見積書の単価の根拠を施主や元請から聞かれたとき、答えは材料ごとに違う。せっこうボード張りは材工一式の相場、フローリングは材料と手間の積み上げ、ガラスは製品代と取付手間の別計上になる。国土交通省の公共建築工事標準単価積算基準は、この違いを4つの区分として明文化し、どの資料のどの価格を採るかまで定めている。

基準そのものは官庁営繕工事の積算に使うものだが、価格の出どころに挙がるのは民間工事でも同じ雑誌とメーカー見積で、歩掛りは公開されている。

単価の4区分

令和8年改定の基準は、工事費積算に用いる単価と価格を次のように分ける。

区分 中身 価格の取り方
材料価格等 積算時の最新の現場渡し価格。杭、鉄筋、コンクリート、鉄骨など価格変動が大きい資材と、建物ごとに個別性が高い機器 物価資料の掲載価格か製造業者の見積価格
複合単価 歩掛り(材料の所要量、労務、機械器具、諸経費)に各単価を乗じて積み上げた単価 材料単価は物価資料、労務単価は公共工事設計労務単価、機械器具損料は請負工事機械経費積算要領、仮設材費は物価資料の賃料か基礎価格×損料率
市場単価 元請と下請の専門工事業者の取引調査に基づく単位施工当たりの価格。材料費、労務費、機械器具費、専門工事業者の諸経費が一式 物価資料の掲載価格
単位施工単価 材工一式のまま労務費等の内訳を把握できるようにした単価。ベース単価は複合単価の方法、シフト単価はベース単価を取引調査の比で調整 ベース単価は工事場所の材料単価と労務単価、シフト単価は物価資料
上記以外 4区分に当てはまらない単価と価格 専門工事業者等の諸経費を考慮し、物価資料か製造業者・専門工事業者の見積価格

建築工事で市場単価を使う工種は、内装床と内装ボード張り(ビニル床シート、ビニル床タイル、タイルカーペット、ソフト幅木、せっこうボード張り、けい酸カルシウム板張り)、軽量鉄骨の壁下地と天井下地、ガラスとガラスとめシーリング、左官、塗装、コンクリート、アスファルト防水とシーリング、鉄筋と型枠の運搬費。

標準歩掛りで積み上げる工種には、畳敷き、フローリングボード張り、断熱材の張りと打込み、壁紙張り、タイル張り、木工事、屋根ととい、既製コンクリート、木製建具が入る。金属製建具は製品代、取付費、運搬費に分けて計上し、製品代はカタログか物価資料の掲載価格、またはメーカー見積に諸経費を考慮した価格を別途立てる。石工事だけは細目工種の定めがなく、総則に戻って個別に算定する。

物価資料のどの欄から取るか

積算基準等資料は「物価資料」の中身を4誌に特定している。どの単価をどの誌面から採るかも分かれる。

何の単価か 採る価格
材料価格等、材料単価、仮設材費 『積算資料』(経済調査会)と『建設物価』(建設物価調査会)等の価格の平均値
市場単価 『建築施工単価』(経済調査会)と『建築コスト情報』(建設物価調査会)に載る「建築工事市場単価」の平均値
単位施工単価のシフト単価 同じ2誌に載る「建築工事単位施工単価」の平均値

刊行の間隔は資材と施工単価で違う。資材価格の2誌は月刊で、市場単価の2誌は4月、7月、10月、1月の季刊。建設物価調査会の単価データファイルも、建設物価は毎月、建築コスト情報は年4回の更新になる。

誌名 発行 1冊 年間
月刊 建設物価 毎月 4,180円 年12冊40,920円
月刊 積算資料 毎月 4,180円 年12冊40,920円
季刊 建築コスト情報 4・7・10・1月 4,950円 年4冊17,160円
季刊 建築施工単価 4・7・10・1月 5,060円 年4冊17,160円

