単管やパイプサポート、型枠用合板を自社で抱えるか、現場ごとに借りるか。国土交通省大臣官房官庁営繕部の「公共建築工事標準単価積算基準(令和8年改定)」には、この二つを比べるための式が並んで書かれている。借りる場合と持っている場合で、費用の積み方が別に定められている。
賃料と損料の積み方
同基準は、建設用仮設材のうち賃貸仮設材の利用に係る費用を仮設資材賃料と呼び、物価資料による「基本料+日額賃料×設計供用日数」、または「基礎価格に1現場当たり損料率を乗じる」のいずれかで算定するとしている。前者が借りる場合の積み方、後者が持っている材を現場に投入する場合の積み方にあたる。
付随する費目も決まっている。リース材の返還時に必要な軽微な補修費用は修理費として計上し、修理費は仮設資材賃料の5%が標準。仮設材の運搬費は往復で、車両は4t積トラック、運搬距離は片道30km程度を標準とする。施工手間は掛け65%と払い35%に分け、掛けと払いを別に計上する必要があるときは基本料を掛け手間に、修理費を払い手間に載せる。
| 積む対象 | 借りる(賃貸仮設材) | 持つ(自社材) |
|---|---|---|
| 材料費相当 | 基本料+日額賃料×設計供用日数 | 基礎価格×1現場当たり損料率 |
| 転用の扱い | 基本料に転用率を乗じる | 損料率に織り込み済み |
| 修理費 | 仮設資材賃料の5% | 同(返還時の補修がない分は自社負担の実費) |
| 運搬費 | 4t車・片道30km程度の往復 | 同じ |
日額賃料が効く以上、借りる側の費用は日数で伸びる。基準は用途ごとに標準設計供用日数も置いている。鉄筋と型枠足場および躯体支保工の平均存置期間は階高4.0m超5.0m未満で20日(平家建ては30日)、5.0m以上5.7m未満で38日、5.7m以上9.1m未満で43日、9.1m以上12.5m未満で47日。内部仕上足場(脚立足場、階高4.0m以下)も20日、平家建ては30日とされる。
複数階へ転用したときの基本料
躯体足場や内部仕上足場の歩掛りには、複数階への転用がある場合は仮設資材賃料の基本料に転用率を乗じて算定する、という注が付く。その転用率が表A1-1-19にまとまっている。
| 転用階数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 転用率 | 1.0 | 0.8 | 0.64 | 0.5 | 0.4 | 0.33 | 0.29 | 0.25 | 0.22 | 0.2 |
2階で0.8、5階で0.4、10階で0.2。同じ材を上階へ回すほど、1階あたりが負担する基本料は下がる。基本料は借りた材を現場に持ち込んで使える状態にするまでの一回きりの費用で、階数が増えても発生回数は変わらないためだ。
減り方は転用階数で割った値ほど急ではない。10階まで転用しても1/10の0.1にはならず0.2で止まり、2階でも0.5ではなく0.8。回転させて薄まるのは基本料の側だけで、日額賃料×設計供用日数は現場に置いた日数のまま残る。工程が延びれば転用で稼いだ分は消える。
内部躯体足場(鉄筋・型枠足場)の歩掛りには、内部仕上足場への転用を考慮して仮設資材賃料の基本料は計上しない、という注が付いた表もある。同じ現場の中で足場を用途をまたいで回す前提が置かれている。
損料率が示す実質の転用回数
持っている材の側は、1現場当たり損料率から実質の転用回数が出る。基礎価格の何%をその現場に負担させるかという数字なので、逆数がおおまかな転用回数になる。
| 材料 | 摘要 | 所要量 | 1現場当たり損料率 | 逆数(実質の現場数) |
|---|---|---|---|---|
| 型枠用合板(表面加工品) | 900×1,800×12t | 1.08㎡/型枠1㎡ | 25% | 4現場 |
| 切り丸太(遣方) | 末口75mm、L=1,800mm | 1か所あたり2.0本(平遣方) | 90% | 約1.1現場 |
| 小幅板(遣方) | 15×90mm | 1か所あたり0.005㎥(平遣方) | 90% | 約1.1現場 |
| くぎ(遣方) | 規格の指定なし | 1か所あたり0.014kg | 100% | 1現場(使い切り) |
