電子小黒板:工事写真の撮影時に、木製の黒板に代えて撮影項目を画像へ電子的に写し込む機能。J-COMSIA(一般社団法人施工管理ソフトウェア産業協会)は、黒板の内容がテキストデータになるため各種帳票の自動作成ができる点を機能として挙げている。

公共工事で使う場合、アプリに要求される機能は2つに決まっている。写真管理の基準に示された項目を電子的に記入できること、そして信憑性確認(改ざん検知機能)を持つことだ。根拠は国土交通省の通知で、土木工事と営繕工事で別建てになっている。

土木と営繕で分かれる要件

項目 土木工事 営繕工事
根拠通知 国技建管第6号(令和5年3月15日、大臣官房技術調査課) 国営建技第14号(令和5年3月1日、大臣官房官庁営繕部整備課)
適用 国技建管第10号(平成29年1月30日)で利用が認められ、現行通知は令和5年4月1日以降に入札手続きを行う工事 平成29年4月から運用開始、現行通知と撮影要領は令和5年3月1日施行
対象工種 現行の写真管理基準に準ずる 撮影対象表による(改修で撤去を含む場合は解体工事編も参照)
電子的記入する項目の出典 写真管理基準「2-2 撮影方法」 営繕工事写真撮影要領 3.(3) 撮影方法
対象工事の決め方 対象工事で実施でき、実施しない工事写真は監督職員の承諾 受注者が実施を申し出て監督職員の承諾を得る
使用機器の扱い 受注者が調達して選定、工事着手前に監督職員へ提示 同じ
費用の計上先 技術管理費の写真管理に要する費用 現場管理費
納品時 信憑性確認を行い結果を併せて監督職員へ提出 同じ

費用の中身として両通知が挙げているのは、小黒板情報電子化に必要な機器とソフトウェア、チェックシステム(信憑性チェックツール)を搭載した写真管理ソフトウェアや工事写真ビューアソフトの機器経費、電算使用料など。撮影アプリ単体ではなく、検証する側のソフトまで含めて費用の範囲に入っている。

いずれの通知も、高温多湿や粉じんといった現場条件で対象機器の使用が困難な工種については、使用機器の利用を限定しないと書いている。

黒板に写し込む項目

土木工事(写真管理基準 2-2) 営繕工事(撮影要領 3.(3))
工事名 工事名
工種等 工事種目
測点(位置) 撮影部位
設計寸法 寸法、規格、表示マーク
実測寸法 撮影時期
略図 施工状況
立会者名、受注者名
その他

どちらも「次の項目のうち必要な事項」を記載する建て方で、全項目が常に要るわけではない。

中身は重ならない。土木側は略図と、設計寸法に対する実測寸法を載せる。営繕側は立会者名と受注者名、表示マークが入る。

小黒板の判読が困難な場合の扱いも基準に書かれている。土木はデジタル写真管理情報基準の写真情報(写真管理項目の施工管理値)に必要事項を記入して整理し、営繕は黒板を写し込まない場合を含めて必要事項を添付する。

改ざん検知として認められる技術

信憑性確認(改ざん検知機能)には、「電子政府における調達のために参照すべき暗号のリスト(CRYPTREC暗号リスト)」に記載している技術を使うという条件が付く。J-COMSIAの実装はハッシュ値(SHA-256)で、同リストの電子政府推奨暗号リストに掲載されている技術にあたる。

電子小黒板が成立しているのは、電子的記入が写真編集には該当しないと通知で明示されているからだ。写真編集そのものは認められていない。写真管理基準「2-5 写真の編集等」とデジタル写真管理情報基準「6 写真編集等」は、写真の信憑性を考慮して写真編集は認めないとする。営繕工事写真撮影要領4は理由を挙げず、工事写真の編集を行ってはならないとした上で、小黒板情報の電子的記入はこれにあたらないと続ける。土木側は両通知が、電子的記入は規定の写真編集に該当しないと書いて同じ扱いにしている。

画素数は黒板の文字が読めるかで決まる。土木も営繕も有効画素数は100万画素程度から300万画素程度で、大きさは1,200×900から2,000×1,500ピクセル程度。土木の写真管理基準はこれを小黒板の文字が判読できることを指標として示し、縦横比3対4程度を加える。営繕工事写真撮影要領は色彩をカラーと指定する。画素数を上げすぎると電子媒体が複数枚になり操作性が落ちるため、目的物と黒板の文字が確認できる範囲にとどめる、というのがデジタル写真管理情報基準の解説にある考え方だ。

