非通気の外壁に張る防水紙を、単価の安いアスファルトフェルトの17kg巻に変えると、新築の瑕疵保険が通らない。使えるのは同じJIS A 6005でも430(20kg巻)だけで、17kg巻と8kg巻は釘穴止水性が弱いものとして名指しで除かれている。
材料の指定は、保険法人が定める設計施工基準に書かれている。建築基準法とは別枠の技術基準で、屋根の下葺き材から外壁の防水紙、サイディング、シーリングまで、JIS番号と品名で並ぶ。基準から外れた材料を使う住宅は、同等以上の性能を保険法人が認める手続きを経なければ引き受けてもらえない。
基準を作っているのは保険法人5社
事業者から新築住宅の瑕疵保険を引き受ける保険法人は、住宅あんしん保証、住宅保証機構、日本住宅保証検査機構(JIO)、ハウスジーメン、ハウスプラス住宅保証の5社。ここに再保険を引き受ける住宅保証支援機構が加わる。
設計施工基準は各社が別々に定めるが、条文の骨格は共通している。趣旨(第1条)、関係法令(第2条)、本基準により難い仕様(第3条)から始まり、第2章が木造、第3章が鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造、第4章が鉄骨造、第5章が補強コンクリートブロック造。材料を名指しする条文は各社で同じ番号、同じ文言のことが多い。
対象は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に限られる。柱の小径など上部躯体の基準は設計施工基準になく、建築基準法施行令43条に従う。併用住宅の店舗や事務所のような非居住部分にも同じ基準がかかる。
木造で材料が名指しされる条文
木造住宅(第2章)で、材料そのものが規格で縛られる条文を並べると次のようになる。
| 部位 | 条文 | 指定される材料 |
|---|---|---|
| 屋根の下葺き材 | 7条2項1号 | JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)のアスファルトルーフィング940又は同等以上 |
| バルコニーと陸屋根の防水 | 8条2項 | 金属板(鋼板)葺き、塩化ビニル樹脂系シート防水、アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、FRP系塗膜防水(ガラスマット2層以上)、FRP系塗膜防水と改質アスファルトシート防水またはウレタン塗膜防水の組み合わせ |
| 手すり壁とパラペットの防水紙 | 8条5項1号 | JIS A 6005のアスファルトフェルト430、JIS A 6111(透湿防水シート)の外壁用透湿防水シート、又はこれらと同等以上 |
| 通気構法の外壁の防水紙 | 9条2項1号 | JIS A 6111の外壁用透湿防水シート又はこれと同等以上。通気層の躯体側に施す |
| 非通気の外壁の防水紙 | 9条2項2号 | JIS A 6005のアスファルトフェルト430又は同等以上。外壁用透湿防水シートは除く |
| ALCパネル等の外壁の仕上材 | 9条3項 | JIS A 6909(建築用仕上塗材)の防水形外装薄塗材E、外装厚塗材E、複層塗材CE、可とう形複層塗材CE、防水形複層塗材CE、複層塗材Si、複層塗材E、防水形複層塗材E、JIS A 6021(建築用塗膜防水材)の外壁用塗膜防水材のアクリルゴム系 |
| サイディング材 | 10条2項1号 | JIS A 5422(窯業系サイディング)、JIS A 6711(複合金属サイディング)又はこれらと同等以上 |
| 外壁開口部周囲のシーリング | 10条4項 | JIS A 5758(建築用シーリング材)で耐久性による区分8020の品質又は同等以上 |
| モルタル下地のラス | 11条2項 | ラス張り。平ラスは補強に限り、下地には使えない |
