CI-NET:建設産業で電子商取引をするための標準ルール。1991年の大臣告示を受けて整備が始まり、運用の中身は建設業振興基金の情報化評議会が出す「CI-NET標準ビジネスプロトコル」と、そこから実業務向けにデータ項目を絞った「CI-NET LiteS実装規約」で決まっている。実装規約の最新版はVer.2.2 ad.0(2022年8月17日)。
利用を目的に企業識別コードの登録を受けている企業は、2026年8月末で20,944社。資本金の内訳は1000万円以下が49.6%、5000万円以下が36.5%で、1億円以下まで含めると95.3%になる。名前の並ぶ大手だけの仕組みではない。
交換する帳票とその情報区分コード
メッセージは業務ごとに分かれ、4桁の情報区分コードで識別される。電子メール方式では、このコードが件名に入る形で決まっている(BPID機関名のCINTと連結し、購買見積依頼なら CINT0301、購買見積回答なら CINT0302)。
| 業務 | メッセージ | 情報区分コード |
|---|---|---|
| 見積 | 建築見積依頼 / 建築見積回答 | 0305 / 0306 |
| 見積 | 建築積算 | 0310 |
| 見積 | 設備見積依頼 / 設備見積回答 | 0303 / 0304 |
| 見積 | 設備機器見積依頼 / 設備機器見積回答 | 0307 / 0308 |
| 購買見積 | 購買見積依頼 / 購買見積回答 | 0301 / 0302 |
| 購買見積 | 見積不採用通知 | 0309 |
| 契約 | 基本契約申込 / 基本契約承諾 | 0521 / 0522 |
| 契約 | 確定注文 / 注文請け | 0502 / 0506 |
| 契約 | 鑑項目合意変更申込 / 鑑項目合意変更承諾 | 0503 / 0507 |
| 契約 | 合意解除申込 / 合意解除承諾 | 0504 / 0508 |
| 契約 | 合意打切申込 / 合意打切承諾 | 0505 / 0509 |
| 契約 | 一方的解除通知 / 一方的打切通知 | 0514 / 0515 |
| 納入 | 工事物件案内 | 0706 |
| 出来高 | 出来高要請 / 出来高報告 / 出来高確認 | 0904 / 0902 / 0903 |
| 立替 | 立替金報告 / 立替金確認 | 1204 / 1208 |
| 支払 | 請求 / 請求確認 | 1104 / 1108 |
| 支払 | 支払通知 | 1106 |
| 支払 | 工事請負契約外請求 / 工事請負契約外請求確認 | 1110 / 1112 |
標準ビジネスプロトコル側に情報区分コードがあっても、LiteSのメッセージサブセットが用意されていないものがある。出荷(0704)、入荷(0705)、総括請求(1109)がそれで、実装規約の表では空欄のまま残っている。建築積算(0310)は逆に新顔で、Ver.2.2 ad.0で加わった。
見積の呼び方は2系統ある。建築見積と設備見積は、総合工事業者が物件を受注する前に施主向けの見積書を作るために専門工事業者とやり取りする業務を指す。購買見積は、受注した後に施工の調達のために引き合いを出す業務を指す。資機材のサプライヤーや代理店、メーカーとのやり取りは設備機器見積に置かれている。なお実装規約は、見積業務(建築見積、設備見積、設備機器見積)のメッセージには情報伝達規約を適用しないと注記している。
建材の納品と請求が乗る流れ
建材の売買は工事の請負契約ではないため、注文と出来高の系列ではなく、工事請負契約外取引として別立てになっている。振興基金が公表する元請の運用状況表では「資材等取引」の欄にあたる。
流れは3つのメッセージで回る。発注者が新しい物件の管理番号や連絡先、工事場所、物品納入場所を工事物件案内メッセージで受注者に知らせる。受注者はそれを使って請求予定額を工事請負契約外請求メッセージで請求する。発注者が内容を認めれば工事請負契約外請求確認メッセージ(受理)を返し、異議があれば同じメッセージの不承認で返す。納品書そのものは紙のやり取りとして図に描かれている。
