住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する住まいるダイヤルの相談事例から、屋根塗装、屋上防水、外壁の施工で下地と隙間の扱いが争点になった事例を整理した。9月に登録した40件に、10月登録の屋上防水の事例を加えて取り上げる。仕上げ材だけでなく、排水や通気の隙間、下地に残る水分、貫通部の止水が結果を分けていた。
屋根:塗装で屋根材の隙間を塞ぐ
築10年の木造2階建てで、住宅屋根用化粧スレートの全面塗装をリフォーム業者に頼んだ翌日に雨漏りが起きた事例がある。業者は屋根のドーマ(採光・換気のために屋根に付ける小窓)からの浸入とみて周辺にシーリング材を充填したが、数日後に同じ箇所から再び漏れた。相談者の知り合いの建築士は縁切りをしなかったことを指摘し、業者は縁切りの必要はないと考えて行わなかったと説明した。
縁切り:塗装工事の完了後に工具で塗料に切り込みを入れ、屋根材の隙間を開けていく作業。回答では、屋根材の重なり部分には雨水の排出と通気の確保のための隙間があり、住宅屋根用化粧スレートを塗装してその隙間を塗料で塞ぐと、雨水が排出できず下地材の腐朽や雨漏りの原因になることがある、と機構が示された。屋根材の隙間にあらかじめスペーサーを挿入して排水スペースを確保してから塗装する工法も使われている。ただし住宅屋根用化粧スレートでも、屋根の形状や屋根材の状況によっては縁切りを必要としない場合もあるとされた。
原因の断定はされていない。塗装工事の翌日に雨漏りが出た点から、縁切りを省いたことが原因とは断定できず、塗装工事中に屋根材や下ぶき材を破損した可能性もある。築10年の屋根からの雨漏りには、屋根材の老朽化によるズレや割れ、下ぶき材の劣化や露出、ドーマまわりのシーリングの劣化といった塗装工事とは別の原因も考えられるため、まず原因を特定する順番が示された。
後から載せる工事の順番が結果を分けた事例もある。新築入居の翌年、建てた住宅会社とは別の工務店に屋根置き型太陽光発電システムの設置を依頼したところ、設置直前の屋根点検で屋根裏の野地板(屋根葺材の下地板)部分に雨漏りが見つかった。回答では、住宅品質確保促進法が新築住宅の事業者に課す引き渡しから10年の瑕疵担保責任は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分が対象で、屋根の雨漏りはこれに含まれると整理された。設置工事は屋根に架台を乗せ、垂木にビスを打ち、重量のあるパネルを載せる作業で、それ自体が雨漏りの原因になる可能性がある。雨漏りを先に直さずに設置すると、後日また雨漏りが出たときに新築時の施工か設置工事かが分からなくなる。10年の責任はリフォーム工事で消滅しないが、責任の所在が不明確になれば双方が自社の責任を否定する形になる。
屋上:保護コンクリートを残した密着張り
33年前に新築した鉄筋コンクリート造4階建てで、屋上防水層の改修工事を行った事例では、完了後しばらくして新しい防水層がふくれ上がった。新築時は屋根のコンクリートスラブの上に防水層、その上に保護コンクリートという構成で、改修では既存の保護コンクリートを残したまま、その上に改質アスファルトシートを施工していた。
回答では、ふくれの経路が2つ挙げられた。ひとつは、下地となる保護コンクリートのひび割れや継目部分の動きによって防水層が破断するおそれ。もうひとつは、保護コンクリートに含まれた水分を完全に乾燥させることが難しく、防水層を施工した後にその水分が気化・膨張してふくれが発生する経路である。
絶縁工法:防水層を下地に全面的に密着させず、部分的に密着させることを基本とする工法。下地のひび割れや動きによる防水層の破断が起きにくく、日射で気化・膨張した水分が防水シートと下地の間を自由に拡散・移行できるため、ふくれも起きにくい。加えて、気化した水蒸気を排出させる脱気装置を適切な間隔で設置すると、ふくれはさらに起きにくくなる。今回の改修が絶縁工法や脱気装置の設置といった一般的な仕様だったかが、補修方法を決める前提になった。この事例は保証期間内で、施工業者が補修工事を行う意向を示していた。