| 既調合軽量セメントモルタル | 11条3項2号 | JIS A 6918(ラス系下地用既調合軽量セメントモルタル)又はJASS 15 M-102に基づく製造者の仕様 |
寸法の指定も同じ条文に入る。下葺き材は上下の重ねが100mm以上、左右が200mm以上で、谷部と棟部は谷底または棟頂部から両方向へ250mm以上。屋根面と壁面の取合い部は壁面に沿って250mm以上かつ雨押え上端より50mm以上立ち上げる。外壁の防水紙は上下左右とも90mm以上で、窯業系サイディングと金属サイディングの仕上げでは左右150mm以上。通気胴縁の幅は45mm以上、サイディングのジョイント部に使うものは90mm以上(45mm以上を2枚合わせたものを含む)、通気層の厚さは15mm以上。サイディングの留め付けは450mm内外の間隔で、端部から20mm以上離して先に穴をあける。
シーリングの耐久性区分は、前半の数字が圧縮加熱温度、後半が変形率を表す。10030と9030は8020以上として扱われ、7020と7010は下回るため開口部周囲には使えない。
「同等以上」で通る材料
条文の多くは「又はこれと同等以上」で終わる。下葺き材のアスファルトルーフィング940と同等以上とは、ステープルの足周りの隙間を埋める釘穴シーリング性、雨水による伸縮率の低さ(寸法安定性)、棟や谷や壁取合いの折り曲げ部に亀裂が生じにくい折り曲げ性能の3点を満たすもの、というのがJIOの回答。
該当する製品として挙がっているのは、アスファルトルーフィング工業会規格「ARK-04s」の品質規格以上の改質アスファルトルーフィング下葺材、アスファルトルーフィング1500、合成ゴムルーフィング、透湿ルーフィング。
通気層の有無で防水紙が入れ替わる
外壁の防水紙は、通気構法かどうかで使える材料が反転する。通気構法なら外壁用透湿防水シート、非通気なら透湿防水シートは使ってはならず、アスファルトフェルト430になる。理由は、通気構法以外の外壁は壁体内の湿気を排出しにくく、防水紙のタッカー孔から雨水が入る経路と、モルタルに浸透した水分が日射で水蒸気になって内部に入る経路が加わるため。
同じアスファルトフェルトでも17kg巻と8kg巻が除かれるのは、430(20kg巻)に比べて雨水による伸縮率が高く、ステープル周辺部が損傷しやすいから。損傷した穴がそのまま浸入口になる。
モルタル外壁を通気構法とする場合は、通気層の躯体側が外壁用透湿防水シートで、その外側にくるモルタルの下地となる防水紙には9条2項1号が適用されない。アスファルトフェルト430や紙付きリブラスなど、構法に応じたものを使う。ラス省略工法(あらかじめ合板とセメント等で成形したボードでラス網の現場施工を省く工法)でもラス網は不要になるだけで、防水紙は要る。
乾式仕上げは通気構法が原則で、ガルバリウム鋼板や板張りも含む。角波鋼板や波板鋼板の突起部分を通気層と見なすことはできない。ALCパネルと厚さ25mm超の押出成形セメント板は通気構法としないことができるが、厚さ15mmと20mmの押出成形セメント板は通気構法が要る。ALCパネルの下に敷く防水紙は有無も種別も問われない一方、9条3項の仕上材は必要で、JIS適合品でも樹脂リシンや弾性リシンやセメントスタッコのように条文に挙がっていないものは使えない。
2025年4月に変わった点
住宅保証機構とJIOは2025年版の設計施工基準を2025年4月1日から施行した。JIOは同日午前0時以降に到着した申込書類から適用している。両社の新旧対照表で共通する、材料と施工に関わる主な変更は次の通り。
| 条文 | 変更内容 |
|---|---|
| 4条2項 | 地盤調査の呼称がスウェーデン式サウンディング調査からスクリューウエイト貫入試験に変わった |
| 4条 | 計測箇所を4点未満にできる条件が「小規模な建物で3点以下(1点以上)」から「1点以上」に整理された |