納品時の検証には、J-COMSIAが無償のWebチェックツールを出している。チェックシステムを搭載した写真管理ソフトウェアや工事写真ビューアソフトを持っているなら、同協会のFAQはそちらを使えばよく、Webツールは持っていない場合のみ使うものだと答えている。Webツールの対応ブラウザはInternet Explorer 11、Microsoft Edge、Google Chrome。

J-COMSIAの検定と認定

アプリ側の「電子小黒板対応」が指しているのは、J-COMSIAの検定と認定だ。検定が2つ、認定が1つで、見ている範囲が違う。

検定と認定 何を見るか 掲載数(2026年10月6日時点)
信憑性確認(改ざん検知機能)検定 CRYPTREC暗号リスト記載の技術で改ざん検知が正しく実装されているか 58社132製品
小黒板情報連携機能検定 別ベンダーの撮影アプリと写真管理ソフトの間で小黒板情報を授受できるか 27社58製品
工事写真レイヤ化認定 3レイヤのSVGと信憑性確認ライブラリに対応し、上の2検定に合格しているか 18社48製品

信憑性確認検定の一覧は、製品をソフトウェアの種類で分けている。小黒板情報の電子的記入と信憑性確認を持つ写真撮影アプリケーションが103製品、チェックシステムを持つ写真管理ソフトウェアが37製品、同じくチェックシステムを持つ工事写真ビューアソフトが5製品(1製品が複数の種類を兼ねるものを含む)。

小黒板情報連携機能検定の27社58製品は、出力ソフトウェア(写真撮影アプリケーション)が39製品、入力ソフトウェア(写真管理ソフトウェア)が17製品で、うち4製品は出力と入力を兼ねる。残る6製品は出力と入力の別が書かれていない。撮影側と管理側を別ベンダーでそろえるときに見る欄がここになる。

工事写真レイヤ化認定の48製品のうち、小黒板情報連携まで併記されているのは17製品で、信憑性確認だけが31製品。

3つ全部に名前が載っている会社は13社。信憑性確認検定だけなら58社ある。逆に、レイヤ化認定だけに載って信憑性確認検定の一覧には出てこない会社も1社ある。

組み合わせのバージョン制限

信憑性確認検定の一覧には「カテゴリ」という欄がある。これはJ-COMSIAが提供する信憑性確認機能の実装規約の対応バージョンで、Ver.1.1が76製品、Ver.1系が52製品。両方に対応する2製品と、記載のない2製品がこれに続く。

Ver.1.1の写真撮影アプリケーションで撮影した工事写真は、Ver.1の写真管理ソフトウェアと工事写真ビューアソフトでは信憑性確認ができない。 J-COMSIAはFAQで、Ver.1を使ってはいけないわけではないと断りつつ、どちらを選ぶ場合もこの組み合わせ制限が付くと示している。撮影アプリと写真管理ソフトを別々の時期に入れた現場では、撮影側だけ新しくなって納品前の検証が通らない形になりうる。

適合証がいつまで使えるかも一覧に書かれている。掲載された製品バージョンは、メジャーバージョン(例として2.xx.xxから3.xx.xx)が変わるまで適合証が利用可能と認められる。マイナーバージョンアップは自主検定で確認することが定められており、そのまま利用できる。メジャーバージョンが上がった製品は、一覧の掲載が更新されているかが確認の対象になる。

電子納品での扱いと提出物

受け入れ側の決まりは、土木ならデジタル写真管理情報基準にある。令和5年3月版の構成はこうなっている。改定後の基準が適用されるのは令和5年4月1日以降に契約を締結する工事と業務から。

決めごと 内容
フォルダ PHOTOフォルダの直下に写真管理ファイルとPIC、DRAのサブフォルダを置く。参考図がなければDRAは作らなくてよい
階層 PICとDRAの直下に対象ファイルを直接保存し、階層分けはしない
写真のファイル名 Pnnnnnnn.JPG(半角英数大文字、ファイル名8文字以内、拡張子3文字以内)
参考図のファイル名 Dnnnnnnn.XXX(拡張子は作成ソフト固有のもので4文字でもよい)。記録形式はJPEG、TIFFもしくはSVG
管理ファイル PHOTO.XML(XML1.0準拠)、DTDはPHOTO05.DTD
記録形式 JPEG、TIFFやSVG形式等。動画はMP4形式等で、使用には監督職員の承諾が要る
写真区分 着手前及び完成写真、施工状況写真、安全管理写真、使用材料写真、品質管理写真、出来形管理写真、災害写真、事故写真、その他
代表写真 工事の概要が把握できる写真や重要な写真に1、それ以外に0を記入
ウイルス対策 媒体に格納した時点でチェックし、媒体表面に対策ソフト名、ウイルス定義年月日またはパターンファイル名、チェック年月日を明記

