業者と認められる氏名等の表示をした者が並ぶ(2条3項)。プライベートブランドの建材に自社名を刷って売る商社は、製造していなくてもこの号に入る。消費生活用製品安全法の報告義務者が実際に製造した者に絞られるのとは、範囲が違う。

免責は二つで、立証責任は製造業者等の側にある(4条)。引き渡した時の科学または技術に関する知見では欠陥を認識できなかったことを証明した場合と、部品や原材料として使われた製造物で、欠陥が専ら完成品メーカーの設計指示に従ったことにより生じ、そのことに過失がないことを証明した場合。後者は、金物や接着剤のように指示どおりに作る建材で効く。

連絡が入った日に押さえる項目

確認先: リコール情報サイト(消費者庁)、事故情報の集約等(消費者庁)、製造物責任法(e-Gov法令検索)