| 7条4項、8条6項、14条5項、19条4項 | 太陽光発電パネル等を設置する場合は設備製造者の施工基準に基づいて防水措置を講じる、という項が新設された |
| 9条2項4号 | 開口部周囲は防水テープで防水紙を密着させるが、先張り防水シートや開口部周囲専用の防水部材を使う場合は適用しないただし書きが付いた |
| 14条2項 | 陸屋根の防水工法表がJASS8の2014年版から2022年版に差し替わり、面材張付け防水工事や不定形材塗布防水工事といった工事区分で整理された。常温粘着防水工法(密着保護仕様、記号AS-PF)が加わり、トーチ式防水工法(密着保護仕様)の記号はAT-PF1になった |
| 各条 | 「製造者の施工基準が適切であると認められる場合は当該基準による」という書き方が、「製造者が定める施工基準に基づいて施工する場合はこの限りではない」に変わり、メーカー仕様を採る場合の判断が明確になった |
| 6条2項 | べた基礎を「構造計算、べた基礎配筋表又は設計者の工学的判断等」で設計するという項が削除された |
現場検査の時期と見られる箇所
保険法人の現場検査の時期は、業務規程の認可基準(別紙2)が定めている。階数3以下は基礎配筋工事の完了時(プレキャストコンクリート造の基礎は設置時)と、躯体工事の完了時または下地張りの直前の工事の完了時の2回。階数4以上は基礎配筋工事の完了時、最下階から数えて2階および3に7の自然数倍を加えた階の床の躯体工事の完了時、屋根工事の完了時または下地張りの直前の工事の完了時になる。建築基準法7条の3の特定工程に係る中間検査が床の躯体工事の完了時に行われる場合は、その直近の検査と同じ時期にまとめられる。
検査を担当するのは建築士または建築基準適合判定資格者検定の合格者。2級建築士と木造建築士は、その免許で設計または工事監理ができる住宅の検査に限られる。検査ごとに重要な箇所の写真撮影が義務づけられ、撮影部位と形状や寸法が分かる撮り方を求められる。一定の品質管理が見込まれる場合は現場検査員以外の自主検査に代えられるが、新築の瑕疵保険では最低1回は現場検査員が入る。
雨水の浸入を防止する部分で見られる項目は、国土交通省が保険法人1社の検査要領として示している。木造では下葺き材の種類(アスファルトルーフィング940または同等品か)と重ね幅、壁面立ち上げ部の巻き返し長さ、天窓のメーカー指定工法、バルコニーの防水工法と勾配と立上り高さ、笠木を固定する貫通部の止水措置、外壁の防水紙の種類と通気層の確保状況、開口部周りの施工状況とシーリングの種類。この検査は原則として書類とヒアリングによる確認で、現地での目視はオプション(有料)という位置づけになっている。
構造側は、基礎の根入れ深さと立上り高さ、底盤の配筋、土台と基礎のアンカーボルトによる緊結、柱脚と柱頭の金物、面材耐力壁の釘打ち間隔などが並ぶ。基礎の立上りは地上部分で300mm以上が条文の値。建設省告示1347号は構造計算で適用しないことができるが、設計施工基準の300mmは構造耐力とは別に土台の劣化を抑える趣旨で置かれているため、構造計算をしても外れない。
基準から外れる材料を使うときの3条確認
第3条は「本基準により難い仕様であっても、当法人が本基準と同等の性能が確保されていると認めた場合は、本基準によらないことができる」と定める。この確認手続きが3条確認で、2通りある。
包括3条確認:建材メーカーや防水材メーカーが、工法や仕様をまとめて確認を受ける方法。保険法人が確認書をメーカーに発行する。その工法を採る工務店は、メーカーから確認書の写しを取り寄せて保険申込窓口に提出する。住宅保証機構は届出事業者専用ページで取得済み工法の一覧を公開している。ALC協会が取得した「外壁パネル表面に下地処理を施した後、JIS A 6909のリシン系仕上塗材を用いる仕様」や、木造狭小住宅向けの直張りサイディング(確認書番号10-210)が実例。