工事場所が掲載都市でないときは、他に適切な単価がなければ、その場所を包括する地区を代表する都市の単価を準用する。単位施工単価のシフト単価は、工事場所の材料単価と労務単価で算定したベース単価に、代表都市のシフト単価とベース単価の比を乗じて出す。

鉄筋とガス圧接、型枠のように単位施工単価へ移った規格・仕様は、基準から市場単価の規定が消え、物価資料の市場単価の掲載も取りやめになった。古い号の市場単価を引き続き使うと、基準にない単価で積むことになる。

歩掛りに入っている材料の割増

標準歩掛りとベース単価の歩掛りでは、材料の所要量に切り無駄などの割増が最初から含まれる。労務の所要量は平均的能力の作業員による標準作業量で、機械器具も平均的能力の機種が前提になる。

工種 材料の所要量 労務
フローリングボード張り(1㎡) フローリングボード1.05㎡、くぎ0.11kg 内装工0.13人、普通作業員0.018人
壁紙張り(1㎡) 壁紙1.05㎡、接着剤0.18kg 内装工0.025〜0.055人(壁と天井、壁紙の種類で変わる)
断熱材張り(壁、1㎡) 断熱材1.05㎡、セメント7.0kg、接着剤0.5kg 内装工0.033人、普通作業員0.017人
床タイル張り(100mm角、1㎡) 床タイル102枚、セメント3.0kg、細骨材0.004m³ タイル工0.22人、普通作業員0.09人
床タイル張り(150mm角、1㎡) 床タイル45枚、セメント2.6kg、細骨材0.004m³ タイル工0.19人、普通作業員0.09人
普通合板型枠(1㎡) 型枠用合板(表面加工品 900×1,800×12mm)1.08㎡、1現場当たり損料率25%、補助材は(労務+材料)×20% 型わく工0.15人、普通作業員0.02人
鉄筋加工組立(1t) 結束線3.6kg 鉄筋工1.88人、普通作業員0.38人(うち工場加工相当分は0.5人と0.21人)
仮囲い(高さ3.0m、1m) 仮囲鉄板2.1枚、丸パイプ9.36m、修理費は仮設資材賃料の5% 普通作業員0.24人

床タイルは100mm角で1㎡当たり102枚、150mm角で45枚。目地を含むモデュール寸法で数えるので、100枚と44.4枚に対する上乗せが割増にあたる。

材料のロスを数量で見るか単価で見るかは、材料ごとに分かれている。公共建築数量積算基準が所要数量として割増を定めるのは鉄筋4%、形鋼と鋼管と平鋼5%、構造用面材5%といった材料で、フローリングや壁紙、タイルは数量側でなく歩掛りの中で割増される。どちらで見ているかを確かめずに両方を掛けると、同じロスを二度見込むことになる。

材工一式の単価に占める労務費

単位施工単価は、材工一式の単価のうち労務費がいくらかを出せる形で作られている。国土交通省が公表したベース単価の構成比は次のとおり。

細目 労務費 材料費 その他
鉄筋加工組立(RCラーメン構造 階高3.5〜4.0m程度) 70% 鉄筋本体は別途計上 30%(結束線と工場管理費を含む)
ガス圧接(D25-D25) 63% 16% 21%
普通合板型枠(ラーメン構造 地上軸部 階高3.5〜4.0m程度) 64.0% 17.0% 19.0%

いずれも令和7年10月時点の東京の単価で算出した参考値。鉄筋の主材は単位施工単価に含まず別に計上するので、加工組立の単価が動く主因は労務側になる。

単位施工単価が導入されたのは、中央建設業審議会が2025年12月に「労務費に関する基準」を勧告したことに対応する動きで、鉄筋とガス圧接、型枠が2025年12月、電気設備工事の絶縁ケーブルが2026年3月に入った。他の市場単価の工種も歩掛り調査が進んだものから順次移行する。労務費の基準値のほうは公共工事と民間工事を問わず価格交渉で参照できる相場観として作られたもので、同じ規格・仕様なら歩掛りの労務部分は単位施工単価と一致する。

