建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律が、2026年7月24日の参議院本会議で可決され成立した。衆議院は6月4日に可決している。建物を使うときの省エネだけを対象にしてきた法律に、資材の製造から解体までに出るCO2を評価する仕組みが加わる。法律名も「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」に変わる。
国土交通省が閣議決定時に出した概要資料では、国内のCO2排出量の推計のうち建築分野が約4割を占める。内訳は建物の使用による排出が約3割、資材の製造から施工、解体までの排出が約1割。これまで手当てされてきたのは前者で、2025年4月に新築の省エネ基準適合が全面義務化された。今回の改正は後者を評価の対象に加えるものになる。
届出が義務になる建築
ライフサイクルカーボン評価そのものは建築主の努力義務になる。環境への負荷が少ないものを除く建築にあたって評価を実施し、設計を委託された建築士は評価に必要な事項を建築主に説明するなど協力する。国は評価の指針として統一の算定ルールを策定する。
このうち特定用途の建築物の一定規模以上の建築では、着工の14日前までに評価結果などを国土交通大臣へ届け出ることが建築主の義務になる。対象になる用途と規模は政令で決まるため、いまの時点では確定していない。国交省の概要資料は、延べ面積5,000平方メートルの大規模事務所を届出の例として図に示している。
建材の炭素排出量にできる表示
責務が置かれるのは建築主と建築士と建設業者だけではない。建築材料や建築設備を製造する事業者も関係者として位置づけられ、いずれも努力義務になる。
建材側で新しく認められるのが表示。国の定めるルールに従って建築材料等の製造などに係る炭素排出量原単位を算定したときは、そのルールに従ったものである旨を建築材料等に表示できることが法律に書き込まれた。木材については、ライフサイクルカーボンの比較で木造を選ぶことで製造時のCO2排出を減らす例が概要資料に挙がっている。
上位4分の1の住宅供給事業者に中長期計画
上位住宅トップランナー制度は、概ね市場の4分の1を占める住宅供給事業者を指定する仕組み。指定された事業者は、高い省エネ性能を持つ住宅の供給について目標を含む中長期的な計画を作り、取り組み状況を毎年度国土交通大臣に報告しなければならない。概要資料では、既存の住宅トップランナー制度が上位2分の1の事業者を対象にZEH水準程度までを見るのに対し、上位住宅トップランナーはZEH水準超に置かれている。
先導的な省エネ技術については、特殊な構造や設備を用いた建築物を国土交通大臣が誘導基準と同等の性能を持つと認定する制度ができる。認定を受けた建築物は建築物エネルギー消費性能向上計画の認定対象になり、容積率の特例などを受けられる。概要資料が挙げている例は、気象センサーで風向や風速、室内外の温度差を検知して窓を開閉する自然換気システム。
環境性能の第三者認証は、建築主等がライフサイクルカーボンの評価結果と省エネ性能について国土交通大臣の登録を受けた機関の認証を受け、標章を建築物や広告に表示できるようにする制度。紛らわしい表示は禁止される。
施行の時期
| 制度 | 施行期日 |
|---|---|
| ライフサイクルカーボン評価制度 | 公布の日から2年以内 |
| 先導的な省エネ技術を評価する大臣認定 | 公布の日から1年以内 |
| 上位住宅トップランナー制度 | 公布の日から1年以内 |
| 環境性能の第三者認証・表示制度 | 公布の日から2年以内 |
| 法律名の変更など | 公布の日から2年以内 |
起点になる公布日は、参議院の議案情報の公布年月日欄にまだ記載がない。届出の対象になる用途と規模、算定の指針、原単位の表示ルールは、いずれも政令と国の指針で追って定まる。
確認先: 改正法案の概要(国土交通省 公式PDF)