部分払いを想定していない設計で、出来高調査回数は「1回目」で固定される。月に複数回の送受信はできるが、原則は月1回。同じ月に複数の注文や納品が発生しても、月単位でまとめて明細に納品番号と注文番号を書く形が示されている。
不承認で返ってきたときに発注者の意思を示すのが請求確認コードで、3種類ある。
| コード | 発注者の表意 | 受注者側の動き |
|---|---|---|
| 2 | 請求メッセージに誤り等があるので修正して再送信するよう求める | 誤りを直して請求し直す |
| 3 | 既に受理済みで重複するため、重複分を発注者が破棄することに同意するよう求める | 重複分の請求を撤回したことに双方で合意する。最初に受理された請求が正 |
| 4 | 請求は承認または受理したが、支払を遅らせる | 請求額は合意済み。支払時期だけが動く |
工事物件案内は出来高要請メッセージと似て見えるが、位置づけが違う。工事物件案内は納入業務の一部で契約外請求メッセージの作成につながり、出来高要請は出来高業務の一部で出来高報告の作成につながる。他に伝達手段があるなら工事物件案内を使わない運用も認められている。
運用している元請の業務は注文に寄っている
導入状況の表には、CI-NETを利用中の元請67社と、各社が運用中の業務が載っている(2026年8月末時点、LiteS実装規約Ver.2.1 ad.7利用)。
| 業務 | 運用中の元請 |
|---|---|
| 確定注文と注文請け | 65社 |
| 購買見積(依頼と回答) | 24社 |
| 設備見積(依頼と回答) | 4社 |
| 建築見積、設備機器見積 | 0社 |
| 資材等取引(工事物件案内と請求、請求確認) | 1社 |
注文業務が入口になっている。見積を電子で受けている元請は購買見積の24社が上限で、建材の売買にあたる資材等取引まで動かしているのは安藤・間の1社だけ。元請から求められて始める順番も、まず確定注文と注文請け、次に出来高と請求という並びになる。
企業識別コードと標準企業コード
取引相手の識別に使うのは12桁の標準企業コードで、内訳は上6桁の企業識別コードと下6桁の枝番に分かれる。
| 部分 | 桁 | 採番する主体 |
|---|---|---|
| 企業識別コード | 6桁固定。省略は一切不可 | 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が管理し、1社(法人または個人事業主)に1つ |
| 枝番 | 最大6桁。数字とアルファベット | 各社が自由に採番。支店、営業所、現場、部署の区別に使う |
既に企業識別コードを取っている会社は、新しく取り直す必要がない。自社の分があるかどうかはJIPDECの標準企業コードリストで確認できる。枝番の付け方は各社任せで、本社を 000000、支店を 000001 000002 と振る形や、000100 000200 と桁を空けておく形が例示されている。1事業所で始めるなら 000000 か 000001 が推奨されている。
費用と有効期間
| 項目 | 新規 | 更新(3年毎) | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 企業識別コード(資本金1億円以下) | 17,600円 | 22,000円 | 3年 |
| 企業識別コード(資本金1億円超) | 35,200円 | 44,000円 | 3年 |
| 電子証明書 | 9,350円 | 9,350円 | 3年と30日 |
金額はいずれも税込。消費税は基金が発行する時点の税率が適用される。電子証明書の有効期間に付く30日は、証明書を更新するときの予備期間として置かれている。証明書を発行するには企業識別コードが有効であることが前提になる。
情報化評議会の会員(CI-NET会員)は、更新料も新規登録料と同額に据え置かれる。会員は情報化推進室の事業に賛同して事業年度ごとに会費を納めている企業と団体で、一覧が公開されている。
登録料と発行料の請求書は、企業識別コード通知書や電子証明書通知書に同封して届く。発行は役務の提供にあたるため、発行後は理由を問わず支払いが必要で、振込期日までに入金がないと電子商取引ができなくなる。