外壁:貫通部のシーリングと胴縁の間隔
築30年の3階建て分譲マンション3階住戸で、北側壁にあったI型キッチンを西側壁向きに移設した事例がある。レンジフード付きの換気扇に交換する際、外壁換気口の位置は変えられないため、レンジフードから既存の換気口までダクトを設置し、北側の内壁にキッチンパネルを貼ってダクトを隠した。工事後、大雨が降る度にキッチンパネルを通して床から雨漏りし、3、4回発生した。管理会社を通じて外壁のメンテナンスを行う会社が調べたところ、外壁換気フードの取付箇所にシーリングがされていないことが分かった。リフォーム会社と外壁メンテナンス会社のいずれも自社の責任を認めず、最終的に外壁メンテナンス会社が管理費でこの部分のシーリングを施工した。回答では、ダクトと外壁の接続箇所に雨水が浸入しないよう注意を払って施工すべき義務がリフォーム会社にあったと考えるべきで、責任を求めることは可能とされ、工事内容を整理して雨漏りの発生時期とシーリングの欠落による浸入経路を確認する形が示された。
新築工事中に仕上げ材が欠けた事例もある。木造在来3階建ての新築で、施工中のサイディング材に欠けとひび割れが認められ、相談者は工事を止めてやり直しを求めた。相談者は胴縁の位置が45センチ間隔で施工されていなかったことが原因とみていた。回答では、胴縁は一般的に303mm(一尺)か455mm(一尺五寸)程度の間隔で設計されることが多く、施工はサイディング材メーカー各社が定める取扱説明書や施工マニュアルに基づいて行う必要があるとされた。マニュアル通りに施工されていない場合、胴縁の間隔や胴縁材の大きさによっては留め付けがうまくいかず、サイディング材が欠けたりひび割れたりする可能性があり、その場合は設計の見直しや工事のやり直しを求められる。
同じ事例では、壁下地に契約内容と異なる種類の構造用合板が現場で使われていた。回答では、契約が日本農林規格(JAS)の構造用合板なのに現場で同規格以外が使われていたように瑕疵が重要なときは是正を求められるが、メーカーが違うだけで性能は同じというときは是正を求めるのは難しいとされた。その場合でも、使われた構造用合板の価格が契約内容のものより安ければ、差額分の請求を認める考え方もある。この住宅では予算の都合で、建材の選定や間取りの検討を設計業務から除いて設計・監理料を減額していた。
発注・施工段階で防げた分岐点
5件では、下地・貫通部・隙間の状態や、既存部分に手を入れる順番が争点になった。事例の記載から読み取れる分岐点は次の4つに整理できる。
見積の仕様に隙間と下地の扱いが書かれていたか。屋根塗装なら縁切りかスペーサーの挿入、屋上防水なら絶縁工法と脱気装置の有無が仕様に現れる。屋根塗装の事例では、業者が縁切りを不要と判断した根拠が施主に示されておらず、雨漏りが出てから原因の特定を始める形になった。
貫通部のシーリングがどちらの工事範囲だったか。換気フードの事例では、ダクトを通した取付部の止水がリフォーム会社と外壁メンテナンス会社のどちらの範囲かがはっきりしないまま工事が終わり、キッチンパネルでダクトが隠れたため、大雨が3、4回降るまで欠落に気付けなかった。
下地の設計間隔をメーカーの施工マニュアルと照合していたか。サイディングの事例では、相談者が施工間隔を問題にしており、メーカーの施工マニュアルに沿った留め付けかどうかが確認対象になった。
既存部に手を入れる工事の順番。太陽光の事例では設置前の点検で雨漏りが先に見つかったため、新築時の施工と設置工事の切り分けができた。設置後に見つかれば原因の所在が分からなくなる。窓回りからの雨漏りの事例では、モルタル外壁を剥がして原因を調査する場合、調査後の復旧工事でモルタル仕上げや貼り直した防水シートから漏らないよう、調査と復旧工事の記録を施工会社に残させることと、補修後の保証範囲を売主と相談することが対象に挙がった(相談事例)。
確認先: 事例の本文と回答の全文は住まいるダイヤルの相談事例検索。