普通合板型枠(ラーメン構造 地上軸部 階高3.5〜4.0m程度)のベース単価は、型枠1㎡に対して合板1.08㎡を見込み、その25%を1現場に負担させる。損料率どおりなら4現場で基礎価格を使い切る計算になる。型枠工0.15人と普通作業員0.02人が同じ1㎡に付き、さん材や角材、緊張材、支保材、はく離剤、簡易な目地棒や面木をまとめた補助材が(労務費+材料費)×20%で乗る。化粧目地や打継目地、誘発目地の目地棒、大面木はここに入らないので別に拾う。
遣方の丸太と小幅板が90%、くぎが100%というのは、木材と消耗品は1現場で費用を回収する扱いという意味になる。転用を織り込んだ調達を考える余地があるのは、繰り返し使える鋼製材と合板型枠の側だ。
買った場合の取得価額はどの単位で判定するか
自社で持つと決めたとき、税務で先に決まるのは取得価額の判定単位になる。国税庁のタックスアンサーNo.5403は、少額の減価償却資産にあたるかどうかの判定で、取得価額は「通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します」としている。示されている例はテーブルと椅子で1組の応接セット、1枚では機能せず部屋ごとに組み合わせて使うカーテン。単管やクランプを1本ずつ数えるか、足場1台ぶんのセットで数えるかは、実際にどの単位で取引しているかで決まる。仮設材について通達に明示の例示はないので、注文書と納品書の単位を先に確認する話になる。
単位が決まると使える枠が3段になる。
| 枠 | 取得価額 | 処理 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 少額の減価償却資産 | 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 損金経理した額を全額損金 | 法令133、法基通7-1-11 |
| 一括償却資産 | 20万円未満 | 合計額を3年間で均等償却 | 法令133の2 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 40万円未満 | 全額損金、合計で年300万円まで | 措法67条の5 |
40万円未満というのは令和8年度改正後の数字。国税庁の「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」は、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産の取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が3年延長されて令和11年3月31日までになったと整理している。同じ日以後の取得等では、常時使用する従業員数が400人を超える法人が対象から外れた(従来は500人超)。合計額の年300万円という上限は据え置き。令和8年3月31日までに取得した分は30万円未満のまま判定する。
枠に収まらない金額の材は減価償却に乗る。耐用年数の適用等に関する取扱通達2-6-4は、建設業者等が使用する建設用の金属製の足場材料に、別表第一の「工具」に掲げる「金属製柱及びカッペ」の耐用年数を適用すると定めている。この「金属製柱及びカッペ」は同通達2-6-3で鉱業の坑道で使う金属製の支柱と横はりを指す語と説明されており、年数は別表第一で3年。型枠は同じ「工具」の「型(型枠を含む。)、鍛圧工具、打抜工具」に入り、プレスその他の金属加工用金型などが2年、その他のものが3年になる。
積算基準の型枠用合板が4現場で使い切る想定なのに対し、税務の耐用年数は3年。回転の速い会社では税務の年数が先に尽きる。
足場の点検と記録の義務者
リースにすれば管理の手間も貸主に移る、とは限らない。労働安全衛生規則の令和5年改正で足場に付いた義務は、事業者または注文者にかかっている。