個別3条確認:物件ごとに確認を受ける方法。住宅保証機構の場合、申込前に個別3条申出書に会社名、届出事業者番号、住宅の所在地と構造、適合しない内容、同等の性能を確保するための具体的な措置を記入し、必要に応じて納まり図を添えてFAXまたはメールで提出する。機構が整理番号を記入して返信し、申込者は通知欄の内容を確認したうえでチェックを入れ、写しを申込書類に添える。JIOは各支店営業所への事前相談を先に置き、指定様式の申請書を出して3条確認書の交付を受け、物件ごとの申込時に写しを提出する流れになる。
同じ仕様や工法で過去に個別3条を通していれば、その整理番号を書くことで納まり図などの添付を省ける。現場検査で指摘を受けてから出す場合は、申出書の「現場検査で指摘有」にチェックし、返信の提出先は申込窓口ではなく指摘した現場検査員になる。返信は瑕疵がないことの保証ではなく、申出書と通知欄の内容どおりの設計と施工になっているかは現場検査で確認される。
個別3条が要る代表例は次の通り。
| 仕様 | 扱い |
|---|---|
| 外断熱工法で外壁に防水紙を設けない | 断熱材同士の隙間、出隅と入隅、開口部周り、土台水切り部で断熱材の裏面に雨水が入らない措置を確認 |
| 狭小地でサイディングを非通気構法とする | 直張構法用の金属サイディングであること、シーリングによる目地処理が確実に行えることを確認 |
| 耐火金属パネルの直貼り | メーカー仕様にジョイント部と開口部周りの防水措置の定めがあることを確認 |
| 鉄骨造の外壁を湿式仕上げとする | 条文に定めがないため確認が要る。下地板または下地面材の施工などの条件が付く |
| JASS8の表にない陸屋根の防水工法 | ポリマーセメント系塗膜防水、混和剤によるコンクリート改質工法など。まずメーカーの包括3条確認書の有無を確認 |
3条確認が要らない仕様
基準の数値を満たせない形でも、保険法人が代替の措置をあらかじめ定めていて、3条確認を経ずに引き受ける類型がある。住宅保証機構はこれを基準同等仕様と呼び、図面に仕様番号を書けば足りる。
基準同等仕様6は基礎高300mm未満の場合で、土台に接する外壁の下端に水切りを設けたうえで、基礎外周部に犬走りや芝や砂利敷きを設ける、土台にK3相当以上の防腐防蟻処理か耐久性の高い樹種(ヒノキ、ヒバ、ベイヒ、ベイスギ、ケヤキ、クリ、ベイヒバ、タイワンヒノキ、ウエスタンレッドシーダー)を使う、軒の出を600mm以上とする、のいずれかを施す。基準同等仕様7は形状上やむを得ず下葺き材の立上りが250mm未満になる場合の4類型(棟違いや段違いや入母屋の屋根、勾配屋根とパラペットや手すり壁の取合い、水下側に内樋や谷樋を設ける場合、屋根のすぐ上に窓がある場合)。基準同等仕様8はバルコニー開口部下端の防水層立上りが120mm未満になる場合で、防水工事を先施工して窓台までFRP防水を巻き込み、釘打ちフィンとFRP防水の間に防水上有効なパッキン材を施し、くぎ頭にシーリングを施す。
工法そのものが基準の前提と合わないものにも、個別3条を不要とする扱いがある。防水紙を使わない桟瓦葺きや真壁の伝統構法は、国土交通省がまとめた『伝統的な木造構法の参考事例集』に準じて施工すれば適用除外。工場製作の箱型製品を基礎と緊結するコンテナハウスやトレーラーハウスは、屋根と外壁に防水紙を用いない部分を適用除外にして鉄骨造として引き受ける。立てはぜによる雪止め屋根、溝板と吊子が一体のフラットルーフ、多雪区域の無落雪(M形)屋根も、それぞれの条件を満たせば個別3条は要らない。
伝統構法とログハウスは、工法特有の納まりから入る雨水が「通常生じうる」ものとして保険金の支払対象から外れる点が別に付く。屋根や外壁が対象部位から外れるわけではない。
確認先: 各保険法人の設計施工基準とQ&A(JIO、住宅保証機構)、包括3条確認書の有無は建材メーカーと防水材メーカー。



