経済産業省と財務省は2026年7月24日、韓国産と中国産の溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板について、不当廉売された貨物が輸入され国内産業に実質的な損害を与えている事実を推定する仮決定をした。赤澤経済産業大臣は同日の会見で、差額の範囲内で暫定関税を課すことを関税・外国為替審議会に諮問し、答申を得られれば8月にも課税を始めると述べた。
対象の鋼板は、財務省告示の説明で「ガードレールや住宅、フェンス等の建材や冷蔵庫等の電気機器の部品を製造するための原料」とされている。輸入材の調達価格が上がれば、鋼製下地や外装まわりの部材を仕入れる商社と工務店の見積に跳ね返る。
7月30日の答申で暫定税率が示された(8月3日追記)
財務大臣は7月30日、暫定的な不当廉売関税の課税について関税・外国為替等審議会に諮問し(財関第882号)、同日の答申で諮問のとおり行うことが適当と認められた。諮問された税率は次のとおりで、いずれも一般の関税のほかに課す。生産者が特定できるものには低い税率が当たる。
| 供給国 | 生産者 | 暫定税率 |
|---|---|---|
| 韓国 | 下記以外 | 38.0% |
| 韓国 | POSCO | 29.2% |
| 韓国 | SEAH COATED METAL、DONGKUK COATED METAL | 30.6% |
| 中国 | 下記以外 | 55.3% |
| 中国 | 鞍鋼、武漢、宝山、宝鋼湛江、本鋼板材など9社 | 50.1% |
課税期間は4か月。財務省は暫定課税を始めた後も調査を続け、最終的な税率を改めて決めるとしている。
なお下の差額率は正常価格と輸出価格の差を示した数値で、実際に課す暫定税率とは別物になる。
8月8日から課税が始まる(8月6日追記)
財務省は8月4日、暫定的な不当廉売関税の課税を決めたと発表した。根拠になる「溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に対して課する暫定的な不当廉売関税に関する政令」は8月7日に公布され、課税期間は8月8日から12月7日まで。税率は答申どおり29.2%から55.3%の範囲で、供給国と生産者ごとの値は暫定税率の表のとおり。輸入材の調達価格が上がるのは8月8日の輸入分からになる。
供給者別の不当廉売差額率
差額率は正常価格と輸出価格の差を輸出価格で割ったもの。告示に載った値は次のとおり。
| 供給国 | 供給者 | 不当廉売差額率 |
|---|---|---|
| 韓国 | POSCO | 32.49% |
| 韓国 | KG Dongbu Steel | 42.69% |
| 韓国 | サンプリング調査非対象の生産者 | 34.22%(対象者の加重平均) |
| 韓国 | 非協力の供給者、調査当局が知り得なかった供給者 | 42.69%(KGと同率) |
| 中国 | 鞍鋼 | 63.95% |
| 中国 | 湖南 | 68.67% |
| 中国 | サンプリング調査非対象の生産者 | 63.95%(鞍鋼と同率) |
| 中国 | 非協力の供給者、調査当局が知り得なかった供給者 | 68.67%(湖南と同率) |
韓国側は調査当局が把握した16者、中国側は多数の供給者のうち14者が調査への協力を回答し、輸出量が上位とみられる生産者をサンプリング調査の対象に選んでいる。中国の供給者については、市場経済の条件が浸透している事実を明確に示せたと認められなかったとして、正常価格の算出に代替国価格を使った。
対象から外れる鋼板
告示は対象貨物をHS品目表の7210.49号、7212.30号に分類される溶融亜鉛めっきのフラットロール製品と定めたうえで、次のものを除いている。
| 除外されるもの | 条件 |
|---|---|
| 波形にしたもの | 形状による除外 |
| 合金化溶融めっき | めっき層の鉄の含有量が7.0%以上の均質な合金のもの |
| マグネシウム系のめっき | めっき層のマグネシウムが2.0%以上、かつアルミニウムが5.0%以上 |
| アルミニウム系のめっき | めっき層のアルミニウムが4.0%以上で、マグネシウムとニッケルを含むもの |
合金鋼の母材に溶融亜鉛めっきをした7225.92号、7226.99号の製品も、マンガン、ほう素、チタンの含有量が一定の割合以上のものは対象に入る。こちらもバイメタル、合金工具鋼、高速度鋼と、上と同じめっき層の条件に当たるものは除かれる。
調査の経緯と損害の認定
調査は日本製鉄、日鉄鋼板、神戸製鋼所、ヨドコウの4社が2025年4月28日に課税を求める書面を提出したことを受け、同年8月13日に始まった。
損害の認定について告示は、調査対象期間を通じて国内の需要が減るなかで対象貨物の輸入量は増加傾向にあり、国産の同種貨物は販売量が減って市場占拠率が低下したとしている。対象貨物と国産品は代替性が高く、購入側が価格を重く見るなかで対象貨物は国産品を常に下回る価格で売られていた。国内メーカーは販売先を維持するために製造原価の減少分を超える値下げを迫られ、輸入材を引き合いに出した価格要求に応じられずに販売量を減らし、利潤が低下したと認められた、という筋道になる。
中間報告書には、この認定の元になった数量が載っている。調査対象貨物の輸入量は令和4年度の518,293トンから令和6年度は638,905トンに増えた。同じ期間に国内の需要量は6ポイント下がり、国産品の販売量は21ポイント減っている。市場占拠率は対象貨物が31ポイント上がり、国産品は13ポイント下がった。第三国からの輸入は68,692トンから79,239トンで、総輸入量に占める割合は1割程度のまま動いていない。需要が減った理由として中間報告書は、令和5年度に資材と人件費の高騰、人手不足による物件着工の延期・中止、工事期間の長期化が重なったことを挙げている。令和6年度の国内生産者の稼働率は50〜70%で、余力はあると当局は見ている。
仮決定の後は、利害関係者からの証拠の提出と意見表明の機会を設けたうえで調査を続け、課税の要否を政府として判断する。証拠の提出と意見表明の期限は8月7日、そこで出た証拠・意見への反論の期限は8月28日で、宛先は財務省関税局関税課特殊関税調査室。調査は日本語で行うため、提出物も日本語の書面に限られる。
確認先: 経済産業省の発表と財務省告示第210号。対象貨物に当たるかどうかは、めっき層の成分と品目表の分類で決まる。