令和5年10月1日施行の改正で、事業者または注文者が足場の点検(つり足場を含む)を行う際は、あらかじめ点検者を指名しなければならなくなった(安衛則567条、568条、655条)。さらに足場の組立て、一部解体、一部変更の後の点検後には、指名した点検者の氏名を記録して保存する必要がある(安衛則567条、655条)。厚生労働省のパンフレットは、指名の方法として書面での伝達、朝礼等での口頭の伝達、メールや電話での伝達、あらかじめ点検者の順を決めてその順番を伝達することを挙げ、点検者自らが点検者だという認識を持てる形をとるよう求めている。記録と保存には「足場等の種類別点検チェックリスト」の活用が望ましいとされる。
令和6年4月1日施行分では、幅が1m以上の箇所で足場を使用するときは原則として本足場を使用することになった(安衛則561条の2の新設)。ここでいう幅1m以上は、足場を設ける床面で、使用する建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離が1m以上ある箇所を指す。つり足場の場合や、障害物の存在その他の場所の状況で本足場の使用が困難なときは、本足場でなくても差し支えない。パンフレットが挙げる例には、床面に著しい傾斜や凹凸があって建地を2本設置できないとき、本足場にすると建築物等と足場の作業床との間隔が広くなって墜落や転落のリスクが高まるときが入る。幅1m未満でも可能な限り本足場を使うことが求められる。
この改正は調達の量に直に響く。一側足場で足りていた外周が本足場になれば、必要な建枠やパイプの本数が増える。自社で抱えている材の在庫でまわしていた会社は、足りない分の手当てをどちらの形で埋めるかを決めることになる。
作業床と建物の間隔については、30cm以内とすることが望ましいと付記されている。
費用の扱いも明示されている。労働安全衛生法が元請負人と下請負人に労働災害防止対策を義務づけており、それに要する経費は義務的に負担しなければならない費用で、建設業法19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれる、という整理だ。請負契約はこの経費を含む金額で締結する必要があり、値引きの対象にする性質の費目ではない。
書面のつくりまで求めが及ぶ。元請負人と下請負人は契約内容の書面化に際して、契約書面の施工条件等に労働災害防止対策の実施者とそれに要する経費の負担者の区分を記載して明確化し、下請負人が負担する労働災害防止対策の経費は、他の経費と切り離し難いものを除いて契約書面の内訳書などに明示することが必要とされている。国土交通省は令和4年度から安全衛生対策項目の確認表と、安全衛生経費を内訳として明示するための標準見積書の作成と普及を進めている。仮設材を借りる側も持っている側も、足場の費用が原価のどこに載るかを見積の段階で分けて書く形になる。
判断の分かれ目
積算基準と税務と安衛則を並べると、買う側に寄る条件と借りる側に寄る条件が分かれる。
| 見る点 | 買う側に寄る | 借りる側に寄る |
|---|---|---|
| 年間の現場数 | 損料率の逆数(合板型枠なら4現場)を超えて回る | 年に1、2現場で止まる |
| 転用階数 | 低層の繰り返しで、現場をまたいで回せる | 中高層1棟で完結し、基本料が転用率で薄まる |
| 工程の読み | 設計供用日数を短く読める | 工期が読めず、日額賃料の総額が振れる |
| 保管と運搬 | 置き場があり、片道30km圏に現場が集まる | 置き場がなく、現場が散る |
| 点検体制 | 点検者を指名して記録を残す体制がある | 体制はこれから作る(義務自体は借りても残る) |
| 資金と税務 | 取引の1単位あたりが40万円未満の枠に収まる | 支出を工事原価として期中で落としたい |
| 規格の変わりやすさ | 手すり先行方式など自社の標準が固まっている | 本足場化のような規格変更が続く |
会社ごとに答えが割れるのは、年間の現場数と転用階数の組み合わせが違うからだ。損料率の逆数を年間の現場数が超えない材は、持っていても使い切る前に規格が変わる。逆に、低層を数多く回す工務店が合板型枠を4現場も回さずに借り続けているなら、基礎価格と累計の賃料を一度突き合わせる価値がある。
確認先は国土交通省官庁営繕の公共建築工事積算基準等関連資料(令和8年3月11日改定)と、厚生労働省の足場からの墜落防止対策。