版の番号は基準の中で一致していない。改定履歴は令和5年3月版に「土木202303-01」を割り当てているが、写真管理項目の表とXML記入例には旧版の「土木202003-01」が残っている。土木通知の特記仕様書記載例も、参照先を写真管理基準(平成27年3月)とデジタル写真管理情報基準(平成28年3月)と書いたままになっている。

記録形式にSVGが入ったのが令和5年3月の改定点だ。令和2年3月版は「JPEGやTIFF形式等」までで、改定後は「JPEG、TIFFやSVG形式等」になり、動画のMP4形式等が加わった。これにより、黒板を別レイヤに持つ写真が電子納品に使える。

レイヤ化写真の中身は3層だ。注釈レイヤ、電子小黒板レイヤ、写真(背景)レイヤをSVGファイルで重ねる。原本画像の信憑性を担保したまま、黒板や配筋検査のマーカーを別レイヤに置ける。J-COMSIAの認定アプリは、同協会が定義する3レイヤのSVGに対応し、信憑性確認ライブラリに対応し、信憑性確認検定と小黒板情報連携機能検定の両方に合格したものとされている。発注者に見せる手立てとして、同協会はレイヤ化SVGのビューワを無償で出している。

SVGが使えるのは土木側だけだ。 営繕工事写真撮影要領はファイル形式をJPEGとし、原本も撮影時のJPEGと定めている。土木と営繕では、媒体まわりの決めごとが次のように分かれる。

決めごと 土木(デジタル写真管理情報基準) 営繕(営繕工事写真撮影要領)
写真のファイル形式 JPEG、TIFFやSVG形式等 JPEG
ファイル名 Pnnnnnnn.JPG、半角英数大文字で8文字以内 半角英数字と全角文字、全角文字で64文字以内(拡張子を含む)
提出物 写真の原本を電子媒体に格納 原本とアルバムを工事完成時に各1部。原本は電子媒体(撮影時のJPEG)、アルバムは紙か電子を協議
媒体の分け方 PHOTOフォルダ以下の構成は電子納品の各ガイドラインによる 他の工事関係資料とは別の電子媒体に格納し、独立して枚数を数える
媒体表面の表記 ウイルス対策ソフト名、ウイルス定義年月日またはパターンファイル名、チェック年月日 上の3点に加え、工事番号、工事名称(工事写真)、作成年月、発注者名称、受注者名称、現場代理人氏名、何枚目/総枚数、ウイルスチェックに関する情報、フォーマット形式

選定時に確かめる8項目

  1. 使う製品名とバージョンが、信憑性確認(改ざん検知機能)検定の合格一覧に載っているか
  2. 形式が写真撮影アプリケーションか、写真管理ソフトウェアか、工事写真ビューアソフトか。納品時の信憑性確認は、チェックシステムを持つ後の2種類にある機能
  3. カテゴリ(Ver.1かVer.1.1)が、撮影側と写真管理ソフト側、ビューア側でそろっているか
  4. 一覧に載ったバージョンからメジャーバージョンが上がっていないか
  5. 黒板テンプレートに、土木6項目か営繕8項目のうちその工事で要る項目を入れられるか
  6. 撮影側と管理側を別ベンダーで組むなら、小黒板情報連携機能検定に出力側と入力側の両方が載っているか
  7. SVGのレイヤ化まで要るなら、工事写真レイヤ化認定の一覧にあるか。営繕工事はファイル形式がJPEGなので、レイヤ化の出番は土木側
  8. 特記仕様書または現場説明書の記載。工事着手前の使用機器の提示と、納品時の信憑性確認結果の提出が実施事項に入り、提出した結果は監督職員が確認することがあると両通知に書かれている

通知はいずれも、使用機器の事例としてJ-COMSIAの一覧を参照するよう書いた上で、この事例からの選定に限定するものではないと添えている。通知が機器に課している要件は、撮影項目の電子的記入とCRYPTREC暗号リスト記載の技術による改ざん検知の2点。一覧外の製品を使う場合も、工事着手前に使用機器を監督職員へ提示し、納品時に信憑性確認の結果を提出する扱いは変わらない。

確認先: デジタル工事写真の小黒板情報電子化について(土木 国技建管第6号)、同(営繕 国営建技第14号)、信憑性確認検定合格ソフトウェア一覧(J-COMSIA)