2026年4月から変わる諸経費の率

専門工事業者等の諸経費は、歩掛りの労務費と材料費等それぞれに率を乗じて足し合わせる。この率が実態調査を踏まえて改定され、2026年4月以降に入札手続きを開始する官庁営繕工事から適用される。

率を乗ずる歩掛りの対象 率
労務費(労) 42〜52%
材料費、消耗材料費等(労以外) 9〜13%

改定前は工種ごとに率と率の対象が分かれていた(内外装15〜23%、タイル16〜24%、木20〜30%、左官19〜27%、建具取付16〜24%、塗装18〜26%)。工種別の刻みをやめ、全工種共通の2本にそろえたのが今回の変更になる。率は中間値を標準とし、地域の特殊性を考慮して定める。建築新営工事の鉄筋とコンクリートは原則として率の対象外だが、工事量が少ない場合などは計上できる。

諸経費に含まれるのは、現場管理費として労務管理費、租税公課、保険料、従業員給料手当、退職金、法定福利費の事業主負担額、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、小器材の損耗費。一般管理費等には役員報酬や維持修繕費、減価償却費、付加利益までが入る。

工事原価に対する一般管理費等率も、建築工事と電気設備工事、機械設備工事、昇降機設備工事で分かれていた算定式が一本化された。

工事原価 一般管理費等率
300万円以下 20.11%
300万円超30億円以下 Gp=32.597−3.591×log10(Cp)(Gpは率(%)、Cpは工事原価(千円)。小数点以下第3位を四捨五入)
30億円超 9.34%

単価に含まれる費用と含まれない費用

どこまでが単価の中かは、総則が線を引いている。

費用 扱い
施工中に出る端材等を指定場所まで集積する費用 単価に含む
材料や機器の場内小運搬 単価に含む
材料や機器の揚重 単価に含まない(別途計上)
移動式揚重機 物価資料の建設機械賃料。よりがたい場合は専門工事業者の見積
設計変更したときの単価 当初設計の積算時の単価と価格を使う

改修では執務状態で扱いが変わる。全館無人改修は割増をしない。執務並行改修は、複合単価と単位施工単価の労務の所要量を割増し、市場単価には改修補正率を乗じる。

工種 労務の所要量 市場単価の改修補正率
防水 15%増し 1.07(シーリングは1.13)
タイル、石、木、屋根及びとい、既製コンクリート、仕上ユニット 15%増し 該当なし
金属 15%増し 1.08
左官(仕上塗材仕上以外) 15%増し 1.14
建具 15%増し ガラス1.09、シーリング1.14
塗装 15%増し 1.14
内外装 15%増し 1.11(ビニル床材は1.08)

仮設や土工、鉄筋、コンクリート、型枠、鉄骨、撤去には割増も補正もかからない。作業効率が著しく悪い場合は、この表によらず実状で見る。

見積価格を単価にするときの決め方

物価資料に載っていない材料は、メーカーや専門工事業者の見積で単価を決めることになる。積算基準等資料はその手順も定めている。

当初の工事費内訳書を作るときの見積依頼先は複数とし、見積内容が適切なことを確認したうえで、原則として最安値の見積書を基に、実勢価格帯、類似の取引価格、数量の多寡、施工条件を勘案して単価を決める。必要に応じてヒアリングを行い、市中の取引状況を確認する。受け取った見積書がその工事のものかを見積担当者に確かめ、「確認済」と見積書か見積比較表に記載する。社印と担当者印は省略でき、直筆署名も要らない。

採用する価格の端数は有効上位3桁まで。千円未満なら十円単位、百円未満なら一円単位、一円未満は小数点以下第2位で丸める。内訳書と別紙明細に載せる単価も有効上位3桁で、金額は円単位の切り捨てになる。見積書の構成は公共建築工事見積標準書式によることとされ、現場労働者に関する法定福利費を記載する。

確認先: 公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)、公共建築工事積算基準等資料(令和8年改定)、労務費に関する基準ポータルサイト