申込から使えるようになるまで
申込様式は新規なら様式1A号。インターネット申込と書面申込の2通りがある。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | インターネット申込はマイページを作り、申込データを入力して送信。書面申込はホームページから申込書をダウンロードしてエクセルで記入 |
| 2 | 申込書に捺印し、登記事項証明書等を添えて基金宛に郵送。個人事業主は様式71号を確認 |
| 3 | 受付と審査。セキュリティ対策として情報化推進室から申込担当者に本人確認の電話が入る |
| 4 | 企業識別コード通知書と電子証明書が本人限定受取郵便(特例型)で届く |
書面申込は2〜3週間程度かかる場合があるとされている。本人限定受取郵便は、申込担当者本人なら配達日時指定か郵便局窓口、代理の郵便受取代人なら窓口のみで受け取れる。受取には健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードなどの公的証明書の提示が要り、送付先が勤務先なら社員証や名刺も要る。保管期間の10日以内に受取指定をせず基金に戻った場合、再送付の送料は申込者負担になる。
電子証明書ファイルには証明書と秘密鍵、公開鍵が入っている。証明書とPINの再送付はできないため、紛失と破損への備えとしてバックアップが推奨されている。
EDIで使うメールアドレスは、普段のアドレスとは別にCI-NET専用のものを用意する。このアドレスはサービスベンダごとに異なるので、利用するベンダに確認する形になる。特定の発注企業を中心に独自仕様で電子商取引を行う企業グループに入る場合は、専用の電子証明書を取得し、EDI用アドレスもその発注者に問い合わせる。基金が窓口を案内しているサービスベンダはコンストラクション・イーシー・ドットコム、シーイーエヌソリューションズ、日本電気、富士通の4社。
コードと証明書のほかに要るものが2つある。自社システムの改修かASPサービスなどの導入と、取引相手とのデータ交換協定書および運用条件仕様書の取り交わし。協定書と運用仕様書は参考例が公開されている。
通信と署名の仕様
情報伝達手段は電子メール方式とebMS方式の2つ。メール方式の通信プロトコルは送信がSMTP、受信がPOP3で、ebMS方式はebXML Message Service v2.0とebXML CPPA v2.0を使う。セキュリティ方式はS/MIME準拠で、ダイジェストはSHA-1またはSHA256、署名と鍵の暗号はRSAで鍵長1024ビットまたは2048ビット、証明書はX.509 Version3。図面や製品仕様書などの技術データは、自己解凍方式かZIPで圧縮して送る。ファイル名に使える文字はJIS X0201(半角カタカナと句点を除く)とJIS X0208の範囲で、圧縮を解いたときにフォルダ構造を持ってはならない。
建設業法の請負契約を電子で結ぶ側の要件(事前承諾と見読性、原本性、本人性)は建設業法に沿った発注書・注文請書の作り方に整理してある。
導入形態ごとの費用感
振興基金の概算費用表は、購買見積と注文業務を対象に導入タイプ別の金額を示している。ただし平成25年2月時点の試算で、表中の企業識別コードの金額も当時の税率のままなので、桁感の参考にとどまる。受注者側は2タイプが載っている。
| 導入タイプ | 初期費 | 年間利用料 |
|---|---|---|
| ASP活用タイプⅡ(ブラウザ利用) | 40,000円 | 50,000円 |
| EDIソフト活用タイプ | 265,000円 | 30,000円 |
いずれも年間請負件数60件と120件の想定で、金額に差は付いていない。パソコンやOS、CSVファイル連携、インストールと環境設定、受注者教育の費用は含まれない。発注者側は完工高50億円から500億円の3モデルで、自社構築タイプのソフトウェア初期費が110万円、保守費が年19万5千円、ASPのブラウザ利用は初期6万円から11万円、年間利用料13万円から54万円という並びになっている。



